第51話 冬が来る前にやって来た


装備が完成し、


サウスフィールドの街から、

ポー君とチーちゃんがウマウマ君に乗ってやって来た。


あの二人は鞍なんか無くても大丈夫だし、ポー君手綱すら要らない。


だって会話が出来るから…


キャンプ地までパカポコとやって来た二人の第一声が、


「イナリーちゃん来たよ。」


との報告だった。


しかし、予想外なのが、


幌馬車の様な馬車三台に、


イナリーちゃんと、あの時の婆さん、


騎士隊長と、騎士さんに御者のお兄さんはまだ解るが、よく解らない人達も合わせて30人近いキャラバンで来たとの報告を受けた…


〈状況が解らない。〉


とりあえず、片付けて街に戻る事にした。



そして、現在…


教会に来て、神界にて神様に文句を言っています。


今回はアナとイナリーちゃんも一緒です…


「神様…いっぱい来ちゃいましたよ…」


と呆れる俺に、


「ゴメン…いっぱい来ちゃったね。」


と答える神様…


イナリーちゃんが、音声だけではない生神様に驚きながらも、


「私が悪いのです…今回の〈侯爵家が罰を受ける発端と成った〉と濡れ衣を着せられた騎士隊長をはじめ、あのような軟弱な、馬車を作った職人にも罰を与えると…


そんな馬鹿な兄の魔の手から救おうと…」


と謝っているが…


〈イナリーちゃんは悪くない…〉


聞けば、イナリーちゃんは、罪を被せられてクビに成った〈婆ぁや〉と〈元隊長のマークさん〉と〈元騎士隊のゼータ君〉と〈御者のトムさん〉を連れて街を出るついでに、全員連れ出したらしい…


イナリーちゃん自体も、


「あんなヤツを我が家に招き入れて!」


と、〈追放処分〉になる予定だったらしい…


ルボール侯爵は…何とも小さい人間だな…名前負けだよ…玉付いてんのかね?…


侯爵令嬢としてのイナリー・ニア・ルボールさんは、追放エンドで終了したらしい…


しかし、問題は〈俺を頼れ〉と居場所をゲロした神様だ!


使徒を頼って、こんな大所帯でくるとは…


俺は、


「神様、どうします?


住む所から確保しないと…」


と、言うと、


神様は、目を閉じて、


「う~ん…」


と、唸っているし、


アナは、馴れたもので、イナリーちゃんとお話ししている。


暫くして、〈クワッ〉と目を開いた神様が、


「良い場所があるよ。


水辺も近いし、森がある。

しかも空白地だから誰の物でも無い!


オルナス君のモノにして街を興しなよ…ただ、ドラゴンが住んでるけど。」


と爆弾発言をする。


俺は、


「神様、ドラゴンさんが既にお住まいでしょ?


安全な場所じゃないよ!


ドラゴンさんのモノだよね?!」


とツッコむが、


神様は、


「ポー君も居るし会話が出来る…


最悪オルナス君がシバけば何とか引き分けて、


〈お前強いな…〉的な友情が芽生え…たらいいな…」


と…


〈願望ですか…〉


俺は、


「神様…そもそもドラゴンをシバいたら〈竜人族〉さんに怒られません?」


と聞くと、


神様は、


「その点は大丈夫だよ…むしろ、そのドラゴンは竜人族の敵に?と言うか、


竜人族の神様的なドラゴンと因縁の関係だからね。」


と…


〈なおのことヤバいドラゴンじゃないか!!〉


と焦る俺は、


「神様?…

神様的なドラゴンの因縁の相手のドラゴンって、

勝てる気しませんが…」


と伺うと、


神様は、


「大丈夫、〈神様的〉だもん神様の方が偉いモン!


長生きのドラゴンでもワシより年下だし、


バックのワシをちらつかせたら一発だよ。」


と、〈どこの中学の話しだよ…〉


みたいな理論で送りだされるはめに成った…


〈それって神様の感想ですよね…〉



しかし、


約半月、手ぶら同然で逃げ出してきた方々を何とかしなければならない…


神様が、〈頼れ〉と言ったのだから、


頼りにした俺が、放り出す訳には行かない…


しかも、神様がバラさなくても、冒険者ギルドに顔の利く貴族ならば、クエストをこなしている俺など直ぐに見つけてしまう…


冒険者の仕事はこの街でするにしても、別の場所に皆を匿う必要はありそうだし…


悩ましい…


と考えていたら、


イナリーちゃんと、お話ししていたアナが、


「パッと行って家を建てよう。


イナリーちゃんが大工さんと鍛治師さんの家族を連れて来てくれたから。


新居を作ってもらおうよ。


神様、どこら辺ですかぁ?」


と、話しを進め始めた…


〈よし、俺も男だ!

嫁の夢を叶えてやらねば!!〉


と、覚悟を決めたら、


〈イナリーちゃんが拗ねるから声に出して嫁、っていわないの?〉


とアナから念話が入る…


〈違うが、

あぁ、ややこしい!!


神様、なんて物を…〉


と、イナリーちゃんとアナに移住地を教える神様を見つめると、


チラリとこちらを見たあと、


「では、さらばじゃ~」


と言い残し…逃げやがった…


〈知ってるよ…あの神様、やらかすんだよ…チョイチョイ…〉


しかし、


開拓かぁ…


とりあえず、商業ギルドでお金を出してから、


生活必需品だけでも揃えないと…


あと数ヶ月で冬が来ちゃう…


神様…無理だろうけど、冬が来るの待ってもらえません?

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