第53話 冬が来るまでに村を作る

引っ越しも無事に済み、テント村での生活が開始した。俺達だけ移動可能な小屋暮らしなのが多少気が引ける…


なので、さっそく森から木を切り出し、家を建てる作業に入った。


と、言っても、


切り出した木材は乾かさないと建築材には使えないらしい。


〈いやぁ、プロフェッショナルが村人として来てくれて助かった。〉


大工の親方〈ビル〉さん一家と工房の皆さん


鍛治師の親方〈リーカー〉さん一家と工房の皆さん


彼らは工房全員に、八つ当たりの罪をかけられて国を脱出した方々であるが…


手に職の有る方々を簡単に切り捨てるとは…益々ルボールという貴族は…


とも思うが、


そのルボールさんの妹さんが目の前に居るので言いづらい…


〈ビル〉さんは、


「秋から冬にかけて切り倒した木は、水気が少ない、


半年乾かせば使えるが、とりあえずこの人数を冬越しさせる為に丸太小屋を建てる。


なるべく長い材のまま組み上げて、いずれ乾いたら取り壊して製材する!


イナリー様の恩に報いるぞ!野郎共!!」


と気合いを入れていた。


〈頼もしい…〉


しかし…木の切り出しが俺一人なのが腑に落ちないが…


まぁ、付き合いの浅い〈ルボール領脱出組〉に〈愛のパンいち〉斧バージョンを披露する訳にも行かない…


神様パンツと斧で8倍に愛の指輪でその2倍…


16倍パワーに〈身体能力強化〉を使い、


〈スコーン〉っと一撃で木を倒し、


アイテムボックスに放り込む…


村では〈ビル工房〉と〈リーカー工房〉の女性陣が、草刈りをしてくれて、


アナとポー君を護衛に付けたチーちゃんが山でアイテムボックスを使い石材集めをしてくれている。


集めた石材を、リーカー工房の親方達が整地し村の壁として並べる。


リーカーさんは、


「石窯だって自前で作れます。鍛治師なので石工ほどではないですが、ノミとハンマーで石の加工も出来ます。


リーカー工房のハンマーさばきをイナリー様にご覧に入れるぞ!」


とやる気十分だ。


そしてイナリーさん達お城から追放組は、


イナリーさんのスキル〈土魔法〉の〈ピットホール〉という地面に穴を空ける能力で、


村の近くまで水路を作る仕事をしてくれている。


イナリーさんが、婆ぁやと元兵士さんが杭とロープで区画を仕切ったラインに沿って、深さ1メートル幅1メートルの丸い穴を魔法で空けて、


俺特製の攻撃力上昇の鋼を使ったスコップで、穴から穴を元隊長さんが繋げてくれている。


そして、工房チームの子供達は、ママさん達の草刈りした場所の石拾いをしてくれている。


〈畑にする時に小石が邪魔だからね…〉


俺が、数時間で切り倒した木を一旦服を着てから届けて、〈ビル〉さん達が加工を始める。


サウスフィールドの街で持ち出せなかった分の大工道具も購入してあるので、


器用に丸太に加工している。




約1ヶ月後、


木材は乾燥用も含めて十分に集まり、


石材も村の近くに小山が出来ている。


畑近くまで水路が引き終わり、畑の水撒きが楽に成った。


しかし、現在作物は、1ヶ月程で収穫出来る〈開拓大根〉という、そんなに旨くも、そして、決して不味くもないが食べられる程度の作物を育てている。


なぜなら、もうすぐ冬なのですぐに収穫出来て、この作物の細かい根っこが土に張り巡らされる事で次に作る作物のために解され柔らかい土になるからだ。


しかし、俺達は小屋があるが皆はテント暮らしで、いくらサウスフィールドの街で布団や毛皮の敷物を買い込んだとはいえ、地べたでは少し寒い季節になってきた。


〈急いで皆の小屋を完成させなければ…〉


となり、翌日から、


ビルさん指導のもと、村人総出で最初の建物…通称〈村役場〉の建設がはじまった。


と言っても、


既に材料は加工して有るので、俺とチーちゃんが、アイテムボックスにしまい、指定の場所に行って取り出し、皆で微調整をする作業の繰り返しである。


そして、みるみるうちに出来上がるログハウス…


半月経った頃には、


寝泊まり出来る暖炉付きの〈村役場〉と、


鍛治小屋と調理小屋に、


なんと、こだわりのお風呂小屋も仕上がった。


男湯、女湯の2つは無理だったが、1日交代で使っている。


簡易厩舎にはウマウマを、はじめ避難キャラバン隊の馬魔物入っている。


厩舎のボディーガードにクマクマ君をお願いしょうとしたら、ポー君が、


「クマクマ君は春まで長期休憩だよ…」


と、冬眠宣言をされた。


代わりにと、見張り役でカオルくんが天井の端に住んで…?…冬眠している。


〈馬魔物の熱気で木の隙間より暖かいらしく喜んでいるとの事だが…寝っ屁をすれば、全頭を失う事に成りかねない…頼むぜ…カオル君…〉


そして、風呂に、料理にと役立つ井戸は、


ヤグラを作り、〈イナリー〉ちゃんを吊るして、〈ピットホール〉をかけては降下させる方式で掘っていた…


〈誰の発案だよ…可哀想に…〉


魔力不足で白目を向いて気絶しながら引っ張り上げられる〈イナリー〉ちゃんを見て、涙が溢れてしまった…


神様…彼女に安らぎを与えて下さい…


あっ、神様で思いだした。


家も出来て特にやることも無いので、神様の石像を皆で作ってみた。


お地蔵さん程度の大きさだが、


本職の石工さんよりは劣るが、なかなかの出来で、村の中心に飾ってある…


〈一応神様のお告げ?で出来た村なのでね…〉


何とか冬本番前に村が完成し落ち着けた…


これで、寒さで死にそうにはならない筈だ。


冬の間に皆で春からの作戦を立てよう。



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