第48話 料理長のパーティー料理
〈Dランク〉昇進おめでとうパーティーは、料理長の自宅キッチンを使い、盛大に行われた。
材料が揃い、すぐに出来るトンカツを作って見せると、料理長は興奮しだして、メモをとりながら色々質問してくる。
スパイスも手に入ったので、唐揚げも油があるから作り、
料理長に、知っているソースなどを聞いて、なんちゃってお好み焼きも作った。
俺的には、もうひとつの味だったが、料理長は何かを閃いたらしく、
「あれを使えば…」とぶつぶつ言っている。
本当ならば時間をかけてカレーも作りたかったが、既に揚げ物と、お好みモドキと、料理長のお手製の郷土料理で楽しい時間を過ごした。
ポー君は食べ過ぎで、チーちゃんの膝枕で寝てしまい、アナも買い物の時からはしゃぎ過ぎて疲れた様で寝てしまっている…
連れて帰るのは別に問題はないが、
料理長の愚痴が止まらず帰るタイミングを逃している…
「聞いて下さいオルナスさん。
サウス辺境伯様は領民だけでなくて、全ての人にお優しいお方なんだよ。
なのに、中央の奴らは端の領主を馬鹿にして、〈田舎〉〈田舎〉と…
昨年は、この地方の料理で中央の貴族の度肝を抜こうと頑張りましたが…
結局、〈花が無い〉とか〈目新しく無い〉とかと、酷評され、サウス辺境伯様に恥をかかせる羽目に成ってしまいました。
今年こそはギャフンと言わせたいのです…」
と泣いている。
〈可哀想ではあるが、どうしたものか…〉
その後も料理長と話していると、
料理長が、
「昼に市場で話されていたスパイス料理のカレーとやらですが…
この街のスープに近いモノを感じると申されてましたが、どんな感じなのでしょうか?」
と聞いてきた…
「一言では難しいし、長く成りますよ。」
というと、
料理長は、
「ここは弟子達の研究にも使うキッチンなので、ベッドも複数ございます。
皆様にベッドで休んで頂いた後に、お時間を頂けませんでしょうか?」
と提案してくれた。
チーちゃんは、ヒョイとポー君をお姫様抱っこして仮眠室の様な部屋に向かい、俺もアナをお姫様抱っこして移動し、
お姫様をベッドに寝かしつけたあとで、
料理長と朝までカレーについて語り合った。
このキッチンには、この街ので手に入るスパイスが全て揃っており、
夜通し、一つ一つの香りを確かめながら、数パターンの配合を試しながら、
ようやくカレーっぽい物が出来て、
朝方…徹夜のテンションのまま、小麦粉を炒め油とカレー粉でルーを作り、昨夜の郷土料理のスープと合体させてみた。
すると、まだ改良の余地は有るが、十分〈カレー〉と言える料理が出来上がった。
料理長も徹夜をしたはずなのに、
「これです!これを極めることが出来れば…」
と、興奮しながらカレー粉の配合をメモし直したりしている…
カレーにパンをつけて、
〈モッチャ、モッチャ〉と食べながら、
「米で食いてぇな…カレー」
と呟くと、
ギンギンの目をした料理長が、
「コメとは?!」
と聞いてくるので、
俺は、
「米って…白い穀物で、炊くとふっくらして、カレーは勿論、色々な料理に合う、俺の知る中では最強の〈主食〉です。」
と説明すると、
料理長は、
「炊くという調理法が解りませんが、
獣人族の一部に黒い穀物を茹でて食べる方々が居ます。
その黒い穀物は〈ライス〉と呼ばれて居ます。」
と教えてくれた。
俺は、
「それ、〈黒米〉かもしれません…
俺の知っている〈米〉とは違うかもしれませんが、
お米の炊き方なら教えれますが…
一旦休みません?」
と提案して仮眠を取ることにした。
皆寝坊気味に起き出して、昼前に、皆でカレーをパンでたべた。
少し時間が経って素材にルーが馴染み、作りたてより丸い味に変わっていた…
アナやポー君は初めての味に驚いていたが、
料理長は、
「なぜだ…先ほどより旨く成っている?!」
と驚いている。
料理長は、
「少し出かけますが、すぐ帰ります。
どうかゆっくりしていてください。」
と言って出かけて行った。
アナが、
「料理長さんお仕事大丈夫なの?」
と心配していたから、
俺は、
「今日はお休みらしいよ。」
と行って、再び仮眠室に向かった。
食っちゃ寝は良くないだろうが徹夜でまだ寝足りなかった…
一時程寝ただろうか、
料理長が
「オルナスさん!オルナスさん!
ライスの炊き方を!
わっ!し、失礼しましたぁ!!」
と、大騒ぎしているので、
眠りの世界から強制的に連れ戻されたのだが…
目の前にアナの寝顔がある…
ある…
ある?!
「のわぁ!!」
と飛び起きると、料理長が、
「すみませんオルナスさん…
まさか、その…仮眠室で…まさか…」
とあらぬ勘違いをしている様なので、
俺は、
「俺も仮眠を取って起きたらあれで驚いてます。
やましい事は何もしてませんよ。」
と告げると、
しっかり起きているポー君は、
「オルナス兄ちゃんとアナちゃんは神様に祝福された夫婦だから、やましい事は何もないよ。」
と、微妙なフォローを入れてくれて、
チーちゃんは、
「夫婦ならば皆する事ですわ」
と、料理長にあらぬミスリードを促す。
そして、料理長は、何故か俺の事を
「オルナス殿」と呼ぶように成ってしまった…
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