第57話 動き出す者達
怒る俺に、
アナは、
「すぐに、ヌキッサスの城に向かいましょう。」
と言ってくれたが、
俺は、
「今回は俺一人で行く…アナを交換条件にする予定だろうが…奴らは俺達が誘拐に気づいた事をまだ知らないだろう…、相手の準備が整う前に殴り込む為に、
今から単身で乗り込んでジルとシーラを助ける…
フルパワーで走れば数日で着く…」
とアナに待機を頼む、
「そんな…」
というアナを見て、
ポー君が、
「僕は行くよ!オルナス兄ちゃん!!」
というが、
俺が、
「尚更駄目だよ、ポー君…
今回は多分…誰も殺さない自信がない…
アバドンさんが頼んでたよね。
チーちゃんの禁忌に触れてしまう…
あくまで俺だけの戦いにする…良いね。」
と説得すると、
ポー君は、涙を流しながら、
「オルナス兄ちゃんの役に立てないなんて嫌だ!
でも…
兄ちゃん、ちょっと出発を待ってくれるかい?」
と言ってチーちゃんを連れてウマウマで村を出て行った。
そして、
泣き崩れ詫び続けるイナリーさんに元ルボール家追放チームも一緒に頭を下げ詫びるが、
「皆さんはもうウチの家族です。
あんな卑劣なヤツとなんの関係もない…
ただ、先に謝っておきます…知り合いの方々が邪魔をした場合…俺は…」
というと、
元隊長さんが、
「オルナス様…人拐いは立派な罪…
罪を犯した物は、誇り有る〈騎士〉では有りません…
賊とその頭目を成敗するのに容赦は要りません…
私もお供いたしたいですが…私では足手まといに成ります…
しかし、私の知るルボール家の秘密を是非とも… 」
と言って、
代々続くルボール侯爵家の秘密の地下牢の場所と行き方を教えてくれた。
〈なんと、ルボール侯爵家は代々違法のエルフ奴隷を地下に隠し、貴族としての魔力や魔法系のスキルを持った子供を生ませていたらしい…
イナリーちゃんの母も妾という名の奴隷だそうだ…〉
益々許す訳には行かなく成った…
俺が、
「では、イナリーさんの母上もそこに?」
と聞くと、
婆ぁやさんが、ゆっくりと首を横に振った…
詳しくは聞けない雰囲気だが、聞いた所で胸くそが悪くなる内容だろう…
村人皆に、
〈多分相手は俺達がサウスフィールドで活動している事をギルドからの情報で知っているだろう…
ギルド間の通信網で俺に人質交換の条件を突き付けてくるはずです…
もしかしたら何かしらの手を打ってくる可能性も有りますので、いざと成ったら逃げる準備を…〉
と指示を出す。
何度かサウス辺境伯様に加工肉を納品している〈ビル〉さん達が、
「サウス様には俺らが知らせます。
こっちは何とかしますので、オルナス様は何卒ご無事で…」
と馬車を用意し始める。
そうこうしていると、村が大きな影に包まれ、
見上げる空には黒いドラゴンが羽ばたいていた…
声を失う俺達を他所に、
「オルナス兄ちゃん。
いつものお肉のお礼に送ってくれるって!」
と、ポー君とチーちゃんがドラゴンの角に掴まっている…
広場に降り立ったドラゴンさんは、
「ギャアァァァァァオッ」
と叫ぶと、
ポー君が、
「えっと、
〈水くさいじゃないの、真っ先に相談してよ。〉
だって」
と、通訳してくれた。
俺は、ドラゴンさんに向かい頭を下げた…
そして、荷馬車をアイテムボックスから出し、乗り込み、その荷馬車をドラゴンさんが掴み運んでくれる事に成ったのだが、
しかし、
荷馬車にはアナに、ポー君や、チーちゃんも…それにイナリーさんまでも乗り込む…
「皆は連れて行かないよ。」
と念を押すが、
アナは、
「オルナスが暴れてる間に王都に飛んで、王様に檻馬車と騎士団を出せってお願いするのよ…ドラゴンさんと一緒に。」
と怖い事をいう…
イナリーさんは、
「安心してください。
王都には知り合いのお茶会仲間も居ますの…
その子のお父上がたまたま国王をしてますわ。
私に交渉はお任せ下さい。」
という…
〈お姫様と知り合いなのね…〉
そして、ポー君は、
「僕が居ないとドラゴンさんとお話出来ないでしょ?!」
と〈文句ないよね?〉みたいな顔をする。
チーちゃんは、
「マスターの護衛です。」
と…
〈ぶれないね…〉
「もう…俺を下ろしたらすぐにヌキッサスの街を離れてね…
俺が人を殺める所を見せたくないし…
ドラゴンさんにお願いして〈都市破壊〉したと判断されたらチーちゃんの雇い主のアバドンさんが困ってしまう…
なるべく街のど真ん中に降りない様にしてね。」
と、言ってはみたが…
皆の少しでも近くで…
という気持ちが嬉しかった。
待ってろ、ジル、シーラ…今から〈オナ兄ぃ〉が悪いヤツから助けてやるぞ。
フロント・ニア・ルボールの野郎…
お前は股でも洗って待っていろ!!
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