第49話 米炊きと悲しい別れ


結局、米の炊き方を教えながら、


長々とアナと一緒に寝ていた事を説明するが…


料理長は、


「えぇ」、「はぁ」、「まぁ」


と…


もう、何を言っても嘘臭くなる負のスパイラルに…


〈米に集中して…お願い…〉


と、思っいたら、


やっとアナが起きて、


俺が、


「アナ、なんで一緒のベッドに寝ていたの?」


と聞くと、


アナは、


「チャンス…だから?」


と…


〈何故…疑問形…〉


チラリと見た料理長は苦笑いしていた…


〈はい、もう疑いが確信に変わった様なので、弁明を、止めます…


こうして冤罪って増えて行くんだろうな…〉


他人様のお宅で、盛った疑惑は晴れぬまま、見事に米は炊き上がった。


こちらの「ライス」は少し長い種類の黒っぽい種類で、さらりとした感じで、味見をしたら、

癖は特に無くて食べやすいのだが…


人間とは贅沢なもので、米が有った喜びと同時に、


〈白飯が食べたいなぁ…〉


という欲が沸いてくる…


浮かない顔の俺に、料理長さんが、


「オルナス殿…失敗ですか?」


と不安そうに聞いてくるので、


「成功しましたよ。」


と慌てて答えた俺、


折角米を買ってきてまで炊き方を教わりたかった料理長に、〈白飯が食べたい…〉とは言えない…


ニッコ笑顔を料理長に見せると、


料理長も笑顔で、


「せいこう…したんですね…」


と…


〈ん?何か引っ掛かるが…スルーしよう!〉


俺は、


「少し早いですが、夕食にして、片付けて帰りますよ。」


と言って、〈カレーライス〉を食べる事にした。


珍しくチーちゃんも「食べる」と言ってくれたし、

料理長に、


「昨日のトンカツを乗せてカツカレーにしてもいいよ」


と教えてあげた。


料理長は、


「このレシピ…私が使ってもよろしいでしょうか?」


と不安そうに聞くので、


俺は、


「アイデアは出しましたが、手に入る食材で作り上げたのは料理長の腕と知識です。


〈俺の料理だ!〉とデカい顔で他所の貴族様に出してやれば良いですよ。


まぁ、俺も個人的に作ってこっそり食べますけどね。


でも、表向きは〈門外不出〉にして、サウス辺境伯様の家でしか食べられない料理だと、辺境伯様の力を見せつけてやったら良い…」


〈本当に中央の貴族は…〉


と中央貴族アレルギーが出そうに成ったので、貴族の話題をそこまでにして、


洗い物を手伝い、料理長さんに長居したお礼を述べて宿屋に戻った。


…今回は大収穫だった。カレー粉もサウスフィールドの街で揃える事が出来るのと、


品種的にちょっと馴染みがないが、〈米〉も買えると解っし、


〈Dランク〉にも成った…


あとは装備を作り直すかな…

アナはパワーも上がったし、

ポー君は鉄では少し重そうだし、

チーちゃんはミスリルで作ると魔力を流し易いって言ってたし…


鉱石は…近くに鉱山が有るのかドワーフさん達も街で見かけるし、


ポー君達は鍛治師ギルドにミスリルを買いに行ったらしいけど…買えたのかな?


魔物の素材も…狩りに行くか…冒険者さんが多いから街でも買えそうだけど…


とりあえず、今日は休もう…


何だか疲れた…


翌朝、


特に依頼を受けずに、冒険者ギルドの図書館でこの周辺の魔物の情報を仕入れ、


装備に使える魔物素材をさがす。


近所に居ない魔物の素材は無駄に高いし、


最悪狩りに行く事も出来る…


商業ギルドに寄って、お金を少し引き出そうとするが…馬車の特許料が更に凄い額に成っていたので、予定の倍の大金貨十枚を…引き出してみた…


〈手が震える…〉


十枚…はじめましての大金貨が…十枚…


約一千万円…


最近ようやく小金貨が安定して稼げて、全ての報酬金が大金貨一枚以上になることは有るが、四人で分ける為に小金貨で貰っていたから…


緊張の大金貨…


しかし、この出会いも数件先の鍛治師ギルドの営む素材屋さん迄の

〈つかの間のふれあい〉となる予定だ…


素材屋で、


鋼をベースに、鱗や牙に爪…勿論〈ドラゴン〉みたいな高価な物は無理なので、


センザンコウみたいな硬い鱗のあるアリクイの鱗だが…食糧の蟻も魔物…馬鹿デカいのだ。

それをパクパクたべるアリクイの鱗である。


爪はデカいダチョウの様な鳥の鉤爪で、


牙は骨すらスナック菓子の様に噛み砕くハイエナの魔物の牙だ。


そして、ポー君の為に


近くの森に住んでいる〈カブトムシ〉の素材を購入し、


残りはミスリルを予算の限り購入する。


そして、


大金貨との別れがやって来た…


あぁ、どんな辛い別れより、〈諭吉〉との別れが一番辛い…そんな感じの気持ちだ…


サヨナラ、大金貨達…この装備で稼ぎまくるから…それまで〈暫しのお別れ〉だよ…


〈皆元気でね!〉


という茶番劇をして購入した素材で、鍛治仕事に入る予定だ。


ポー君から


「僕達の婚約指輪を作って!」


と、言われて渡されたミスリルだが、


ポー君の全財産をはたいても極少量…コイン一枚程度しか買えなかったみたいだ…


まぁ、コイン一枚分あればあの二人の指輪など楽勝で作れる…


〈小さくて良かったね。〉


今回はアイテムボックスに小屋と魔物避けも有るので、サウスフィールドの街の近場で鍛治に没頭しようと思っている。


さて、実家での特訓を生かすぞ!!

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