第35話 友希と決意のリベンジ

夏休み中に、舞雪ちゃんと一緒に『イブニング娘』の一三期オーディションを受けた。 

 

 結果はわたしは落選で、アイドルとしての舞台に立つ前に夢が終わってしまった。 

 

『どうせ無理だ。自分なんか』と悲観的になって本気で挑まなかったことを後悔した。 

 

 今は残りの中学生活や将来の高校生活を謳歌しようと切り替えていた。 

 

 でも、次にアイドルを目指す時には、本気で挑むんだ。夢はカリスマアイドルと決めて。 

  

「舞雪ちゃん、わたし残りの中学生活を楽しんで、高校生活は華のJKライフで謳歌しようと思うの」 

  

  

「そっか、友希ちゃんも落ちちゃったのか……」 

  

わたしの一言だけで全てを察した舞雪ちゃんは、絶望した顔から一変して 

「それでも、わたしは諦めない!一度の落選がなんだっていうの!今はダメでもこれからもオーデを受けまくるまでだよ。高校生になっても高校に通いながらだってできるんだから!」 

  

「舞雪ちゃん……」 

  

その前向きなポジティブ精神はわたしにはできないと思った。 

 

 そんな直ぐには切替えられないな……所詮根暗根性分が染み付いたわたしは夢を持っても直ぐには行動に移せないでいた。 

  

  

陰キャがイキっても陰キャのままいきなり、陽キャにはなれない…… 

  

  

「わたし、落ちりゃったし……」 

 (だから、もうわたしは歩きだせない舞雪ちゃんにわたしの夢も託そう) 

 

「何言っているの!?一度くらい落ちたから何?受かるまで応募しなよ!」 

  

「そんな、わたし舞雪ちゃんみたいな鋼のメンタルじゃなくて豆腐メンタルだから無理だよ心が折れちゃう……」 

 (一度、挫折を経験するとそう簡単には次に挑めないのだ。分かって欲しい) 

わたしは、そう戦意喪失するも、舞雪ちゃんは折れない心で進言してくる。 

 

「わたしは折れないよ。絶対にアイドルになるんだから!」 

  

  

  

そうして、夏休み後の定期テストを終え、わたしはいつも通りの中学生活に戻った。 

 

 舞雪ちゃんは、ボイトレやダンスレッスンに明け暮れ、オーディションをどんどん受けていった。 

  

それも全部落ちては落ち込み、また前向きに応募するという一喜一憂を繰り返していた。 

  

 わたしは、その間に学校生活を謳歌とまではいかなかったけど、普通の学生生活を送っていた。 

 

 でも、内心では、何度、落ちようともくじけずに前に進もうとする舞雪ちゃんを羨ましく思った。 

 

  

「舞雪ちゃん、そんなことを繰り返したら、心が壊れちゃうよ」 

 落ちてもまた、次に挑むその姿勢にスゴク心配になった。 

  

「いいの。この努力は無駄なんかじゃない。きっと報われるときが来るから」 

  

そう笑顔で、なんでも無い顔をするのだった。 

  

  

月日は流れ、中一の三学期を迎え一月のそんなある日、わたし達に転機が訪れた。 

  

「友希ちゃん、落ち着いて聞いてね!驚かないでね!?」 

舞雪ちゃんは教室に慌ただしく入ってきた。 

 

「うん、まずは舞雪ちゃんが落ち着いて」 

  

一体、どうしたと言うのだろう?そんなに慌てて。 

  

「どうしたの?落ち着いて話して」 

  

  

「これが落ち着いていられるかっての!なんと『放課後シスターズ』が新メンバーの末っ子の妹キャラの募集を一般オーディションで決めるんだってさ!」 

  

  

「マ!?本当?」 

  

だとしたら憧れのアイドルグループメンバーになれる大チャンスだ!この機を逃す手は無い! 

  

「マジもマジ。大マジだよ!公式writerでも今年の三月に開催するって発表てるしこれはチャンスだよ友希ちゃん!」 

  

「そ、そうだね……」 

  

まさかわたしが『放課後シスターズ』として活動できるかもしれないチャンスが訪れるなんて…これは運命で一期一会のチャンスだと思った。 

  

  

自分に出来るか不安だったけど、もう弱音は吐かないと決めたのだ。不安よりも 

挑戦してみたいと思うワクワクの気持ちの方が勝っていた。 

  

  

「募集人数は一人。勝負だね友希ちゃん。どちらが選ばれても恨みっこなしだからね!」 

  

「う、うん。望むところだよ!」 

  

  

こうして『放課後シスターズ』の新人アイドル枠を賭けたオーディションバトルが始まったのだった。 

  

  

それから本格的なアイドルになる為の特訓が本格化していった。 

 

 わたしは、再び、アイドルトのレーニングを再開した。 

 

 わたしは以前のような弱音を吐かずにとレニングに取り組んだ。そしてあっという間に月日は流れ、『放課後シスターズ』のオーディションの当日がやってきた。 

  

  

東京某所に緊張の中、舞雪ちゃんと訪れた。「大丈夫?友希ちゃん。緊張してる?」 

  

こういう時は、『人』という字を手の平に書い飲むといいんだよと舞雪ちゃんはわたしに教えてくれた。 

わたしは、『人』の字を書いて飲んだ。少し落ち着いた気がした。 

  

歌唱審査にダンス審査で総合評価で合否が決まる。わたしの前に舞雪ちゃんの番となり 

審査は、歌唱審査で完璧な歌い上げダンス審査でキレキレのダンスを披露して完璧なまでに審査を終えた。 

  

が、それと同時にわたしには舞雪ちゃんは超えられない。これは決まったと思った。 

  

「はい、いいですよ。キミ、歌上手いね!なんだか素人感が無いね」 

  

最高の褒め言葉を貰い、舞雪ちゃんは「はい!ありがとうございます。」と満面の笑みで答える。と、好感触を得ていた。これ、もう決まりじゃん!この後に、まだわたしが残っているのだけど……新メンバーは舞雪ちゃんに決まるか他の子に決まるかで間違ってもわたしじゃないと思った。 

  

『次、鈴木友希さんパフォーマンスをお願いします。まずは歌唱審査から』 

  

「は、はい。鈴木友希です。よろしくお願いします!」 

  

そして、審査は終わった。わたしは、落ちた終わったと思った。 

 

 こんなごちゃごちゃな気持ちでも、全力を出せたよね?いや、でも舞雪ちゃんのパフォーマンスを見た後だからわたしの悪い癖で負け腰になっていた。 

 

 何がなんだか分からないや……それでもなんとかやり切って帰路に着た。 

 

 もうどうやって家に帰ったか記憶に無いまま気付くと家の自室のベッドに着替えもしないで放心状態になって横たわっていた。 

  

 これで、わたしのオーディション活動に一変の悔いはない!と言えたらどれだけいいだろう。次は本気を出すと誓ったはずなのに自分で掲げた志さえ、破ってしまっていた。 

  

  

本当は、選ばれたい。だけど、それはわたしじゃ無いのだろうな……その夜は、枕を濡らして眠ったのだった。 

  

  

翌日、舞雪ちゃんに会いたいと誘われて上野駅に出向いた。本当は、舞雪ちゃんと顔を会わせたくなかったけど、ここで断れば変に思われるかと思い、嫌々出かけた。 

 

『放シス』のオーディション以降、舞雪ちゃんはそれは終始上機嫌で 

 「選ばれたらどうしよー!わたしアイドルになっちゃうよー」などと 

浮かれ切ってしまっていた。 

 

 もう自分が選ばれることが確定したみたいな言い方に少しイラッとする。 

 

 わたしは到底、無理だった。また元の根暗女子に戻ってしまっていた。 

  

選ばれる実力が無い自分が悔しい!そんなごちゃごちゃな気持ちの中、合否判定が届いた。 

 

遂に、この時がきたのだ。心臓がバクバクで封筒を持つ手が震える。 

 

恐る恐る封を開けると、そこには…… 

  

  

『鈴木友希様…貴女を御社がプロデュースするアイドルグループ『放課後シスターズ』の 

新メンバーの妹キャラ『叶羽美来』に起用を通知します。これから御グループの活動を通しての御社への貢献を期待しています。』と記されていた。 

  

わたしがアイドル?!それもずっと憧れていいた『放シス』の新メンバーに!? 

  

 この時は、まるで実感が湧かなくて夢を見ているようだった。 

  

ということは、舞雪ちゃんが落ちてわたしが受かったってこと?!なんで?? 

  

 実力は歴然だったはずなのに……あれだけ、アイドルに憧れていた舞雪ちゃんが落ちて 

わたしなんかが受かるなんて、何かの手違いなのではないのか?!と疑ってしまう。 

 

 それくらい信じられなかった。明日から、舞雪ちゃんになんて顔して会えばいいのだろう!?と困惑するのだった。 

 

              *** 

  

「これがわたしが『放課後シスターズ』に入った経緯だよ。それから紆余曲折を経て今のカリスマアイドルに至ったんだ。」今までのアイドルになった経緯を美来たんは語ってくれた。自分が、『放課後シスターズ』に選ばれたことは嬉しくもどこか悲しそうに語ってくれた。 

きっと落ちた友達のことに負い目を感じているのだろう。 

 

「て言うか美来たん、立派になったな!」 

 

「そうです、あの頃のわたしとは違うんですから!」 

「うん、話てくれてありがとう美来たん。」 

 

そう、俺と美来たんは6年前に会っていたのだ。あの頃の美来たんはまだ新人アイドルだった。 

 

 シャイで大人しく今の面影が無かったから美来たんと初めて会った頃は気が付かなかった。 

  

「へへ、どういたしまして」と照れながら頬を赤らめて言う。 

  

「実は、この話をメンバー以外にしたのは、佐藤さんが初めてなんですよ……わたし達。、秘密の共有者ですね」 

  

「そ、そうなんだ…なんでこんな大事な話を俺にしてくれたんだ?」 

  

「それはねー、佐藤さんが他の人とは違うわたしの特別な人だから?ですよ?」 

  

「そうなんだ……なんで疑問系なんだ?」 

  

それはねーどうしてでしょう?」 

  

「疑問を疑問で返さないでくれー!」 

  

どうやら、俺も、今夜は眠れなそうだ。 


               ***

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