#4 巨大クモと「進捗表」。

トウマ


「お前後ろ!下がれ!」

かみっちの声が響いた。

咄嗟に駆け出し後ろを向いた。

そこで見た景色は人生で一番怖い景色だった。


大きなクモのような生物がこちらをじっと見ていたのである。


「なんだこいつは…地獄の魔物か?」

かみっちが冷静に発言する声が聞こえたが、目の前の巨大生物がただひたすら怖かった。とにかく叫びながら走った。頭が真っ白で何も考えられなかった。

「おい、落ち着けよ、こいつ攻撃してこないぜ」

そんな言葉を言っていた気がする。しかし耳には入るものの認識はされなかった。

ただ走って、走って、走って、疲れて走れなくなるまで走った。

もうかみっちも巨大クモも見当たらず、自分がどっちから走ってきたかさえわからなくなってしまった。クモが見えなくなったことによる安心感はあるものの、かみっちとはぐれてしまった不安感の方が大きかった。少しは息も整ってきたし、もう一度かみっちを探してみるとしよう。

歩くこと約10分。

「おいあのクソガキどこにもいねぇぞ!どっかでのたれ死んだら俺がどうなるかわかってから一人逃走中してろや!ああもう!」

かみっちの声だ。さっきから思ってたけどこのニート口悪いな。しかもすぐキレる。

「誰がクソガキじゃ!!!」

全力で叫んだ。

「ああああやっと見つけた!マジふざけんなよてめぇ!」

「てか、あの巨大クモは?」

「まだ近くをうろついてるはずだぞ。というかお前ほんとやめてくれ!」

「ごめんくちゃい。(m´・ω・`)m 」

だいぶクモにもかみっちにも恐怖心が薄れてきた。

「なんかさっき長老様からお告げあったんだけど、なんかお前みたいなクソ厨二キッズのためにダンジョン要素を追加してくれたんだとよ。んでなんか『進捗』って言って、何か特定のことを達成するとスキルが増えていくんだってさ。俺だけじゃなくてお前にもいずれスキルが使えるようになるらしい。めっちゃ強い魔力とかそういうのじゃなくて、旅を楽にするようなやつ。あと長老様の気分によって時々『クエスト』っていうのがでてきて、それを達成しないと写真を渡せなくなるんだってさ。俺らの旅を見て楽しむためなんだってさ。まったく、やってることは俺のアマ〇ラと同じじゃねぇかって話だけど…」

「なんだそれ。めんどくさすぎるだろ。」

「いやー、ほんとそれな。マジで。まぁスキル増加は大歓迎だけどs…」

ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ…ビシャアアアアアアアアアアアアアン!!!!

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァアァァァア…」

どうやら長老様に何か反抗的なことを言うと雷が落とされるらしい。どんだけブラックなんですか、このミッション。

「はぁ…雷ってこんな痛いのかよ…普通にぽんぽん打ってたわ…」

「それ聞いてかみっち天界に二度と戻したくなくなったわ。」

「その場合お前ものたれ死ぬぞ。てか、長老様が言ってたけど、どうやらあのクモは偶然俺らを攻撃しなかったらしいけど、これからどんどんいわゆる虫とかの『敵』が出てくるらしい。んでそもそも俺ら移動速度が小人になってるせいで遅いじゃん?このままじゃ世界一周どころかこの部屋からも出れやしない。だから何か乗り物が欲しいわけ。それでこの進捗表見てみ」

かみっちがさっきの壁を出す要領で空中にフローチャートのようなものが出現した。もうこの超常現象に驚かなくなってしまった自分にびっくりした。人間の適応能力にはただただ脱帽するだけだ。

その進捗表の一番下のアイコンだけ白くなっており、それ以外はすべてグレーになっている。どうやら白いところがいま挑戦できる進捗のようだ。

「これ、鞍のアイコンだけど、なんの進捗かさっき確認したら」

かみっちが左人差し指からレーザーポインターのようなものをだして白いアイコンにもっていった。すっかり使いこなしているところをみると、天界から引き継いだものなのだろう。数秒して概要のようなものが表示された。


進捗:新しい仲間

達成条件:『仲間』を作り、それに乗って移動する

報酬:スキル『分析』(トウマ)

   スキルクールダウン時間10%減少(トウマ、かみっち)


「なんか俺の名前『かみっち』に変わってるし!長老様!やめてください!」

どうやら長老様も結構な暇人のようだ。w

「ってことでさー、せっかくだしこの『仲間』を作ってみないか?多分『それに乗って移動する』って書いてあるから、魔物だか虫だかを手懐けてそれに乗るんだろうな。さっきのクモには乗れないとしても、もっともっと小さい、俺らと同じくらいのサイズの魔物か虫がいるはず。なかなか面白そうじゃないか?」

確かに面白そうだ。しかしそれには一つ大きな問題があった。


俺は虫が大の苦手なのだ。

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