第5話

 さて。工房と店舗が出来るまでに色々と準備をしないとな。まずは錬金術を行うための道具。外注するやつと自作するやつの二種類が要る。


 外注の内、金物は鍛冶屋に頼むことになる。さっそく最近、出来たという鍛冶屋に顔を出した。


「すみませ~ん」

「はーい」


 出てきたのはコロコロとした女性。背が低いが体付きはがっしりしている。どうやらドワーフのようだ。まぁこの辺だと少し珍しいなと言う程度。


「えっと、錬金釜を作って欲しいんですけど」


 すると女性が驚いた顔をする。


「おや。それはまた珍しい注文だね」

「はい。出来ますかね?」

「ちょっとまってね。旦那を呼んでくるから」


 そう言って女性が奥に引っ込んだ。しばらく待っていると奥から男性のドワーフが出てきた。


「おう。錬金釜だって?」

「はい」

「珍しい注文だな。錬金術師か?」

「えぇ」

「流れ者か?」

「いえ。出戻りです」

「ふん。そうか。分かった。期限は?」

「最低でも2ヶ月後」

「大きさは大、中、小のどれだ?」

「小さいのでお願いします」

「初級、中級、上級と作れるが、どのタイプだ?」


 俺は少し驚く。上級錬金釜を作れるということは、かなりの腕だ。何でこんな村に居るのかと疑問に思ったが、でもまぁ今は注文だ。経歴はいずれ聞けばいい。


「とりあえず初級タイプをお願いします」

「シケてんなぁ」

「あはは。すみません。ただいずれは大型の上級を注文する予定です」

「ほぉ。大量生産でもするつもりか? それとも大物を作れるのか?」

「大物ですね。大量生産をする予定はありません」

「そうか。分かった」

「あと、錬金道具もお願いします」

「いいだろう。とりあえず基本になる道具だけでいいか?」

「はい」


 トントン拍子に注文が進んでいく。それで彼に興味が出たので聞いてみる。


「錬金術師とお仕事を?」

「あぁ。昔な」


 いかにも職人という感じだ。多くを語らず、どっしりと構え、黙々と依頼の仕事をする。頼もしいことこの上ない。彼とはこれからも多くの仕事を共にすることだろう。


「ジンです」

「ガンジルタンだ」

「これからよろしくおねがいします」

「あぁ」


 俺は彼に前金を渡して、鍛冶屋を後にする。


「さて。自作する道具用の素材を集めないとな」


 取り敢えず木材が要る。革も要る。紙の調達ルートも確保しないといけない。やることがいっぱいだ。


 そして、当座を凌ぐ資金源が要る。


 そのためにまず、最下級傷用ポーションを作ろうと思う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る