第60話 天網恢恢疎にして漏らさず


まだ夜も明けきらぬヌキッサスの街の大通りを


真っ白い鎧を着た一団と一緒に移動している…



それは一時間程前…地下室で暴れた後、


俺は、


最高の立地な事に気が付き、泡を吹いているだけの兵士をエルフ達が入れられていた檻にぶちこみ鍵をかけ、


エルフの女性は、奴隷の腕輪を外してあげたかったが、他人の呪いなど解く力がないので、一旦端にまとめておく…


〈幸い?薄っぺらな貫頭衣の様な姿…漏らしていてもダメージは少ないので大丈夫だろう…〉


しかし、困ったのは負傷兵と貴族達だ…


無事に誘拐が出来てお祝いでもしたか、

鱈腹晩飯を食べたと思われる数名の貴族はもう…


お尻拭きが必要な状態であった。


こんな場所では治療もままならない…


と、俺は、シーラに、


「バッチい大人がバッチい事に成ってるから目を瞑ってな。


ダッコで兄ちゃんが連れてってやるからな。」


とシーラをダッコして、


ジルに


「教育に悪いこんな所から一旦出るぞ…新鮮な空気が吸いたい。」


と言って地下から出た所で、



「使徒様ぁぁぁぁぁ!ご無事ですかぁぁぁぁ?!」


白い鎧の一団が近づいて来た。


〈新手か?〉


と一瞬身構えたが、彼らの鎧の胸には教会のマークが大きく刻まれていた。


神様が〈夢のお告げ〉としてこの街の司祭さんに直接、


「直ぐに手伝いに来い!」


と、フロント侯爵の悪事と共に中継したので、


この街の教会の物理で人々を救済する〈僧兵〉の皆さんが派遣されたのだ。


既に抵抗した者が顔を腫らしながら、


「こちらでふ…」


とロープで縛られた状態で道案内をしていた…


その後、


教会の方々が俺のやり過ぎたお説教現場に降りて行き、


兵士達の止血などの処置を済ませて、地上までの運搬と、


うんパン状態の貴族も地上へ運び出してくれて、


ついでに、


数少ない〈聖属性〉魔法の使い手がエルフ達の奴隷の腕輪も外してくれたので一安心だ。


そして現在、


ヌキッサスの街の入口に向かい教会のムキムキ物理僧侶の方々と移動している。


という訳である。


荷車には意識を飛ばした〈クソ貴族〉を乗せて…



まだ、閉まっている門を占拠し、


アイテムボックスから出した丸太を地面にぶっ差して、丸太を抱き抱える様に貴族達を縛り上げる。


数分後、


漏らしたケツを見せつけるような体制の貴族達が並ぶ…


〈勿論こんな教育に悪い現場にはジルとシーラは連れて来ていない、


教会でエルフさん達と待機してもらっています。〉


そして、俺は、神様パンツとツナギと愛の指輪の装備状態になり、


街に響く様に、


「お早うございます。ヌキッサスの皆さん!


本日は門を封鎖しており、領主とその仲間の悪事の報告をお願いします。


何かされた方は申し出て下さい。


なお、違法薬物、違法奴隷など悪事に関係した方々の情報もお願いします。


繰り返します…」


と空に向かい大音量で声を飛ばした。


住民は〈何事か?〉と、集まりだし、


〈クソ貴族〉を見て、笑う者や、喜ぶ者に、安堵して泣き崩れる者…そして、青ざめて慌てる者と様々だった。


お抱えの商人は〈夜魔の香〉という、幻覚症状を引き起こす中毒性の高い違法薬物を扱い、侯爵家の資金源に成っていたらしく、


住民のたれ込みで捕まえる事が出来た。


そして、昼過ぎには、


ドラゴンさんが王都から騎士団二十数名をギッチギチに詰め込んだ荷馬車を手に街の入口に降り立った。


普通ならば住民はパニックになるが、


そうはならなかった…


何故なら、俺とアナは〈愛の指輪〉でどれだけ離れていても〈念話〉が出来る。


〈もうすぐ助っ人連れて行くからね。〉


との連絡を受けて居たから、


「もうすぐ、王国騎士団を連れたドラゴンが来ます、ビックリしないで下さい。


あと、貴族に石を投げないでね。


投げるならお尻を狙ってあげてね。」


と、注意を促して居たからだ。


騎士団の到着で一層加速するルボール侯爵家の捕縛劇は、城にいる使用人にまで及び、


様々な証拠が見つかる事となる。


傘下の貴族の悪事の証拠も見つかり出すと、


更に甘い汁を吸っていた者の捕縛も加速した。


アナと、ポー君にチーちゃんは、俺の側で、次々に捕縛される人々を眺めていた…


ヌキッサスの街は、悪事で甘い汁を吸う者と、

悪事を知っていながら、見てみぬ振りをする者と、

虐げられる人々で成り立つ歪な街だった様だ…



俺が、


「ポー君…これは有る意味〈都市破壊〉にあたるかもしれない…


こんなに捕縛されたら街が回らないよ。」


と心配すると、


アナ達は笑い出し、


チーちゃんは、


「それならばご心配なく…王都の朝市で活きの良い卵鳥を見つけましたので…」


という…


全く解らない俺は、首を傾げていると、


チーちゃんは、頬を赤らめて、


「この度、寿退職をしましたので、ただの悪魔となりました。


なので、この様に…」


と言って、フロント侯爵やその部下の貴族が縛られた丸太の方に手をかざし、


ニコリと微笑むチーちゃんは、


「えいっ!」


と何かをかけると、侯爵達の足元から黒いモヤモヤが立ち上ぼり貴族達を包むと、


尻に小石をぶつけられても目覚めなかった奴らが、


「ぐわぁぁぁぁっ助けてくれぇぇぇぇぃぃぃぃ!」


と騒ぎだした。


恐る恐る、


「何したの?」


と聞く俺に、


チーちゃんは、


「3日程続く〈下痢の呪い〉を少々」


とだけ答えた…


〈怖ぇぇぇぇぇ!

退職願いを出しただけで、無敵じゃないか!?


もっと早くにしてくれてたら楽…いや…


こんな危険なのであれば、寿退職しない方が…〉


と、色々と考えている間も、


貴族達は手足を丸太にくくられた状態で、


動かせない体をよじらせ、暴れている。


尻の緊張と緩和を繰り返す様は、


あたかも丸太と愛し合っているかのように、


時に激しく…時に悩ましく動きながら…


大量に放出している…


後ろから…


〈最悪な見せ物だな…〉



呆れながらも、後は騎士達に任せてジルとシーラを連れて一旦村まで帰る事にした。


ドラゴンさんに街で待機してもらう訳にもいかないし、村の皆にも報告がしたい…


それに、こんなクソ貴族達と関わるのは、まっぴらゴメンなので、

騎士団長さんに村の場所を伝えて退散することにした。


〈帰ったらドラゴンさんも一緒に宴会だな…〉

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