第13話 珠子の魔法

 珠子たまことは、酔いすぎた飲み会後の帰り道でたまたま意気投合し、そのまま一緒に暮らすことになった。

 珠子はまさにツンデレと言う言葉が良く合う子だ。此方の都合など一切構わず自由奔放に暮らしている。


「なぁ珠子聞いてくれよ。今日も部長に怒られたんだよ。でも昨日までさ、それでいいって言ってたのに今日になってそれじゃあ駄目だって言われてもどうすりゃあいいんだよ」


 珠子は面倒だなと言わんばかりにチラッと僕の方を見たが、何も言わず再び目を閉じた。


「なぁ珠子。珠子は冷たいなぁ、もう仕事辞めたいんだよなぁ。なぁどう思う?」


 やっぱり珠子は何も答えず、好きにしたら?とまるで興味を示さない。

 全く何でこんな子と一緒にいるのか分からない。そりゃあ、アドバイスが欲しいとか慰めて欲しいとか、そんなことを求めて一緒にいる訳ではないのだけど、それでも返事くらいはして欲しいものだ。


「もう珠子は全然僕の気持ちを分かってくれないな。取り敢えず遅いしご飯にしようか?」

「ふにゃ~、にゃ~ん」


 珠子の目が開き足元にすり寄ってくる。

 あぁもう可愛い。

 珠子の言葉はどれも僕を虜にしてしまう。


「珠子大好き!」


 珠子は返事をしなかった。

 全くもう。でもそこがまた可愛いんだけどな。




 了

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