第7話
さて、最下級のポーション。別名栄養ドリンクを量産していこう……と思ったら、素材が足んないことに気がついた。
「なんで?」
もっとあったはずなのに。そう思ってカバンをゴソゴソと探ってみると……
「あー! 穴が空いてる!」
貴重な岩塩が!
メジュ草をすり潰した粉末袋がなーい!
なんてこった。
岩塩、高いのに!
がっくりと項垂れる。
テレンスさんに仕入れてもらわないと。うぅ……さっきの儲けが。
というわけで、今さっき帰ってきたばかりのテレンスさんの宿の部屋を、もう一度尋ねる。
「テレンスさーん」
すると再びドアが開く。
「おや。ジンくん。どうしたね。何か忘れ物かい?」
「はい。実はですね岩塩を売って欲しくて……」
するとテレンスさん。
「あー残念。岩塩はすでに売り切れだね」
あうぅ……ですよねぇ。貴重だけど生活にも必要な品ですもんねぇ。どないしよう。するとテレンスさんに言われた。
「塩を錬金って出来ないのかい?」
俺は少し考えて答える。
「出来なくはないですね」
「ほぉ。どうやるんだい?」
「2つの方法があるんですが、1つは人間や動物の死体をドロドロに煮詰めた後に錬金符で分解して──」
「はい、そこまで! ストップです。もういいです。で? もう一つは?」
「余剰次元にあるエーテルっていうエネルギーから生成する方法ですね」
「……何だって?」
「ですから、余剰次元にある──」
「はい。そこまで。もういいです」
なんだよぉ。聞きたいって言うから答えてるのに。酷い!
テレンスさんが溜め息。
「私には錬金術師は向かないことが分かりました。あと。くれぐれも人間を素材にしないようにしてくださいね?」
「しませんよ。やだなぁ……あはは」
疑わしそうに俺をみるテレンスさん。しませんよ。やだなぁもう。あはは。
でもそうだな。死体を煮詰める方の錬金術は人間じゃなくてイノシシ辺りでやれば……
そんな事を考えていると、テレンスさんがずいっと顔を寄せてきた。
「宿屋で死体を煮詰めるんですか?」
「あーその問題がありましたね」
それはさすがに拙かろう。するとテレンスさん。
「エーテルでしたっけ? そっちのはダメなんですか?」
「駄目ではないけど、すっごく非効率的ですね。塩以上に貴重な素材を擦り潰して塩を生成する、みたいな感じなので」
「なるほど。駄目な錬金術なんですね?」
「そういうことですね」
「う~ん、まぁ、じゃあそうですね。各家庭から少しずつ分けてもらいましょう。私が手配しますから。御礼の品を用意しておいてくださいね?」
「はい。ありがとうございます」
こうして俺は塩を手に入れたのだった。
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