第4話 彩也香の魔法


陽菜ひなちゃんはだよ」


物心ついた頃から彩也香さやかとは一緒にいた。所謂幼馴染みで腐れ縁と言うやつだ。

そして、この彩也香は事あるごとに私の事を変だと言う。彩也香だけじゃない。他の子もみんな、私の事を変だと言う。


幼稚園生の時の彩也香ちゃんは

「陽菜ちゃん。その立ち方は変だよ」

「陽菜ちゃん。その格好は変だよ」

「陽菜ちゃん。そのリボンの位置は変だよ」

って言ってた。他の子達も

「陽菜、お前喋り方へんだよ」

「陽菜ちゃんの走り方へーん」

「陽菜の笑い方へんなの」

って。

彩也香ちゃんは、そんな子達にも「貴方達も変だよ」って言ってよく喧嘩していたな。


小学生の時の彩也香ちゃんは

「陽菜ちゃん。その座り方は変だよ」

「陽菜ちゃん。その服の組み合わせは変だよ」

「陽菜ちゃん。リボンが多いと変だよ」

って言ってた。他の子達も

「陽菜、お前女の癖に男よりも背が高くてへんだ!」

「やーい、男女おとこおんな。へんな奴」

「陽菜ちゃんっていつも1人でいてへんなの」

って。

彩也香ちゃんは、そんな子達にも「貴方達も変だ」って言ってやっぱりよく喧嘩していた。


中学生の時の彩也香は

「陽菜。人目を気にして、猫背になるのは変だ」

「陽菜。みんなに合わせた服装をするのは変だよ」

「陽菜。話し方を変えようとするのは変だよ」

って言ってた。他の子達も

「陽菜、お前ますます背が高くなってへんな奴」

「陽菜のリボン全然似合ってなくてへんなの」

「陽菜ちゃんってホントにスカート似合わないね。それなのにいつもスカートってへんなの」

って。

彩也香は、やっぱりそんな子達にも「貴方達が1番変だ」って言って喧嘩して、そして私の手を引いていた。


高校生の時、私に初めて好きな人が出来てこっぴどく振られた時の彩也香は

「あんなつまらない男を好きになるなんて、陽菜は変だよ」

「泣きっぱなしの陽菜の顔は変だよ」

「あんな男の為に髪を染めて、リボンを外して陽菜らしく無い格好をしているのは変だよ」

って言ってた。私の好きだった人は

「陽菜の奇抜な服装がへんなんだよ」

「陽菜の高い背が横に立たれるとへんなんだよ」

「陽菜の髪型がへんなんだよ」

って。

彩也香はそんな私の好きだった人に何も言わず1発頬を殴っていたっけ。


専門学生時代も卒業してからも大人になってからも彩也香はずっと、私の事を変だと言っていた。


「陽菜。貴方が普通の服を着るのは変だから私がデザインした服を着なさい」

「陽菜。貴方に似合うリボンは私が作る。普通のリボンは陽菜には変だから」

「陽菜。貴方は素敵なモデルなの。貴方が貴方をやめるのは変だよ」


そして今も彩也香は私の横で変だと言い、ランウェイへと送り出してくれる。

彩也香は私の近くで私専属のデザイナーをしてくれている。

昔から私の事を変だと言っていた彩也香。

他の子達や同級生達が、私の背が高いことや容姿、話し方、服装等を変だと言っていた時も、彩也香はいつだってを変だと言っていた事は1度も無かった。

彩也香だけがありのままの私を見続けていてくれたから、周りから変だといわれても私は私の好きな格好と立ち振舞いをし続けることが出来た。

他の人と違う動きをする事や違う服装、好きな服装をし続けるのは1人では難しいのかもしれない。

でも、彩也香が言い続けてくれたのお陰で私の格好を今はみんなが真似している。


ねぇ彩也香。

みんな変だね。


私はシャンと背筋を伸ばし、光輝くランウェイを彩也香のデザインした私の好きな格好で堂々と歩いていく。




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