第26話 さくらと憧れの景色

中一の夏に友達に誘われて初めてアイドルライブを観に行った。 

 

 以前のわたしの中にはアイドルといったらいつもニコニコして笑顔を振り撒く存在だと思っていた。 

 

 やけん、そんな男性ファンに媚び売って「可愛いー!」と言ってもらう存在が苦手だった。 

 媚びへつらう陽キャの集合体。それが、うちがアイドルに抱いていた印象だった。 

 

 うちとは正反対。正直、アイドルライブに行っても推し切れないだろうという想いがあった。 

でも、実際に生でアイドルライブを観てみて、うちの考えは一変する。 

 キレキレのダンスに圧倒的熱量の歌。そして煌びやかに人を魅了する容姿。 

 その全てが揃った完璧な存在だと思った。 

 

 『放課後シスターズ』は三人組アイドルグループでまだ国民的アイドルグループでは無いにしろ輝きがありうちは、その中でセンターの煌びやかなアイドルの姿にライブを見ているうちにすっかり魅了され、強い電流が走り一目惚れで一瞬で未来たんのファンになった。 

 

 うちもこんなアイドルになりたいという夢が生まれた。「友香ちゃん。うち、アイドルになるばい!」と自然と気持ちを伝えていた。 

  

「さくらちゃんもアイドルの良さを分かってくれたんだね!嬉しい。二人でアイドルになろう!」 

「よかよ!」そう、快く了承して二人で夢を誓い合った。 

 

 早速、私たちは東京にある大手某アイドルグループのオーディションを受けた。 

 結果は惨敗だった。情熱はあってもわたしたちはアイドルになる為の武器を何も持っていないことを思い知らされた。 

 

 「わたし達これで終わりじゃないよね?」「わたしはアイドルになりたい。やけん、こんなところで終われないばい!」 

  

  

オーディションに落ちても、わたし達のアイドルへの熱は消えなかった。むしろ次は絶対にアイドルになってやる!と熱は燃え上がるのだった。 

 数日後のこと。わたしは、決意を新たにした。 

  

「さくらちゃん!その髪……」わたしは、長かったロングヘアーをバッサリとボブショートヘアーに切って、新しい自分になるんだと今までの自分にさよならした。 

 夏休はまだまだある。「さくらちゃん、アイドルになれないなら自分たちでアイドルを作ればいい。一緒に博多でご当地アイドルとして活動しない?」 

  

「ご当地アイドルかー、いいね!」 

  

「さくらと友香でさくらフレンズなんてアイドル名どうかな?」 

  

「よかね!ばり、可愛いばい!」 

わたし達はニ人組のご当地アイドル『さくらフレンズ』として活動することにした。 

  

  

「アイドルなんてこんな田舎で人気になるの?恥を晒すだけだからやめておきなよ。」 

  

クラスメイトの萌絵ちゃんからの厳しい否定的な言葉にわたしは、「恥ずかしくったっていい! 

人気がでなくったて、わたしがやりたいからやるんだけばい!」と啖呵を切った。 

  

 萌絵ちゃんの言葉を強い意志で振り切ってわたし達はアイドル活動をスタートさせた。 

  

「早いうちからアイドルをやっていた方がいいんだよ。アイドルなんて十代のうちが華だよ。二十歳を過ぎれば、ファンからおばさん扱いされ見向きもされなくなるんだからさ」 

そう熱烈に語る友香ちゃんは格好良かった。 

  

  

 そうしてわたし達、さくらフレンズの活動は中三の二学期までと期間限定アイドルとして始まった。夏休み中は、曲作りやダンスの練習、や体力作りに費やした。 

  

ファーストライブは夏休み明けの二学期の文化祭で体育館のステージ上で披露した。 

 

 その観客は、わずか八人だった。知名度も無ければ人気も無いわたし達さくらフレンズ。 

 

 もう少し見に来てくれるものだと思っていたのにそんなに現実は甘くなかった。 

 ショックを受けるも、アイドルライブは無事に歌い切った。そのファーストライブを見たわたし達のアイドル活動に否定的だったクラスメイトの萌絵ちゃんが見に来てくれていた。 

  

「ライブカッコ良かったよ。もし、さくらちゃんたちが許してくれるならわたしも『さくらフレンズ」に入れてくれないかな?」と言ってきて、わたしは嬉しくて、「よかよ!」と快く承諾し、新しい仲間が加わった。 

  

  

 新しく三人体制になった。活動の幅が、校内のアイドル活動しか思いつかないわたし達の前に三年の涼風先輩が現れて「オレに君たちさくらフレンズのプロデュースをさせて欲しい」と申し出してきた。わたし達もアイドルだけでプロデューサーがいない現状はマズイと思い友香ちゃんとうちは「いいですよ、よろしくお願いします」と先輩にプロデュースをお願いした。そうして涼風先輩のパソコンでのホームページ作りやSNSでの宣伝の効果があった。 

  

 さくらフレンズの認知度は上がっていって、博多のテレビ局からのオファーで活動を博多のローカルテレビ番組の出演やI TUBE配信など活動の幅を広げていった。 

 

 さくらフレンズは順調にファンを獲得していった。ファンのことをフレンズと称し友達感覚で握手会などファンサービスを行ってきた。 

 

 季節はあっという間に移り変わり、気が付けばに中三の二学期を迎えてさくらフレンズは惜しまれながらその活動に幕を閉じ解散した。 

  

 わたしは受験勉強を本格的に開始し、月日は経ち二月になり受験や卒業シーズンが迫る中 

放課後シスターズの新ンメンバー募集オーディションが開催されることを知った。 

 未来たんが卒業した現在、彼女が在籍していた末っ子の妹キャラの枠が空いているのだ。 

 憧れの未来たんが在籍してい太放課後シスターズのメンバーになれるチャンスを逃すまいと即、履歴書を送り、十二万の書類審査を無事通過して三月上旬に東京で一次面接を受けた。 

  

 これを通過し、ニ次面接まで進んだ。だけど面接本番で緊張してしまい思ったような受け答えや特技を見せることができなかった。やけん、ここまできたけど落ちたと思った。 

 

 絶対に落ちた!わたしは絶望に苛まれながら博多へと帰った。 

  

 三月下旬。自宅に結果が届いた。その結果が届きは、予想に反して合格だった。 

  

  

 なして?自分は思った様な好感触を残すことはできていなかったのに!? 

と、なんで自分が合格したのか不思議でならなかった。 

  

 合否結果の最後に追伸が記されていた。 

『君のさくらフレンズ』としてのご当地アイドルの動画を拝見しました。 

 アイドルとしての素質、可能性を感じたので君を放課後シスターズの新メンバーに選びました。これから、当グループの新メンバーとして頑張ってください。』とあった。 

  

こうして、わたしは芸能界に片足を入れることとなったのだった。


               *** 

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