第12話 推しの愛妻弁当
昼休みのこと、俺が、いつもの如くデスクで今朝、未来たんから貰ったて作り弁当を食べようと弁当箱を開ける。
そこには、ミニハンバーグに唐揚げ、だし巻き玉子が詰められていた。美味しそうなおかずに、まるで弁当の宝箱や!と興奮する。どれも美味しそうで
キラキラしている。弁当は高校三年間、母親から作って貰っていたが、遂には好きな人から弁当を作って貰うと言う夢のイベントは起こらなかった。
前回、春風から作ってきて貰ったのはノーカンだろう。今こうして、好きな推しの元アイドルからの弁当を前にして俺は今、猛烈に感動していた。
唐揚げを箸で摘み口に運ぼうとしたところで邪魔が入る。
「お疲れ様です先輩!ボッチでご飯ッスか?ほー今日はお弁当なんですね。あれ?」
「なんだどうした?言っとくがお前にはやらないからな!」
「いやー、先輩。このお弁当、手作りッスよねー?いったい誰から作って貰ったんですか?」
「べ、別に誰からでもいいだろ!」
未来たんから作って貰ったなんて口が裂けても言えない。そんなことを考えていると
春風は困惑して笑みを引きつらせて「やっぱり、先輩に彼女ができたんじゃ……」
「ち、違う!」俺は気恥ずかしくなって咄嗟に否定する。
未来たんは彼女じゃない。正確には
「ふ、ふーん。そうなんだー彼女からじゃないんだー!」と妙に嬉しそうにニヤつく
「てことはお母さんにでも作って貰ったってことですかね?先輩、まだママの味が恋しいんだー!先輩のマザコン!」
「ちがーう!俺は、マザコンじゃない!」
確かに母親の弁当はどこか安心する無性の愛を感じられる味がするけど、そんな気持ち、高校卒業と同時に母校に置いてきた、はずだ。今はもう、今は、も実家から離れて暮らすため食べることのできない母の弁当を懐かしく思ったがコイツに悟られるわけにはいかない。
「そんな、誰から作って貰ったとかは些細な問題だ。お前に追求する権利はない。」
「わかりましたよ。今回はいらぬ追求はよしておきます。命拾いしましたね先輩。」
「なんでだよ!弁当を誰が作ったか分からなかったくらいで!」
それ、ただ単に、お前が言いたかっただけだろ。中二病め!
「まあ、陰キャボッチな先輩にお弁当を作ってくれる彼女なんてできるわけがなかったッスね!」
「悪かったな、陰キャボッチで!」
でも、こんな一人の生活もそれなりに楽しいのだ。煩わしい人間関係は無いし、好きなことを一人で没頭できるし、ボッチも悪いことばかりじゃない。
「ごめんなさいお昼食べているところ邪魔してしまってどうぞ、お食べください」
再び俺は、唐揚げを摘み頬張ろうとする。唐揚げは好きだ。カラッとしていてジューシーでいて美味しい。
弁当に入った唐揚げは少し冷たくて堅い欲を言えば揚げたての熱々が食べたい。
それは今度、未来たんにリクエストしてみるとして今は目の前のお肉を堪能しようとする。
「ところで、先輩なんで午前中に寝不足になっていたんですか?」再び、邪魔が入る。
クソー早く、食べさせてくれよ!
「「あー、実は、昨日、久しぶりにパソコンでの作業が捗っちゃってさ」
この前、未来たんから
「あっ、分かったッス!夜にパソコンでえっちな画像を見て下の作業が捗ったんですね!」
「下の作業って……」
「やらしー、先輩の変態!」と春風はからかってくる。
「ち、違う!俺は、変態じゃない!」俺は必死で否定する。
コイツは女なのになんて下ネタを言うのだ。女の子がそんなことを言ったらいけません!
「ていうのは、冗談で、先輩、昨夜の作業ってこれですか?」そこには俺が昨日、「小説を書こうよ」に投稿したWEB小説『デスマーチから始まる同棲生活〜アイドルと一緒に暮らすことになりました〜』が表示されていた。
この小説のストーリーは、アイドル活動をしていたカリスマアイドルの
彼女が斉藤に一目惚れするところから始まる恋物語で、アイドルも続けたいが恋もしたい美海は、アイドルを取るか恋を取るかで板挟みとなり葛藤の末、世間には交際を隠して隠れて彼と付き合うことにする。
誰にも言えない秘密を抱いて、アイドル活動をする欲張りなアイドルの話。
「なんスかこの小説は!主人公の斉藤って先輩のことですよね?『俺、美海さんを幸せにするから俺と付き合ってくれ!』ってこんなイケメンキャラしか許されない歯の浮くようなセリフを口にして。先輩みたいな陰キャが口にしてー。キャラ、ブレてますよー!」
「わーー!やめてくれーー!」
あの時はどうかしてたんだよ。あんなはの浮くようなセリフを言って、自分がイケメンキャラと勘違いしていたのだ!
「先輩みたいなモブキャラは、『ぼ、僕と
やっぱり、身の丈にあっていなかったかー!あと、ちょっと褒められてね?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます