第17話 推しと遊園地

バレンタインシーズンは過ぎ去り、未来たんからは、手作りのチョコレートブラウニーを貰った。




 俺は、男なのだが、甘いものには目がなく、すごく嬉しかった。


俺からも未来たんにバレンタインギフトでアクセサリーを贈った。




それが、好きな人とずっと一緒に居たい・愛を誓う意味だなんて知らなかったのだ。




 え?知らないうちに、プロポーズしていたってことか?後から恥ずかしくなって未来たんの顔を見られなくなった。




 三月になり、暦の上では春になった。風の噂で、未来たんが所属していたアイドルグループの放課後シスターズが未来たんの卒業によって、人気が下落していったという噂を聞いた。




 カリスマアイドルが卒業したのだ、相当の痛手だったのだろう。


 それでも、彼女の所属していたアイドルグループの没落には心を痛めた。




 三月にはホワイトデーがある。


 俺は、未来たんから日頃、お世話になっていることから彼女を遊園地という夢の国に招待しようと密かに考えていた。


 仕事から自宅に帰り、夕食を食べている時に俺は計画を打ち明けた。




「未来たん、今週末、の休日にドリームランドに遊園地デートに行かないか?」






「遊園地ですかー。いですね!わたしドリームランド好きなんですよ」




「おお、じゃあ、行こうか。日頃、お世話になっているお礼だ。」






「はい、楽しみです♡」恐らく語尾にハートマークが付いているであろうと思うくらいに未来たんは喜んでいた。


 未来たんが喜んでくれて良かった。最高の思い出にしてもらおうと心に誓った。




 こうして、週末まで順調に日が過ぎていって、三月下旬の休日の日曜日のこと、未来たんと千葉のドリームランドへと訪れていた。


 千葉にあるのに東京ドリームランドという名称になっているのは謎である。




「すごい人だな。三月の季節的には、中学。や高校の春休みの真っ最中で受験を終え学校を卒業した学生たちが春休みの真っ只中だよな」




園内には学生同士で遊びに来ている姿を多く見かける。中には学生カップルも見かけられた。 青春しているなー。などと佐藤は、青い春を感じていた。






 それと幸せそうな家族連れも見受けられた。


「未来たん見て小さい子供の家族連れだよ!」




「佐藤さん、子供が好きなんですか?」




「そうだね、無邪気で可愛くて癒されるよな!」




俺も、いつか未来たんとこんな幸せな家庭を持てたらいいな。とまだ見ぬ夢を抱いてしまう。                  それにしてもリア充の比率が多いな。




 かく言う俺も、未来たんと二人で遊園地デートに来ているから人のことは言えないか。




「そうですかー、佐藤さんは子供が好きなんですねー!」




「あ、でもロリコンじゃないからそこのところは勘違いしないで!」




決して小さい子を見てハスハスと興奮する変態ではないことを勘違いされたくはない。




「わかっていますよ。佐藤さんが、そんな人でないことくらい。ただ......」




「え?ただ?」


その続きが気になる。


「いえ、なんでもないです。ただ子供も好きなのだと安心しただけです」




「そう?」なんだかよく分からないけど、どうやらロリコンとは思われていないようで安心した。




 そうして、俺たちはドリームランドを楽しむ必須アイテムの


イッキーカチューシャを頭に付ける。


 未来たんはアニーのピンクのリボンが付いたカチューシャを付けている。


 可愛い。未来たんの服装は、白い無地の襟シャツにVネックのギャザーセーターを合わせて、白いすね丈ロングスカートでコーデしている。


 靴はお洒落なヒール靴でなく動きやすさ重視で白いスニーカーにしていた。




俺的には、アトラクションに乗り降りする時に広がらない動きやすいパンツスタイルがいいと思うのだが、やっぱり、そこは女の子だ。


 




デートの時くらいお洒落したいのだろう。


 それでもロングスカートだから、冷やっとするシーンにはならないと思うが、心配するのはそこだけじゃない。


 未来たんは可愛い。お顔はまるでJC美少女でそんな彼女がお洒落したら道ゆく男性からの目を引くことだろう。






 実際、すれ違う男は皆、未来たんを二度見して彼女に見惚れていた。そして、隣に立つ俺に対して『アイツが彼氏か?オッサンじゃねーか!どうせ、援交だろ!なんであんな冴えない男と…などと嫉みが聞こえてくる。俺は、軽い優越感を味わい、遊園地デートを楽しむのだった。






 俺は、今日の為に勝負服を着てきた。


 上着は、カーキ色のモッズコートに下は、デニムのジーンズで合わせて靴は、青いスニーカーを履いている。




 園内は、西洋のドリーム作品を模した建物が立ち並び、園内にはイッキーマウスやアニーの着ぐるみが風船を持ってそこら中を歩き回る。


 中の人はさぞ、暑いことだろう。いや、野暮なことを考えるのは止そう。




「夢の国に来たって感じですね!」未来たんがハイテンションではしゃいでいる。


 その様子に彼女の中学生のような容姿と相まって子供がはしゃいでいるなんんて思ってしまう。




  手始めに可愛いクマのキャラクターをテーマにしたスライド型アトラクションに乗った。


 はちみつの壺を模した乗り物に乗って、クマのムーさんと一緒に冒険の旅へとでる。


  ストーリーに合わせてハニーポットが回転して急発進すると縦横無尽な不規則な動きにコーヒーカップと壊れたラジコンカーを足して二で割ったような動きで恐怖を感じる。


  これには驚き、絶叫マシーンじゃないのに絶叫てしまった。


 アトラクションから降りて、俺は酷い、疲労感を感じていた。俺とは対照的に未来たんは元気でピンピンしている。これが、若さか……




「楽しかったね!佐藤さん!」とグロッキーな俺とは対照的に未来たんの元気な声が響く。




「未来たんこういうの平気なんだね…」




「そうですね、平気です!佐藤さんは辛そうですね。少し休みますか?」






「う、うん…そうしてもらえると助かる」


普通、彼氏が疲れた彼女を気遣うシーンなのに逆に気遣われてしまう。


(俺、彼氏失格だな)






「大丈夫ですか?じゃあ、そこのフードコートで休憩しましょう」




「うん、ありがとう」


(なんて、イケメンな彼女なんだ。惚れてまうやろ!もう、惚れているから惚れ直すが)


年下にエスコートされる俺って……本当は、男が女性をエスコートするはずが、これじゃあ、立場が逆じゃないかー!


はい、佐藤さん、ポップコーンですよー。ムーさんのハニーポット前で売っていました。


これ食べて元気出してください」






「ありがとう」とポップコーンを受け取る。




「うん、ハチミツ味で美味い。少し元気が出てきた。」


(元気100倍だ!これで元気が出ない男はいないだろう)


ポップコーンにはハチミツがたっぷりかかったプップコーンは甘くて美味しかった。アトラクションで疲れた体を癒してくれる。


 でも、手がベトベトする。ティッシュが欲しいな。






「それはよかったです。」




「なんだか、周りが騒がしくないか?」


よく見ると周りの観光客が慌ただしく何かから逃げていた。


先頭を走っている男が『逃げろー!通り魔だーー!!』


と逃げ惑う男の叫び声にハッとなる。




通り魔、だと……




「未来たん俺たちも逃げよう!」と彼女の手を引いてその場から逃げようとする。




 逃げ惑う、人々の後方から刃渡が20センチくらいあろうかという短剣ダガーを振り回して、人々を切りつけながら全身、黒一色の服装の男が走ってくる。なんだあいつ、黒の剣士にでもなったつもりか?それは、英雄騎士なんかじゃない死神を彷彿させる恐怖の暗黒剣士だった。




 その時、一人の逃げ遅れた中学生くらいの桃色のツインテールヘアーの少女が腰を抜かしたのか尻餅を付いて動けないでいた。




 早く逃げないと、通り魔に追いつかれる。未来たんを連れて安全な場所へ逃げようとした時、「誰か、助けてー!」と少女の助けを求める声を聞いてマズイ!と思い俺の足は勝手に動き彼女の元へと動いていた。




 通り魔がすぐ近くまで接近してくる。




 彼女の目の前まで来ると手に握ったダガーを少女に振りかざそうとする。




 間に合え!俺は、咄嗟に通り魔と彼女の間に割って入り、咄嗟にコートの懐から模造ナイフを取り出しステンレス刃で、ダガーを受け止める。




コイツ、強いぞ!つば迫り合いを売り広げて俺は、通り魔と対峙したのだった。




               ***




読んでくれてありがとうございます。遊園地回はまだ続きます。


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