第40話 社畜からのご褒美

『デスマ同棲生活』が無事書籍化を果たした。そのご褒美に先日のこと。 

 

 未来たんから『膝枕耳掻き』という男のロマンを叶えて貰い、俺の心は、暴れん坊将軍だった。 

 

 朝は、優しく起こして貰い朝食の用意までされて、昼は愛妻弁当。夜は、一日仕事を頑張ったご褒美に、御馳走を振舞ってくれる。 

 

『膝枕』が無くても俺は、着実に未来たんの手によって駄目人間にされてゆく。  

 

 そのご褒美の余韻は未だ消えずに心に残っていた。 

 

 このままでは未来たん無しでは生きられない体になってしまう。人とは互いに支え合い 

生きていくもの。俺は未来たんに寄りかかって生きている節あるお互いが支え合うとは到底言えない。 

  

 俺も、未来たんの支えになりたい。そうありたいと思う俺には、どうしていいかも分からない。 

  

  

「先輩、何かいことでもありましたか?あと顔がニヤけて気持ち悪いですよ」 

  

「うっさい、ほっとけ!」 

 

出社早々失礼な奴だ。春風咲実。会社のマドンナで高嶺の花。俺が彼女の教育係にならなければ接点はなく過ごしていただろう。 

 

 だけど、彼女の教育係となってからはウザ絡みしてくる始末。 

  

「またまた〜わたしでよかったら話聞きますよ!」 

  

「それは……」 

 

昨日、美来たんから『耳掻き膝枕』をしてもらったのが脳裏にこびり付いて離れない。 

 思い出すだけで、つい、顔が緩んでしまう。俺、そんなに気持ち悪いのか? 

 

「話を聞いて欲しいって顔していましたよ」隣でそう囁かれ、ドキッとする。 

 

「別に、そんなこと……」 

 

春風にドキリとしたことを悟られないように、俺は、昨日、美来たんとの間にあったことを話した。 

  

 それで、美来ちゃんに気持ちいいことしてもらって先輩のセンパイが大きくなってしまったんですね!」 

  

「ち、ちが……」 

 

いや、違いなかったけど、春風の前で認めてしまうのが気恥ずかしかった。 

「照れる先輩かわいいーw」 

  

「バカ、からかうなよな!」 

 

「冗談はさておき未来ちゃんから、そんな『膝枕』という男のロマンを叶えてくれたんですよね?」 

「まあ、そうだな」 

 

 男の夢が一つ叶った瞬間だった。昨日のことを俺は生涯、忘れることはないだろう。 

  

「気持ちいいことして貰って、先輩は何もお返ししなくていいんですか?」 

  

「言い方!」 

  

そうだよな、されっぱなしは悪いよな …… 

  

「そうだ!やられたらやり返す、倍返しだ!!だろ?」 

  

「やり過ぎ注意ですけどね……」 

  

  

こうして、俺は、美来たんへのお返しを思案することを決めたのだった。 

  

 美来たんにはの労いのサプライズプレゼントしてあげよう。 

 

 『復帰会見』や『新生放課後シスターズのお披露目ライブ』で彼女は頑張っていた。 

 何か、美来たんが喜ぶプレゼントを贈りたい。そこで俺は、あるプレゼントを思いつく。 

  

  彼女の喜ぶ顔が目に浮かぶ。これは、プレゼントを公開する当日まで秘密にしようと俺は、自分の胸の内に大事に閉まった。 

  

               *** 

  

サプライズ当日。今夜も、いつも通りに美来たんからの手料理を堪能して夕食が終わった。 

 

  さあ、ここからが、ショータイムだ!俺は、夕食の後片付けを手伝いながら、美来たんにさりげなく、「今、して欲しいことはない?」と訊く。 

 

 「それなら、拭いたお皿を戸棚に片付けてきて欲しいですね」と未来たんは現在、して欲しいことを言ってくる。 

 「それくらい、頼まれなくてもするよ」と言われた通りに戸棚に片づける。 

 

 「いや、そうじゃなくてだな……」 

 

頼まれればいくらでもするけど、今欲しい答えはそれじゃなかった。 

  

「わたしは、佐藤さんと一緒に居られるだけで幸せですよ。でも、強いて挙げるなら 

最近、少し寝つきが悪いことですかね……」 

  

「最近、不安なことが立て続きにあったから、そのせいかもしれません。」と美来たんは語る。 

  

「そうだったな……そんな美来たんに俺から、『なんでも言うことを聞く券』をプレゼントするよ、好きに使ってくれ。」 

すると美来たんは、目を輝かせて、「なんでもいいんですか?」と訊いてくる。 

 

  何を頼むつもりだ??期待半分、不安半分の面持ちで、「俺に叶えられることだったらなんだってするよ」 

  

「それじゃあ、わたし佐藤さんと...そ、添い寝がしたいです」そう恥ずかしそうに頬を赤く染めて言ってくる美来たん。 

 

 それはどちらかと言うと俺にとってのご褒美なのでは?!と思ってしまう。 

  

  

 後片付けが終わりお互いに風呂を済ませてから夜中、未来たんと寝室のベッドに入った。 

 

  二人並んでベッドに座り、風呂上りな為に未来たんからシャンプーのいい香りが鼻腔をくすぐる。動悸が激しくなり、心臓が暴れだす。 

  必死で理性を保とうとする。 

  

 もうドキドキが止まらない。俺の中のオレ目覚めそうで― 

 

そうして、俺は優しく未来たんを「倒すよ」と優しく言いベッドに倒す。未来たんは少し体を強張らせ緊張しているみたいだ。 

  

「え??ちょっと佐藤さん?!」 

「ごめん、嫌だった?」 

 

 未来たんに拒絶されたらどうしよう?!そうなったら立ち直れそうにない。 

 「いえ、びっくりしただけです。」 

 

「佐藤さんとくっついているとなんだかドキドキするけど、安心します」 

  

「そう、それは良かった嫌じゃなかったか?」 

 

恐る恐る訊くと未来たんはふにゃりと笑い、「はい、イヤとかではないです。」 

 

と微笑む。アイドルでない一人の女の子としての彼女のこんな姿が見られるなんてなんという役得だろう。可愛い彼女を独り占めできる優越感に浸る。 

 この良いムードに乗れたら、あのことを言えるかもしれない。 

 

「未来たん、前から言いたかったことがあるんだけど、いいかな?」 

 

「ちょっと、待ってください」と言葉を遮られてしまう。 

 

それは、そうだよな。未来たんの一番になれたと思い上りもいいとこころだった。 

 

 こんな俺に言う資格なんてんかったのだ。 

 

「心の準備が、できました。いいですよ佐藤さん!」 

 

その言葉で自虐的な思考は振り払われた。 

 

「未来たん、俺と結婚して欲しい!」 

 

「え?それって......」 

 

「好きだ、絶対に幸せいする!」 

 

               *** 

それは、わたしが、ずっと望んでいた言葉だった。 

 

 佐藤さんがわたしを助けてくれた時からわたしが密かに望んでいたこと。 

 

 それを今、佐藤さんの口から言われて、すごく嬉しかった。 

 

「い、いいですよ」 

 

わたしはそれだけ言うと佐藤さんに体を預けた。 

 

「じゃあ、ゆっくりお休み」と言い優しく言われ、頭を撫でられれば、わたしは目を細めて気持ち良さそうにした。 

 

眠気が下りてきたのか、瞼が下がってきて、安らかな寝顔で、わたしは眠りの国へと旅立った。 

              

翌朝、目覚めると未来たんが、朝食を準備してくれていた。 

 昨日のことがあり、二人して赤面して顔を合わせわれないのだった。


               ***


読んでくれてありがとうございます。


面白いと思ったら応援してくれると嬉しいです


フォローしてくれると喜びます!


本編はこちらの回で最終回となります。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る