第7話 社畜とデスマーチ
今夜は、未来たんが夕食を作りに来てくれるそれなのに定時の就業時間近くになってトラブルが発生した。
明日、取引先に発注する資料に不備が発見されてチーム総出で修正作業に移ることになった。
「さ、佐藤くん、この後…残れる?」俺のデスクにチームリーダーの
申し訳なさそうに確認を取ってくるのが唯一の救いか……
天城先輩は、俺の元、教育係で同じ部署の先輩だ。
チームリーダーなのに人と関わるのが苦手なコミュ障なところがある人だ。
濃紺のロングはヘアーを後ろでハーフポニーテールに束ねている大人なヘアースタイルだ。
俺は、グイグイくる春風より好感を抱いている。
なんせ、俺は、以前は、天城先輩のことを……いやこれは言うまい。
「あの、これから大事な用があるのですが、どうしても残らないとですか?」
出来れば早く帰って未来たんのところへ向かいたい。
「え……どうしてもダメ、かな……」
おいおい、そんな悲しい顔をしないでくれよ!そんな顔されたらの断れるわけないだろ。
「わ、わかりました。残ります」
「やった!ありがとう、佐藤くん!」
天城先輩は嬉しそうに子供の様に微笑む。笑うと可愛いな先輩なのだ。
「い、いいですよ別に、皆が頑張っているのに俺だけ直帰することなんてできないですから。」
「っ~~今度、何かお礼するね!」
申し訳なさの中に歓喜を含んだの笑みを残し天城先輩は去っていった。
「先輩、チョロっ!」佐藤のデスクへやってきた春風がからかってくる。
「うるさい!春風、早く仕事をかたづけるぞ!」
どうやら簡単に家には帰してくれないらしい。
出口の見えない暗闇を進むしかない俺は、必死で仕事に取りかかった。
夕食なんて食べる暇もなく空腹に耐えながら必死に業務をこなした結果、定時を三時間も過ぎて二十時頃やっと仕事が終わった。
と、そこで、気付いた。未来たんに仕事で遅れることを伝え忘れていた。
俺は、急いで未来たんにメッセージを送ると職場を飛び出し、自宅へと走った。
電車に乗り最寄駅で降りるも未来たんからの返信は無かった。
俺は、必死で走った。怒って帰ってしまったんだろうか?こんなに待たせれば無理
ないか。
でも、もし、俺の帰りをずっと待っていてくれていたとしたら?
一月末で、寒さはまだ厳しい、雪こそ降っていないが外気は冷たい。俺は、帰路を急いだ。
自宅へ着く頃には二十一時近くになっていた。
佐藤は、二階へ続く階段を登り、二〇二号室自室の前まで来ると、そこには扉の前で体育座り体を丸くして縮こまり居眠りしている未来たんが居た。
こんなところにいたら風邪を引いてしまう。足元には、今夜作ってくれるのであろう食材の入ったスーパーの袋が置いてあった。
白いコート下はグレーのミニスカートだったことから純白のパンツがチラ見していた。
男の性で三秒間釘付けになってしまい、被りを振って視線を逸らす。
未来たんに手を優しく握る
「ごめん。こんなに冷えるまで待たせて、早く中に入ろう」
彼女は、うとうとしていたのか、うっすらと瞳を開けてトロンとした眼差しで俺を見る。
紫紺のロングヘアーが揺れ、髪色と同様の紫紺の瞳に吸い込まれそうになる。
「お帰りなさい。佐藤さん、お腹が空いてるでしょう?今すぐご飯作ってあげますから」
「遅れてごめん。仕事が長引いちゃってさ、こんなことなら事前に合鍵を渡しておくべきだったよ」
未来たんに寒い思いをさせてしまった。きっとお腹も空いていることだろう。俺は、未来たんを伴ってアパートの部屋へと入れた。
部屋は、1LDKの間取りで生活にストレスを感じないように少しいい部屋にしてある。
「未来たん寒かったでしょ?すぐお風呂沸かすから温まって。」
「ありがとうございます」
風呂にする?それともご飯にする?」
早く、体を温めないと風邪を引いてしまう。
「佐藤さん、それは新妻のセリフですよわたしのセリフを取らないでください」
「ああ、いいや!そいうつもりじゃなくてだな!」
奥さんが仕事帰りの旦那さんに言う常套句だった。これでは立場が逆だ。
散らかっているリビングに通すが、こんな事ならもう少し、掃除しておくべきだったと後悔する。
「そ、そうですか?それなら遠慮なくお風呂頂きますね」
そう言うと未来たんは、脱衣所へと消えていった。
浴室からシャワーの音が聞こえてくる。
今、浴室で、未来たんが
推しの子が俺の家でシャワーを浴びているなんて、普通に考えたらありえないことだった。
「一生分の運を使い果たしたかもな......」と一人ごちる。
「未来たん、俺のスエットだけど、着替え置いておくよ!」
「うーん、ありがとー佐藤さん!」と浴室からくぐもった声が聞こえる。
シャワーの音を聞いているとドキドキして心臓に悪い。
「お風呂ありがとうね、いい湯だったよ!」
「未来たん風呂上がりの一杯は、ジュースがいい?それとも缶ビールがいい?」
すると、即答で「ビール!」と返ってきた。
俺は、冷蔵庫から常備してあるYUUHIの缶ビールを差し出す。
未来たんはプルタブをプシュッと開け、湯上りの缶ビールを呷りる。
「プハーやっぱりお風呂上りはコレだね!」
いい飲みっぷりにそう言う。
未来たんは、二十歳なのに中学生のように幼い顔立ちでその姿は未成年が飲酒しているようだ。
まるで事案な絵面だった。未来たんは、ビールをゴクゴクと喉を鳴らして飲む。
その度に彼女の胸元のお山が上下してこっちはドキドキして目のやり場に困る。
のだった。
***
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