第6話
宿の部屋で、最下級傷用ポーションの作成を行う。傷用ポーションには等級が存在する。6等級を下限に、そこから徐々に上がっていく感じだ。
で、今回、俺が作ろうと思っているのは最も下級のポーション。別名を栄養ドリンクと呼ばれるものだ。
効能は、人体の自然治癒力を少しだけ増すだけのポーション。
国の錬金術の最高機関である賢者の塔でも栄養ドリンク的な扱いで飲まれていた。その程度といえばその程度なのだが、それでも効用は確かにあるといえる程度には効く飲み物。
作り方は、まずメジュと呼ばれる薬草を刻み、そこに水を加え、少量の塩を入れて混ぜて、最後の仕上げに魔力を馴染ませて終了。
まぁ基礎中の基礎だからな。教科書で言えば最初のページに記載されている程度の物。ただこの程度の簡単な物でも一般の人には、まず作れない。
何故か?
理由は最後の魔力を馴染ませるという作業があるからだ。これが曲者と言われている。まぁ詳しい話はまた今度な。今はそういう一般の人では出来ない作業をしていることだけを知ってもらえば良いからさ。
さて。そうやって作った栄養ドリンクを、現在、村で一番お金を持っていそうな人に売ろうと思う。
というわけで行商人をやっているテレンスさんの所にやってきた。時刻は昼の少し前。コンコンと宿屋のドアをノック。するとすぐにテレンスさんが出てきた。
「おぉ。ジン君。どうした」
「はい。実は栄養ドリンク……まぁ要するに六等級ポーションを作ったので買ってくれないかなぁと思って」
するとテレンスさんは商品を見せてくれという。
「はい。あっコップ1杯分はお試しに飲んでみていいですよ」
俺は革製の水筒から、コップ1杯分を注いでいく。
「おっ、いいのかい?」
「えぇ。効能が分からないんじゃ商品としての価値もわからないでしょうから」
「ありがたい」
そうして1杯。クイッと飲み干したテレンスさん。
「ほぉ。味は甘じょっぱいんだな」
「えぇ」
そう言って、しばらくすると。テレンスさんが目を見張った。
「おっ? おぉ! これは!」
「どうです? 効くでしょ。賢者の塔でもよく飲まれているんですよ」
「ほぉほぉ。これはいいな!」
「でしょ。薬の保存期限は半年ほどです。革製の水筒に入れてると劣化が早いので、樽に詰めるといいですよ」
「六等級というと1杯で大銀貨5枚ほどか?」
「ですね。村では大銀貨2枚ほどで売る予定です」
「ほぉ、それはまたどうして?」
「メジュ草の仕入れが楽なので」
「なるほどな。原産地だけの特売か。いいね。よし買った!」
こうしてあっさりと売り先が決まった。
うん。順調順調。
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