第62話 春が来たら人も来た
冬が過ぎ、春が訪れた。
村は、冬の間にジルとシーラが先生となり子供達に勉強を教えてくれた。
しかし、
その弊害というのか、
爆発的に俺の事を「オナ兄ぃ」と呼ぶ子供が増えてしまった…
村から冒険者の仕事に出掛ける時、
ビルさんやリーカーさんのお子さん達に、
「オナ兄ぃ、頑張ってねぇ~」
と手を振られる…
勿論帰れば、
「オナ兄ぃ、お疲れ様です。」
と出迎えられ…〈複雑な気持ちだ…〉
そして、
今年の作付けや、田植えの時期が近づく春の中盤に、凄い馬車の数のキャラバン隊が村に訪れたのだった。
高そうな馬車列の先頭から、〈イナリー〉ちゃんが現れ、
「只今戻りましたぁ~!」
と手を振っている。
〈あぁ、やっと全員揃った…やれやれ〉
と思っていると、
高そうな貴族服の一団に、騎士団の方々…
そして、その後ろにはあの日のエルフの女性達に、
老若男女の種族もバラバラな集団が降りて来たのだ。
〈何事か?!〉
と驚いていると、
イナリーちゃんから、
「今回の事をどうしても謝罪したいと…こちら、国王陛下の御一行様と、
村への移住希望の方々です。」
と、報告をもらった。
〈へ?〉と驚く俺に、
国王陛下が深々と頭を下げながら、
「此度は、大変なご迷惑をお掛けして申し訳なかった。
そして、我が国に蔓延する〈夜魔の香〉の出所を暴き、
王国の恥とも言うべき一団の捕縛…感謝…等という言葉では足らぬのは承知の上だが、
どうしても、使徒オルナス様にお会いして謝罪と感謝を伝えるべく参りました。」
と言ってくれた。
俺が、
「長旅大変でしたでしょう。」
〈座ってお話でも〉と、大体の人数を数えた後に地面にアイテムボックスから丸太を並べだすと、
国王陛下達は青ざめ、騎士団には緊張が走る…
ヌキッサスにも来てくれていた騎士団の団長さんが、
「罰ならば私が…悪の組織を取り締まれ無かった私が!」
と慌てる始末…
不思議に思いながら、
「どうぞ、皮を剥いた丸太ですみませんが、座って話しましょう。」
と俺が言うと、
「えっ、生き恥の刑ではないのですか?」
と団長さんから知らない刑罰の名前が飛び出した。
何でも、丸太にくくりつけて、チーちゃんの〈下痢の呪い〉を食らった貴族達は、心までベッキリと折られてその後の扱いも楽だったらしく、
新たに罪が発覚して捕縛されたルボールの組織の者にも王都にて丸太にくくりつけて強力な下剤を与える〈生き恥の刑〉が採用されたらしい…
〈市中引き回し〉の代わりになるし、予算もあまりかからず、本人へのダメージも大きい…
悪さをする子供に〈アレに成るよ。〉と言えばピタリと悪さをしなくなるらしく、
発案者の俺が、丸太を並べだしたから身構えたらしい…のだそうだが…
〈そんな不名誉な発案者に成った覚えはない…〉
それから話しをすると、王国は今回の事で二割近い貴族が、何らかの罪状で捕縛され、幾つもの貴族家が罪に荷担しており一族連座など厳しい罰などを食らったそうだ…
首謀者の妹のイナリーちゃんは、
告発や、既に家を離れ、悪事の事すら知らなかった事から、〈軟禁刑〉という名前の事務的な手伝いを王都でするという刑罰を受けて、しっかりと罪を償ってから戻ってきたらしい…
〈益々イナリーちゃんって気の毒な娘さんだな…あんなアホと親父が一緒ってだけで…〉
そして、エルフさん達だが、
集落全員が拉致されてヌキッサスに来た為に男手が無い状態で森にも帰れず困った結果、
イナリーちゃんが責任を感じて、
「ウチの村の子に成って下さい。」
とお願いしたらしい…
ちなみにだが、イースナで救出したエルフさん達は、フロントの野郎が五人じゃ足りないと、追加発注したエルフだったそうだ…
聞きたく無かったが、先代のルボール侯爵の遊技場のエルフさんは、
「親父のお古は要らないと…」近年消されて、新たに集め始めた所らしい…
〈アイツ最悪だな…〉
まぁ、そんな感じで、5名のエルフさんがウチの村に引っ越しが決まり、
ヌキッサスの街で虐げられていた村人に、
王都で少し縁の有った方々等、
百人以上の移住者が来てくれたのだが、
ヌキッサスの街で真面目に商いをしていた商人さんや、絞り取られて大変だった農家さん等は、俺を頼って来たのは、ギリギリ解るが、
王都から竜人族と魔族の家族達や、
ドワーフ族の一団が
「使徒様の傘下に…」
って来たのがよく解らない。
〈まぁ、土地も仕事も沢山有るから大丈夫だけど…〉
詳しい話を聞くと、
戦争を繰り返す魔族と竜人族の中間地点辺りの村の方々が戦火を避けるために王都に避難していたらしいが、避難先で魔族と竜人族の禁断の愛が芽生え…
と言っていたが、
ブラックドラゴンちゃんの話しでは、
〈竜人族〉の一部は竜と悪魔子供の竜人と、魔族の方々の子孫のはずだが…?
と、素朴な疑問を投げ掛けると、
本人達も、〈数千年に渡り敵という事しか…〉
と、そもそもの戦争の理由すら曖昧な状態だった。
そして、ドワーフ族さんは、
「旨い酒の気配がする所を目指す!」と言ってついてきたらしいが、
「ウチの村、まだ酒を作ってないよ。」
と俺がいうと、
ドワーフ族さん達は、
「ワシ等は、世界中の酒を知り尽くしてしまった…新たな酒に出会うには、今までに無い場所を目指すしかない!
色々な種族、色々な地方…残すは使徒様のお知恵にすがるしかねぇ!
と、やって来た次第でさぁ。」
と、酒作りと酒飲みのプロ集団が村に来てくれた。
ウチの村にはこの世界の全ての人種が居るのでは?
という状態に成ったが…
大丈夫かな?
冬までに家を人数分用意出来るかな?…
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