第32話 推しの復帰会見

土曜日。わたし、叶羽美来のアイドル復帰会見が東京都内某所で行われた。 

  

 報道記者と、カメラマンでひしめき合い、わたしは緊張していた。 

  

目の前に、幾つものカメラのフラッシュを焚かれて、会見が始まった。 

  

  

「今日は、わたしの為に会見を開いてくれて、たくさんの人に集まって頂き、ありがとうございます。」 

  

「わたし、叶美来は、『放課後シスターズ』に復帰します!一身上の都合で、アイドルを引退したのに、またアイドルをするのかと思いましたよね?」 

 会場がザワつく中、緊張感の中、わたしは一呼吸置いてからこう続ける。 

 

「アイドルを一度は引退しましたが、一度、アイドル業界から離れてみて、やっぱりわたしはアイドルアイドルとしてやってはいけないことを犯してしまっていたことに気が付きました」 

一呼吸置いてわたしは、こう続ける。 

 

「それは、アイドルよりも恋を選んだ、ファンへの裏切り行為に他なりません」 

 

わたしは、止まらない。さらにこう続ける。 

 

「誰か一人の幸せでなくファンの皆に幸せになって欲しい。そう、戻りたいと自分の気持ちを再確認しました。だから、わたしは戻ってきました!」 

  

ゴールデンウィークのお披露目ライブでゲストとして、ステージに上がって歌唱した時から 

アイドル熱が再燃してしまって、わたし自信、アイドルに戻りたいと願っていたのだと思う。 

 

 佐藤さんとの同棲生活を満喫するも、それだけでは、わたしの心は満たされずに、アイドルに戻りたい気持ちでいっぱいだった。 

 

 このままじゃ、ライフワークが抜け落ちたように、わたしがわたしで無くなる想いだった。 

  

  

『やっぱり、またアイドルがしたくなったのですか?復帰の意気込みとかはありますか?』 

  

  

「そうですね、一度は、わたしの一身上の都合でアイドルを引退してしまいました。それでも、わたしは、アイドルが、したいです……わたしにとって、ドーム公演がアイドルを志した頃からの夢でした。」 

  

そして水を一口飲み、気持ちを落ち着けて、こう続ける。 

 

「でも、こんなわたしを世間は許してくれないでしょう…それでも、周りからどう思われたっていい!それでも、アイドルでいたいんです。」 

  

この夢だけは、アイドルを引退してからも、自分の心の中でくすぶっていた。今からでも、また夢を追って叶えたい気持ちでいっぱいだった。 

  

『質問ですが、以前、引退会見で素敵な恋人を作って幸せな結婚をするのが夢だと発言していましたが、夢が変わったと言うことですか?』 

  

「それは、女性としての夢です。今、語ったのはアイドルとしての夢です。アイドルは夢を二度見るものですよ。」 

  

一つ目の夢は、子供の頃からの憧れていたアイドルになる夢。二つ目は、大人になってアイドルになる夢を叶えた先にある、女性としての恋愛願望や結婚願望の夢だ。 

  

『そうなんですね、アイドルの夢も頑張ってください』 

  

「ありがとうございます。こんなわたしで良かったら、また応援のほどをよろしくお願いします。」 

  

「今後とも、『放課後シスターズとして、満身創痍、頑張っていきます。』と会見を締め括った。 

  

               *** 

 

 

会見が、テレビの生中継や、ITUBEの生配信で全国に拡散していき、SNSのwriterや 

3h掲示板で『美来たん復帰会見』とスレッドが立ち、ファンは喜び、アンチユーザーからは、『二十歳を過ぎたアイドルなんて、賞味期限切れのババアじゃん!ババドルだ!』 

  

『ババドル草w』 

 

などと美来たんの復帰宣言に、匿名で好き勝手に誹謗中傷を言われていた。 

  

俺のアパートのリビングの一室で、テビでI TU BEの生配信をコメント付きで隣の部屋のリビングでさくらちゃんと、美来たんの復帰会見を見届けた。 

  

「美来たんの復帰会見良かったな。俺は、素直に応援したい。」 

  

そうですね、ばり良かった!佐藤さん。わたしは憧れだった未来ちゃんと、一緒にアイドル活動ができるんんてなんだか、夢みたいばい!」 

  

「やっぱり、美来たんは歳を重ねても、キレイなままだ。コメントの反応も反応も見たけど 

ババドルだなんて失礼だな。むしろ、二十歳を過ぎて、更に美しさに磨きがかかったよな」 

 

「そんな今が、彼女の旬だとも思う。一六、七のアイドルなんて、まだケツの青いガキだ。」 

  

大人になってこそ、女性の魅力が出てくるってものだ。 

 

 それに美来たんは童顔で洗練された美しさに、まだ、あどけない幼さが残り、フレッシュな感じも未だ失われていない。 

  

「ふーん…じゃあ、JKのわたしなんて未成熟な子供ですね」さくらちゃんは、不満を訴えるように、頬を膨らませて、むくれっ面で言う。 

  

「まあ…でも、さくらちゃんにはアイドルとしての可能性というか素質を感じるな」 

  

(この子にはアイドルに必須の愛嬌というか人を魅了する力が備わっていると思う) 

  

彼女には言わないけど、ドルオタとしての勘がそういっている。 

 

「そうですか、ありがとうございます!」そうすると今度は、頬をはほんのり桜色に頬を染めて桃色のツインテールを指先で、クルクル弄りながら照れて言う。 

  

  

そんな様子が可愛く、思わず、ドキッとする。 

  

「でも、俺にとっての推しメンは、美来たんだけどな」 

彼女は、俺にとっての憧象アイドルで俺は、美来たんのファンだ。 

  

  

「そ、そうなのですか…でも、わたしも『放シス』のメンバーだし、やけん、の佐藤さんにとっての推しメンになってやるばい!」と美来たんに対して対抗意識を燃やすのだった。 

  

未来たんのアイドル復帰会見の生配信をITUBEで見終わり、未来たんの帰りをさくらちゃんと待つことにした。 

 

               ***  

 

夕方、未来たんは、「ただいまー」と俺たちのアパートに帰ってきた。 

  

今晩は、俺が、未来たんの為に夕飯を作っていていた。 

帰ってきた未来たんを交えて食卓を囲む。 

「ところで、未来たんは、どうしてアイドルになろうと思ったんだ?」 

 

「そうですね、わたしが『放シス』と出会ったのは、中一の夏休みのことで、わたしが絶賛、引きこもり中だった頃に親友の舞雪まゆちゃんから『放課後シスターズ』のアイドルライブに連れ出してもらったときだね」 

 

昔を懐かしむように過去を思い出を語り出す。まだ、どこにでもいる少女がアイドルを夢見て、カリスマアイドルに至るまでのアイドルストーリーを語り始めるのだっ

た。


               *** 

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