第41話 パンツ一丁の鎮圧作戦


あぁ~、どうするかなぁ…


踏み込んでお嬢さんを殺されたらマズイし、


交渉するにも、提示出来る条件がない。


仕方ない、


正面から誠意をもって、


鎮圧しよう…


と決めて、


「ごめんください!」


と礼儀正しく洞窟に入って行った。


三人の盗賊は、いきなり現れた俺に一瞬驚くが、


「なんだ、ガキかよ!驚くじゃねぇか!!」


と怒鳴る。


俺が低姿勢で、


「あのぉ、そのお嬢さんを…」


というと、


盗賊の一人が、


「なんだよ、おめぇも子爵様に頼まれたくちか?


残念だったな早い者勝ちだ。


まぁ、令嬢は〈生きていたら〉良いらしいから、俺たち30人で楽しんだ後で、お前にも回してやるよ…なんならウチの傘下に入るか、


変な格好だしサンダル…スラムのガキだろう?


ウチにも多いから気にするな。」


と、外道なのか人情に厚いのか解らない提案をされた。


お嬢さんは、その間も、


「お願い!助けて!!」


と、騒いでいる。


〈まぁ、30人のお相手をさせると言われて慌てるな!という方がおかしいが…〉


俺は、


「はぁ~」


と、ため息を吐いたあと、


「お嬢さん!少しの間耳をふさいで下さい。


絶対に聞かれたくないので…


良いですね。」


と声をかけると、


〈コックん、コックん〉


と頷き耳を塞ぐお嬢さん…


盗賊達は、


〈何をするんだ?〉


と警戒するので、


俺は、


「兄貴!

実はご相談が…」


と、話しを合わせるように語る。


ポケットに手を入れて、アイテムボックスを気付かれないようにして、小金貨を三枚アイテムボックスから取り出して並べる。


すると、盗賊達は、


「おっ!」と身をのりだし話しを聞こうとするので、


俺は、


「兄貴の傘下に入れて頂くならば、これぐらいの上納金を…」


と話しながら服を脱ぎ始める。


盗賊の一人が、


「なに服を脱いでるんだ?!」


と再び警戒するが、


俺は、


「兄貴達に〈丸腰〉なのを見て貰いたくて…」


と話しながらパンツ一丁になった。


手前の盗賊が奥の男に、


「お頭、このガキなかなか肝が座ってますぜ。」


と話している。


〈お頭発見!〉


お頭は、


「気に入ったぜ、今から一緒にこの令嬢をひん剥いてみるか?」


とゲスい笑いを浮かべる…


〈おっ!?お嬢さんは反応してないな…ちゃんと耳を塞いでいて感心、感心…では、〉


と、俺は、作戦の仕上げに入る。


〈すぅ~〉と息を吸い込み、


フルパワーで、


そんな事したら…「メッ!!!」


と、叫ぶ。


洞窟が軽く揺れ、反響が治まると三人は泡を吹いて倒れている。


そして、


残念な事にお嬢さんも泡を吹いていた…


しかも、足元がビシャビシャで…


〈最悪だ…責任問題にされたら大変だが…〉


よし、俺は、何も見なかった事にしよう!


と、決めて、


とりあえず盗賊を縛り上げ、


一人ずつ〈エッサホイサ〉と馬車の近くに運び、


最後にお嬢さんだが…


この状態で連れて戻ると、アナが怒りそうだし…


もしかしたら鼓膜をヤってるかもしれないので、ポーションぐらいは飲んで欲しい…


しかし、〈口移し〉は避けなければならない…


と、悩んでいると、


「ん、?!う~ん…!!」


と、お嬢さんが目を覚ました。


〈助かった!〉


と思うが、先ずはお嬢さんの確認からだ。


「大丈夫でしたか?」


と、俺が笑顔で聞くが、


〈はい?〉と耳に手をあてて、〈なんですかぁ?〉みたいな顔をするお嬢さん…


「あぁ、鼓膜がサヨナラしてるね…ゴメン」


と呟き、アイテムボックスからハイポーションを取り出して、


飲むジェスチャーをしてから渡す。


お嬢さんは恐る恐るハイポーションを飲み干すと、


やっと、音が戻ってきたようで、


「貴方は?」


とやっと落ち着いた様に尋ねる。


俺は、


「旅の者ですが、お怪我等はありませんか?」


と伺うと、


お嬢さんは、真っ赤な顔になり、


「私、あまりの恐怖にその…」


と…


俺は、座りながら下を向くお嬢さんに、


「気にする事は有りません。


賊は一人残らず捕縛致しました。」


と、あえて、粗相した事に触れずに、しかも気付いてないフリまでする紳士な対応をした。


〈流石に二回なので、成長もする。〉


お嬢さんをエスコートして山道に戻り、


立派な馬車まで移動する…


うっすら香る馬車周辺で、縛られた盗賊達は目を覚まし始め、


騎士やお付きの人や、御者さんも…


そして、馬君達も復活し始めていた…


〈ゴメンよ、感じの悪い隊長の巻き添えで…馬君達や御者さんに罪はないのに、


オルナス反省…〉


と、少し心を痛めたのだが、


問題は30人の盗賊と、


軸の歪んだ馬車…〈こりゃ動かない訳だ。〉


悩んだ末に、


騎士の一人と、御者さんは二頭の馬で先に帰って応援を呼んできてもらい、壊れた馬車はアイテムボックスへ入れて、お嬢さんと婆さんはウチ荷馬車に乗ってもらうとして、


アリババのアレより少ない30人の盗賊は、ランプの精は呼べないが、

妖精の従魔を呼んでもらい、クマクマ君を先頭に電車ごっこをしてもらう事に成った。


〈歩くのが遅くてクマクマ君のロープにテンションがかかるとクマクマ君から愛の有るお仕置きビンタが、入るルールにする〉と、


皆さん〈キビキビ〉歩いてくれている。


そして、


電車ごっこの最後尾の見張りに〈隊長さん〉を歩かせている。


〈お前もキビキビ歩くのだぁ!〉


ゆっくりとしたペースで進む荷馬車の荷台で、アナが達が、お嬢さん達と仲良くお話をしている…


俺も御者台から参加しようとすると、


アナに、


「オルナスは前に集中!」


と叱られる…何故だ?

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