第47話 料理長からの依頼


俺の嗅覚と皆の力で沢山の〈うまい茸〉と、


嫌になるくらいの猪が手に入った。


冒険者ギルドで報告をすると、アイテムボックス持ちなら料理長まで届けて欲しいと言われた。


〈なんでも鮮度が第一らしくて、アイテムボックスならば時間を気にしなくていので…〉


との事だが、


〈無料では嫌だ〉とゴネたら依頼達成ポイントに、〈お使いクエスト〉分のポイントをサービスして貰う事で話がついた。


それならば、猪の買い取りをお願いしようとしたが、


ギルド職員さんが、


「料理長さんに先に見せて買い取ってもらったら、少し高値で売れるかもしれませんよ。」


と教えてくれたので、早速領主のお屋敷に全員で向かった。


領主様は、サウス辺境伯様という〈優しい〉と評判の貴族様らしい…


しかし、いくら優しいかろうが、貴族さんと関わるのは懲り懲りなので、


料理長さんに依頼の品の受け渡しと、必要ならば猪肉の買い取りをしてもらったら、サッサとずらかる予定である。


メイドさんに案内されて、裏口で待っていると、


いかにも旨い料理を作りそうな太ったオジちゃんが弟子を連れて現れ、


「ありがとう、助かったよ。


早速で悪いけど、〈うまい茸〉を見せてくれるかい?」


と言われたので、アイテムボックスから麻袋を、二つ取り出し渡す。


すると、料理長は中をあらため、香りを確認したあと、


「うん、申し分ない…最高な状態だ。」


と言って、重さを計った後に弟子の一人に、アイテムボックスで保管する様に指示を出していた。


俺が、


「キノコの周辺に居た〈ボア〉も持っていますが、必要でしょうか?」


と聞くと、


「おぉ、有難い。


うまい茸を沢山食べた強いボアは肉に旨味が移っているから高値で買わせてもらう。」


と言っていたので、


大型の〈スタンプボア〉から出していく。


八頭全てお買い上げ頂き、


中型の〈タックルボア〉も半分の15頭買ってもらった。


…流石に一部分爆散してるヤツなどは出せなかったが、十分なお金と、オマケつきのポイントが手に入り、


そして、嬉しいし事に、俺達のパーティーは〈Dランク〉に昇格を果たしたのだ。


残りのボアは解体して、魔石と一部の肉を売らずに戻してもらい、


ギルドの宿屋の共同キッチンでお祝いの料理を作って小さなパーティーをするつもりだ。


報酬金を四人で分けると、チーちゃんとポー君は鍛治師ギルドで〈ミスリル〉を買うらしく、ウキウキで出かけて行った。


俺は、今から豚肉料理をする為に市場へと向かおうとすると、アナが、


〈アタシも、ついていく…〉


と念話で話しかけてきた。


〈アナ、普通に喋らない?〉


と念話で俺が返すと、


「はぁ~い。」


と腕に絡み付いてくる…


〈可愛い…〉


と、思わず言いそうになるのを〈グッ〉と我慢するが、


アナは真っ赤に成って、


「もう…」


と、照れている…


神様はなんと取り扱いの難しい神器を授けてくれたのか…色々筒抜けではないか…


いっそ外して過ごしてやろうか?


と考えていると、


「だ~めっ」っとアナに言われた…


…厄介だ…



二人で買い物をしていると、


ショウガや唐辛子等を乾かして粉末にしたスパイス屋を発見した。


大概、この地域の郷土料理のスープ…というか、少し惜しいスープカレーみたいな料理なのだが、旨いがあと何が足されれば、カレーに成りそうな料理なのだ。


十分旨いが、カレーを知っている俺は変な物足りなさを感じている。


〈カレー食いたいけど…ショウガは有ったからショウガ焼き…って醤油が無い…


猪肉のカレーを目指した方が出来そうな気がする…


カレーって何が入ってたっけ?〉


と考えていると、


アナが、


「カレーって?」とか、

「ショウガ焼きって?」とかと聞いてくるので、


俺の思い出補正も加わった旨そうな説明をしながら市場をまわっていると、


ガシッと肩を掴まれて、


「ちょっと、私にも詳しく!」


と、言われて一瞬驚くが、


よく見ると先ほどの料理長さんだった。


料理長さんは、真剣な顔で、


「頼みます。辺境伯様に恩返しするために、少しでもアイデアが欲しいのです。


中央の貴族の方々に〈田舎料理〉と…私の力不足の為に辺境伯様が見下されるのは…もう勘弁成らないのです…」


と、訴えてくる。


〈大変だねぇ…〉


と考えていると、


アナが、念話で、


〈オルナス…手を貸してあげたらは?〉


と言ってくる。


「う~ん、何か力に成りたいが、


宿屋のキッチンで料理を教える訳にもいかないし、


今日の〈Dランク〉昇進パーティー用の料理もしないと…」


と、言っていると、


料理長は、


「では、私の家でパーティーしませんか?


広いキッチンも有りますし、十人ぐらい平気で食事が出来ますし…」


と言ってくれた。


俺は、


「いやいや、そんなに大きな会場は要りません、先ほど納入に行った四人で全員ですので」


というと、


料理長さんは、


「なんと、四人で…と言うか、子供ばかりであの量を…」


と、驚きながらも、


「ならば、なんの問題も有りません。社交の季節までに何か時別な料理を完成させたいのです。


先ほど話されていた料理…是非とも詳しくお教え願えませんでしょうか?」


とお願いされてしまった。


まぁ、カレーにこだわらなくても、


トンカツは100%作れるし、


ベーコンも時間さえ有れば作れる…


ボア肉にこだわらなければそれこそ湯水の様に食い物の知識はある…


前世であまり食べる事が出来なかったので、料理漫画やグルメ番組などを見ていたからな…


正直、ソーセージは是非物で再現したい…


いっちょ頑張るか!

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