第42話 山を越えて新たな街へ


山を越えた時には夜に成っていた。


しかし、盗賊達を休ますテントも何もない…


どうするか悩んでいると、


先に走らせた騎士さんが仲間と、檻馬車を連れて帰ってきてくれた…


盗賊達は、クマクマからの解放を喜び、進んで檻に入っていく。


お嬢さん達も騎士さんにお渡し出来たし、


「あ~今日は、なかなかハードだったね。


皆、遅くなったけど休もう。」


と言って小屋を出すが、


隊長さんが、


「いやいや、オルナス殿、


皆様も来て頂きませんと…」


と、面倒臭い事を言ってくる。


〈え~、もう夜だよ〉


と、露骨に嫌そうな顔をする俺に、


「馬車も用意しておりますのでぜひ。」


と食い下がる隊長さん…


「でも、普通の馬車って揺れるでしょ…嫌だよ」


とゴネると、


お嬢さんと婆さんが、


「確かにいつもの馬車より揺れなかった。」


と、ウチの荷馬車の乗り心地を誉めている。


隊長は、


「馬車なんてどれも一緒でしょ?」


と言っているが、


「フッフッフ、隊長さんは盗賊と歩かされてたから解らないだろう…


確実に違うのだよ…確実にな…」


と、言うことで、〈あとは宜しく。〉


と、寝ようと小屋に入ろうとすると、


「ちょっと、オルナス殿、


困りますよ、我々を助けてくれた恩人を連れて帰らないと。」


と、しつこい隊長さんに根負けして、


騎士団のキャラバンの後ろをついていく事に成った…マジで面倒臭い…


〈ゴメンよ、ウマウマ君…1日歩きっぱなしだよね…明日はお休みにしてあげるから許してね。〉


と休憩度にウマウマを労いながら、


明け方、王国でもかなり大きな〈ルボール侯爵様〉の治める〈ヌキッサスの街〉に到着した。


とりあえずクタクタだが、城に案内された…


俺と、アナ、ポー君とチーちゃんは城の隣の迎賓館の様な建物に通され、


明日まで自由時間となり、


風呂に食事に、ふかふかのベッドで休ませてもらった。


騎士さん達は報告業務に追われているらしく、

昼に隊長さんが、壊れた馬車を受け取りに来たので、城の車庫に案内されて、


アイテムボックスから出してあげた。


隊長さんから、


「明日、ルボール侯爵様と会って頂きますので、」


と、言われたが、


「お貴族様に会えるような服なんてないよ、ツナギのままで構わない?」


と俺が言うと、


「その点は問題ないです。」


と、隊長さんがいう…


〈ツナギで良いなんて、気さくな貴族様かもしれないな。〉


など考えながら部屋にもどり、


皆に、


「明日、ルボール侯爵と会うことになったよ。」


と、伝えると、


チーちゃんは、自前のアイテムボックスからポー君作のドレスを出す。


オルビス兄さんに弟子入りして裁縫の手ほどきをしてもらったポー君は、チーちゃんの為に服を作りまくっている。


なので、ドレスだけでも〈どれにしようかな?〉ぐらいの数があるみたいだ…


勿論ポー君も王子様みたいなカボチャパンツスタイルの服を用意しているみたいだ…


アナと俺だけ〈よそ行き〉の服がないが、


〈まぁ、大丈夫らしいから良いよね。〉


昨日は徹夜だったので、


夕食を頂いた後、少し早いが寝ることにした。



そして、翌朝…


「オルナス様、お召し替えのお時間です。」


と、何人ものおば様使用人さんがなだれ込み、


俺の体を採寸したあと、


流れるように全裸にされて、


新品のパンツを履かされ、


肌シャツ、カッターシャツ、タイツにズボン、ネクタイに…


と、久々にステータスのバーゲンセールが始まり、弱体化していく。


「止めてくれ…死んでしまう…」


と、抗うが、もうタイマンでもおば様に勝てない状態である…


なんだかそれっぽい服装に成った時には、


死ぬ一歩手前、


手袋をという、おば様に、


「せめてパンツは自前に戻して…」


と懇願するが、


「もう洗濯しております。

本日はお天気なので、夕方には乾きますよ。」


と…


死んだ…ステータスゼロになる…


着ている服スリップら重く感じる…


滝のような汗をかき、フラフラする俺を見て、


おば様達は、


「あらら、暑がりだったのね。


夏服にしましょう。


平民には一生に一度着れるか着れないかの豪華な服なのにね…勿体ない。」


と、上着や手袋に帽子などの無い比較的簡単な服装に成ったので、


弱体化も〈死〉を感じない程度で止まってくれた。


〈やっべぇー死にかけた。〉


と心の中で文句を言っていると、


部屋の扉が開き、美しく着飾ったアナが現れた。


思わず息をすることも忘れる程の〈美少女〉に、


俺は、見とれていた…


〈まさか、あんな出会いをした少女が…〉


と驚く心と、やっぱり美人だな…と納得する自分がいた。


恥じらいながら、


「どうかなぁ?」


と聞くアナに、


「綺麗だ…」


と、ため息の様な感想しか出せない俺が不甲斐ない。


しかし、アナは、


そんな屁みたいな感想でも、


弾ける様な笑顔で喜んでくれたのだ。


〈あぁ、ポー君がチーちゃんに語りかけるような甘い言葉の一つでも吐ければどれだけ格好良かったか…〉


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