第30話 推しとイチャラブな夜
未来たんとの恋愛報道による炎上が納まり一件落着した。書籍化の打診も来た。
未来たんから褒めて貰って、なんだかこれから会社に出社する気分ではなくなっていた。
「未来たん、今日の仕事を休んでもいい?今日は、会社に行かないで未来たんとイチャつきたい気分なんだ。ダメ、かな?」
このまま、未来たんとイチャつきたかった。
「ダメですよ!佐藤さん。会社はちゃんと行かないといけませんよ!」
「はぁーやっぱりそうかー」
(でも、気が進まないのだ。完全にそういう気分ではなかった)
未来たんの目の前でそんなことは言えず、顔を伏せていると、未来たんがエールをくれた。
「でも、わたしとの時間は、会社から帰ってきてから、夜にたくさん取ってあげますから。」
「そ、そうか。頑張ってこようかな」
(夜に、たくさん……あんなことやこんなこともしてくれるのだろうか……)
色々と妄想してしまうのは、男としての性だろう。
「わかった。じゃあ、行ってくるよ!」
「いい子ですね。行ってらっしゃい!」そういう言いハグをしてくれる。
未来たんの柔らかな感触を体全体で受け止めた。未来たん成分が補充される。
少し、ムラムラするけど夜までの我慢だ。よしっ!と気合を入れる。
俺の方が年上なのに、なんだか子供扱いされている気がする。
まるで、未来たんママみたいだ。まあ、いいか。
「いってきます!!」と俺は、元気よく家を出た。
会社に出社して、自分のデスクで、橋本と雑談していると、春風が俺の元へと来た。
「先輩、おはようございます。『デスマ同棲生活』のバズりおめでとうございます!」
「おお、ありがとう。実は、書籍化の打診も来たんだぞ」
「えっ!?マジですか?おめでとうございます!」
「俺も信じられないが、打診メールも来たんだ間違いじゃないだろう。」
「頑張った甲斐がありましたね。努力は必ず報われるとはこのことですね。」
春風から、ありがたい言葉をかけられた。運が向いてきたと思った。
「うん、ありがとう。これで、会社を辞められるな!」
(書籍化をして小説家になったら、こんな会社で仕事しなくてもよくなるだろう)
「えっ!?先輩、仕事辞めちゃうんですか?」
「だって、商業作家になったら、一月に10万文字も書かないといけないんだぞ。働いている時間なんて無いな」
「そ、そんなー!!先輩、書籍化を辞退しませんか?そんなに小説を頑張ったら体を壊してしまいますよ!」と懇願してくる。
そんなに必死に止められても俺の心は既に決まっている。
「なんでだよ!せっかっくの書籍化だぞ!?」
会社に入社した頃から、地道にWEB小説を書き始めて、ずっと持ち続けてきた夢が叶ったのだ。体を壊してでも、執筆作業を頑張ってやる!
昼休み、天城先輩にWEB小説の打診が来たことを報告しに行った。
先輩は、どんな反応をしてくれるのだろうか。喜んでくれるかな?
「天城先輩、少々、お時間いいですか?すいません食事中に。」
「な、なに?佐藤くん。そんなに改まって」天城先輩は口に手を添えて、状態を佐藤に向けて
応対してくれた。
「実は、以前から趣味で書いていたWEB小説に書籍化の打診が来たんですよ。」
「そ、そうなんだー。おめでとう!」
「ありがとうございます。それで、小説の執筆に専念したいので、仕事を辞めて、小説家に専念しいたいんです。」
思い切って言ったが、正直に小説家になると言っても良かったのだろうか?
もっと、言葉を濁して言っても良かったかもしれない。
「佐藤くん、それは、まずいよ。仕事を辞めるなんてやめておいた方がいいよ」
「えっ?だって俺は、仕事もして小説の仕事もなんてできないですよ。小説に妥協したく無いんです」
「佐藤くん、もし、仕事を辞めて小説に専念して、その小説が、一巻で打ち切りになったらどうするの?無職になるよ?」
「そ、それは……」
(考えもしていなかった。小説家になることばかりに頭が言っていて、なった後のことなんて考えていなかった)
「いい?仕事があるってことは、小説がダメでも保険があるってことなの。仕事を辞めて小説に専念するより、小説の売り上げで安定した収入が得られるようになってから辞めた方が……いいよ。」
「あと、春風ちゃんから教えてもらって佐藤くんのWEB小説を読んでいるのだけど、
この小説……佐藤くんの仕事の経験も小説の糧になっているんじゃないの?」
「そ、それはそうかもしれません。今の会社で働いていなかったら社畜主人公なんて書こうと思わなかったでしょうし……」と天城先輩から諭されてしまった。
こうして、俺は、午後からの仕事がろくに、手につかないまま、定時で仕事を終わらせて自宅に帰った。
アパートに帰ると、未来たんが、ピンクのエプロンをしてキッチンで、夕食を作り待っていてくれた。
「あっ!お帰りなさい佐藤さん!ご飯にしますか?お風呂にしますか?それとも……」
未来たんは最後の方を恥ずかしがり、言い淀む。
「じゃあ、三つ目の選択肢で未来たんで。」
「あの、それは……」
「ダメかな?」
「いえ、ダメとかじゃなくて……」
「え?じゃあ、いいの?!」
ダメ元で冗談で言ったのだけどいいのか?そもそもさっき未来たんも「それとも、わたし?」と言おうとしたのではないのかと思った。
「それでは冷めないうちに、どうぞ……」
その後おいしくいただいた。
夕食を食べ終わり、リビングでコーヒーを飲みながらチョコ菓子を食べてくつろいでいると、俺は、意を決して日中、会社で天城先輩から言われことを未来たんに伝えようと口を開く。
「未来たん、書籍化の打診は来たけど、俺は、もう少し今の会社で頑張ってみるよ。」
小説は例え、書籍化しても、趣味で書いていくもの。
売上累計部数、50万部や、100万部を売り上げる大人気作家なら、小説一本でも生活ができるだろう。
だけど、書籍化が初めての新人作家が仕事を辞めて、小説一本で生計を立てていくのは難しいことだと思う。
そのことにようやく、気が付いた。
だから本職で働きながら、小説を刊行していき、小説での収入が安定したら、小説一本で仕事をしたらいいだろう。
だから、今は辞めないでその時が来るまで頑張るつもりだ。
「それは、いい心掛けですね。頑張ってください!」
「ありがとう。でも、心の充電が……」
未来たんパワーが足りないのだ。このままじゃ、仕事を頑張れない。
「どうしましょうか?」
「そうですね。未来たんを抱いて急速充電したいな。」
「だ、抱く!?それはちょっと ……」未来たんは湯沸かし器のようにボシュッと顔から湯気が出そうになっている。
「そ、それは少し考えさせてください…心の準備が……」
「や、優しくしてくださいね。」
「そんな強くなんてしませんよ後ろから強く包み込むようにしたいと思うんだけど」
「う、後ろから!?」
(バックプレイがいいのだが……)
「何を、そんなに狼狽えているんだ?ハグをするだけだよ。」
「な、なんだーハグですかー」未来たんはホッと一息つく。
「ところでなんだと思ったんだ?」
「い、いや…それは……」再び未来たんの顔が茹でだこのように真っ赤になる。
「それは?」
「抱くって言うのでてっきり、好き同士の男女同士でやるアレかと……」
「ち、違うぞ!ハッスルの方っじゃ無いから!」
(やりたくないと言ったら嘘になるけど、俺だけの意思じゃなくて未来たんも合意の上で
二人で身を重ねたい)
「そうですよねー、びっくりしました」
「未来たんて、意外とエッチなんだな」
「そ、そんなことないですよ、佐藤さんのバカ」とムスッと頬を膨らませ、ポカポカ叩いてくる。
この後、ギュッとしてもらい、未来たん充電がF U LLになった。
***
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