第61話 お疲れ様会で疲れる
頭のおかしい貴族の事は、王国の方々に任せる事にして、
一旦村へと帰る事にした。
ジルとシーラは、
「こんな危なっかしい王国には任せておけないので、一旦村に連れて帰ります。」
と伝言を託して連れて帰る事にした。
王都にイナリーさんを残したままなのが少し心配ではあるが、
まぁ、捨てたとはいえ実家の末路は気になるだろう…
全てが終われば帰ってくるらしいので待つことにする。
しかし、今回の事は、ドラゴンさんには感謝だ…
あれ程早くジルとシーラを助けられたのは大きい。
ドラゴンさんに少し無理を言ってサウスフィールドの街に寄り、サウス辺境伯様に、
「無事に終了しました。」
と報告したら、
ドラゴンで来た事も驚いていた様だが、何より、
「数時間前に早馬でオルナス殿の村から知らせが来た所だぞ?」
と、ルボール侯爵領に行って、既に用事を終わらせて帰って来た事に驚いていた。
「大量の貴族がからむ一大事に成ったから、サウス様も頑張ってね…
多分荒れるよ…王国。」
とだけ告げて、少し買い物をしてからサウス辺境伯の屋敷のお庭から再び空の旅にもどり、村まで帰って、皆に今回の報告をした。
婆ぁやさんがイナリーさんを心配し、
「王都に参ります。」
と騒いでいると、アナが、
「婆ぁやさんにイナリーちゃんから伝言です。
〈国王陛下も国賓待遇みたいに警備も付けてくれています。
長旅で婆ぁやに苦労をかけたく無いので村で待つ様に〉
だそうです。」
というと、渋々我慢してくれた。
新たにジルとシーラを村に迎えて、冬の準備に入った村では、
ビルさんの工房にポー君とチーちゃんは、新居を冬の仕事として頼み、チーちゃんのアイテムボックスで持ち運べる愛巣の完成を楽しみにしている。
そして、冬支度も終了したまだ暖かい秋の暮れに、村人全員とドラゴンさんも一緒に、
〈今回のバタバタと冬支度、お疲れ様会〉を開催した。
ドラゴンさんは、沢山飛んでくれたからお腹が空いただろうと冬のお肉の蓄えのついでに、色々な獲物を取り揃え、サウスフィールドで買ったワインを樽ごと振る舞った。
「イナリーさんが不在なので、
ポー君とチーちゃんの〈結婚パーティー〉は後日にしよう。」
と言ったら、ドラゴンさんとワインで乾杯していたアナに、
「アラシとにょ、ケッこんわい!!」
とベロベロ状態でツッコミをいれられた…
〈おいおい…お嬢さん…お酒は二十歳を過ぎて…って、この世界では十五を過ぎたアナは成人女性扱いか…〉
と考えながらも、
酒癖の悪いアナに絡まれ、
泣き上戸のドラゴンさんの愚痴をポー君に通訳してもらいながら、
チーちゃんとイチャイチャするポー君を眺めるというカオスな飲み会を何とか耐えきった…
ちなみに、ドラゴンさんは何故こんな人里離れた土地に居るかと言うと、
酔った勢いで泣きながら説明してくれた…
ドラゴンさんは、北の地方で彼氏のブラックドラゴンさんや数頭の赤や青や様々なドラゴンさん達と暮らしていたそうだ。
しかし、魔族に仲間のドラゴンが連れ去られる事件が有ったそうだ、
名を上げる為に命を狙われ、それを返り討ちにするのがドラゴンの宿命と割りきっていたが、
その数年後に魔族は、信じられない力をつけて再びドラゴンと戦う事になり、
なんと、ダーリンのブラックドラゴンも連れ去られてしまったらしい…
俺が、
「そうですか…彼氏を亡くして、
傷心でこの辺境に…」
と同情すると、
ドラゴンさんは、大気が揺れる程の雄叫びを上げる…
ポー君の通訳によると、
「違うの!
アイツはわざと捕まって魔族の国を滅ぼそうとしたの…
でも、捕まって行った魔族の国で…
魔族の国で、アイツは…魔族に召喚されて捕らわれて居た、魔族に悪魔の力を与える事が出来る高位の悪魔の娘に惚れて私を捨てたのよぉぉぉぉぉぉ!」
と言って、泣き出した…
〈あっ、触れちゃいけないヤツだったかも…〉
と後悔しつつも、
俺は、チーちゃんに、
「そんな事出来るの?」
と、聞くと、チーちゃんは、
「可能ですよ。強い魂を生け贄に使い、魔界から悪魔を呼び出し融合させたり、
高位の悪魔でしたら生け贄を使い対象の人物を悪魔へと転生させる事も出来ます。」
と言っていた。
そして、彼氏のブラックドラゴンさんは〈人化〉というスキルを所持しており、
受肉し捕らわれていた悪魔の女性を解放し、
西の大地にて〈人化〉出来る部下と、捕らわれていた悪魔の女性を慕ってついてきた魔族数名とで、
〈竜人族〉の国を興したとのことだった。
…フラれたうえに相手は幸せな子沢山…飲みたい気持ちも解るよ…
しかし、竜人族が強い理由も、魔族が竜人族をねらう理由も、まさかこんなタイミングで知ることになるとは…
魔族は強く成るための装置としての悪魔の女性を取り返したいから手段を選ばず色々とやっているらしいが…
気の毒なドラゴンさん…いや、〈ドラゴンちゃん〉のような感じだな…何だかフラれて酔いつぶれているドラゴンちゃんは、その後も、
「〈ガサツな女はやっばりタイプじゃない〉って何よ!ドラゴンがガサツで何が悪い!!」
とか、
「カッコいいオスを探すゾー!」
とか、
「人化のスキルってどうすれば手に入るの…」
などとクダをまくドラゴンちゃんの咆哮が辺りにこだましていた…。
酒盛りは当面止めておこう…
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