第55話 春が来て動き始める村


長い冬が終わり、春がやって来た。


何故か冬の間に村の皆のやる気が上がり、


「オルナス様次は何を作りましょう?」


と…


俺が、


「初めての冬だからあまり無理せずに不便に思うことから少しずつ改善しませんか?


あと、オルナス〈様〉ってくすぐったいから、

前みたいにオルナスの兄さんぐらいで頼みます。」


というと、


「承知しました〈オルナス様〉」


と…いつから話が通じない方々になったのだろう…


アナは、最近村人が俺とイナリーちゃんを特別扱いするのが気に入らないらしく、


「ジル君やシーラちゃんみたいに〈オナ兄ぃ〉って呼ばせたらは…」


と、不機嫌だ。


ポー君に間に入ってもらおうとするが、


ポー君はウマウマ君に乗ってチーちゃんと遠乗りに出かけている。


〈残念…〉


しかし、この二人の乗馬デートを止める訳にはいかない…


何故なら、彼らは村の家畜候補や村の警備要員をスカウトしてきてくれているのだ。


牛魔物の夫婦や


狼の群れ、


そして何故かカオル君を頂点にした〈激臭カメムシ〉の軍団が出来上がっていた…


しかも、狼のリーダーはカオル君とのサシの勝負で負けたらしく〈狼グループ〉はカメムシグループの二次組織の位置付だそうだ。


ちなみに牛の夫婦は厩舎の提供でミルクのお裾分けをくれる契約らしい…


〈もう、家畜のスカウトと交渉はポー君チームに任せよう。〉


俺は、アナのご機嫌を取りがてら狩りに向かう事にした。


村はイナリーさんが中心として畑作業や、牛魔物用の厩舎と放牧地の整備、あとは生活に必要なモノの生産をはじめてくれているし、


冬の間に俺が、教えた算数で五人いる子供組の学力も上がってきている。


本当に頑張り屋さんばかりのイイ人達で有難い…


そして、俺は、アナと二人でドラゴンの住む山の回りをグルリと3日程の予定で見て回る。


どんな物があるか、どんなエリアかを調べ、時折出会う魔物を狩っては、どんな魔物が居たかをメモっていく…


竹林を見つけたのでタケノコを探して掘ってみたり、


タケノコを求めて集まっているボアを乱獲してみた。


アナは鋼の弓とターゲットスキルで面白い様に狩り進め、


俺も〈愛のパンいち〉スコップバージョンで、タケノコを掘りがてら、スコップでサクッっとタックルボアを倒していく。


〈当面ボア肉には困らないな…帰ったらミンサー作ってソーセージでも作るかな…〉


と考えながら、昼は調査と狩りをしながら進み、


夜は小屋を出してアナと休む事にした。


魔物避けの香を使って二人で、ぐっすり休むのだが…


アナが俺のベッドに潜り込み、腕にしがみついて眠る…


特に嫌でもないし…むしろ嬉しいので、3日間こんな感じで調査を続けた。


竹林、洞窟、鉱石が取れる岩場に、崩れた石壁の集落跡…


〈ドラゴンさんの言っていたスタンピードに沈んだ獣人族の集落跡かな?


ドラゴンさんが腹ペコで魔物を追いかけ回すとこうなるのか…〉


と考えながら山に沿って村へと向かう。


帰りにアナとドラゴンさんに会いにいくか?


と考えたが、


「ポー君居ないから止めとこう。」


と、意見が一致したので、春になり草むらを走り回る角ウサギや大型のネズミ魔物などを狩りながら村に戻った。


この数日でアナのご機嫌も元に戻りニコニコしている…


村の親方達が生暖かな眼差しを俺に向けるが…我慢しよう。


村に帰り、皆に調査結果を報告し


竹を使ったカゴの制作などが出来ると〈ビル〉さんの奥様〈アマラ〉さんが言っていたし、タケノコの調理も出来るみたいだ。


「懐かしい」と楽しそうに調理しているアマラさんにタケノコは任せて、


ビル工房の職人達は、


「竹には若いモノや数年経ったモノで向き不向きが有るから、直に俺達が行って切り出した方が良いかもしれない」


と言っている。


水筒やカゴなどは村でも要るが、沢山作ってサウスフィールドの街に売りに行くのも良い…


〈どうせ買い出しに行かなければいけないしね。〉


そして、


鉱石も結構上質の鉄らしく〈リーカー〉さん達が採掘に行きたいと言っていた。


〈竹と岩場は村から1日程度だしオッサンばかりの物資収穫キャラバンを出せば大丈夫だろう…〉


しかし、その前にソーセージが食いたい。


調味料はまだあるが、いずれは足りなくなる…


貿易品を作らねば、塩すら調達出来ない。


燻製小屋はビルさんが作ってくれるし、スモーク用の木はログハウスの木の払った枝…というか、薪が沢山あるし、


リーカー工房の皆さんにかかればミンサーも出来るはず…


〈ソーセージが出来たらホットドッグ食べたいなぁ〉


あと、村に果物の苗も欲しいから、一度買い出しに出てもいいな…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る