第29話 推しと清い交際
夜、二一時。わたしはITUBEにてライブ配信を始めた。
まだ残しておいた放課後シスターズとして活動していた頃の叶羽美来のアカウントで『ミクTUBE』のチャンネルにてライブ配信を開始したのだ。
このチャンネルでは、アイドル時代から、定期的にコスメ動画や、アイドルの素顔や裏側をなどをエンタメ動画にして視聴者に届けて、ファンを楽しませてきた。
でも、今夜の配信はそんな楽しいものじゃない。
今、世間で騒がれ炎上している、わたし叶羽未来の恋愛疑惑について、わたしから
ファンの皆に一言いうつもりだ。
何より、佐藤さんが炎上によって小説が書けなくなった今、いつも通り、小説に取り組めるように、炎上を鎮めるのが目的だ。
「皆さん、こんばんは。今夜は大切な話をさせてください」
わたしの神妙な感じを感じ取ったのか、視聴者は、「あれ?いつもと違う?」
「未来たん真剣?」などと、ざわつき始めた。
わたしは息を整えてこう切り出す。
「皆には大切な人は居ますか?わたし、叶羽未来は去年、十二月から引退会見からアイドルを卒業して、一般女性として日々を過ごしてきました。
その間、わたしは大切な人と過ごしてきました。そんな毎日が楽しくて充実していて、その人の為に尽くして幸せな日々を送ってきました。」
「ですが、恋は盲目と言いますが、まったくその通りです。わたしは彼のことが好きすぎて、世間体が見えなくなってしまっていました。」
そのせいで迂闊なライートもされた。た。誹謗中傷も言われ、今回のような炎上という事態を招いてしまった。
だから、今回のような炎上を引き起こしてしまったことは深く反省しています。」
ここまで一気に喋ってコメントが流れてきた。
『アイドルが恋なんてするな!ファンを裏切りやがって!』
『もう、芸能界に戻ってくるな。大切な彼氏とよろしくやってくれ。』
などと辛辣なコメントが流れてくる。
これに対しては覚悟していた。アイドルにガチ恋勢の熱烈なファンほど熱愛が報じられた時の裏切りには過敏に反応する。
『叶歩夢も叶羽未来も二人して開き直りやがって!もう、叶ファンも放シスファンも辞めてやる!』
そんな、わたしの都合で、放シスの方にも被害が及ぶのだけは避けたい。
スキャンダルを起こしたのはわたし自身なのだから攻めるならわたしだけを責めてよ!
「どうか、わたしのことは嫌いになってもいいので、放課後シスターズのことは嫌いにならないでください!」
わたしは必死の思いで懇願する。でもその想いも虚しく、アンチは攻撃を続ける。
『ふん!勝手に言ってろ。俺はもう無理だ。未来推しも放シス推しも辞める!』
『でも、ここで復帰宣言をしてこなくて本当によかった。まあ、復帰したとしても、もう推さないけどな。』
『それなーw』
心無いコメントが流れていく。わたしは、悲しかった。
「ねえ、ファンはアイドルに恋するのにアイドルは恋しちゃいけないのですか?」
アイドルだって女の子だ。仕事が恋人だと思って頑張ってきたけど、運命の出会いを果たして恋してしまったのだ。この気持ちは止められない!
「彼と出会って、恋をしました。今は、そんな大切な最愛の人と結婚することがわたしの夢です!」とわたしは胸の内を告白する。
『アイドルを卒業したから言えることだよな。アイドル時代に言っていたらアウトなやつだ』
『芸能界を引退してからも話題作りとは、元、アイドルはやることが違うな。』
『どうせ、自分の子供を芸能界に入れて自分もタレントママとして再ブレイクlを狙っているんだろ。汚い奴!』
などと批判的な意見が飛び交う中、一つのコメントが流れを変えた。
『いいじゃないですか、結婚!わたしはいいと思います。未来たんの恋を応援します!』
『アイドルだって女の子だしね。そりゃ、恋だってしたくなるよね』
「そうだよ、女性としての幸せを求める権利は未来ちゃんにだってあるよ!」
などと応援してくれる肯定的なコメントも増えてきた。
「ありがとうございます。皆さんかんら応援してもらって嬉しいです」
こうして、わたしの恋を応援してくれる声が多数寄せられて、僅かなアンチを残して
Writerの炎上騒動は持ち直し、無事、落ち着きを見せてわたしも、佐藤さんとの交際を認めて配信は終了した。
***
翌日、昨日の夜、未来たんのITUBE配信で、反響があり、未来たんの恋を応援するといったネットの声が彼女のWriterにメンションやDMなどで多く寄せられた。
俺も、昨日の彼女の配信を聴いていてハラハラしたけど、上手い具合に炎上が鎮まって一安心した。一時はどうなることかと思ったけど、良い具合に火消ができて良かった。
俺の、Writerの方も炎上が落ち着き、小説を更新しても、多少のアンチのリプが付くくらいで神経質にならなければさほど気にならなくなってきた。
むしろ、未来たんの配信効果で俺の連載WEB小説『デスマ同棲生活』が再度、バズった。
そして、順調に話数を更新していった。
五月下旬となり、俺の元に『デスマ同棲生活』の書籍化の打診メールが届いた。
「やったー!未来たん、遂に書籍化だー!」
やっと、この時がきた。社会人になり、自分の作品を多くの人の手に取って貰いたいと投稿し始めた小説も連載を始めた時からの夢が叶った!一度は、挫折したけど、また小説を書き始めて良かった。
「やったね!佐藤さん。おめでとう!」
「ありがとう、未来たん!嬉しいよ」
未来たんも自分のことの様に喜んでくれて俺も嬉しい。
そうして俺は、念願だった、商業作家デビューの一歩を踏み出し、未来たんは結婚の夢へと、新たな舞台のスタートラインへと立ったのだった。
***
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