第39話 旅立ちの予感と真実


イースナを拠点に〈Dランク〉を目指して依頼を受けているが、


正直な所、イースナ周辺で依頼をこなしていたのは、


〈通行料の割引〉


の為なのだが…


馬車の特許使用料も馬鹿みたいに入るし、


ポー君の従魔、クマクマ君とカオル君で十分強いが、そこに〈チーちゃん〉という、

超大型ルーキーが加わり、怖いもの無し状態です。


チーちゃん、炎魔法、氷魔法に加え


魔力を使った〈身体能力強化〉の〈ブースト〉と、


闇魔法というレア魔法も使える。


アバドンさんとの約束で、人に対しての〈呪い〉と〈暗殺〉は駄目だけど、


〈足枷の呪い〉

〈弱体化の呪い〉


等のデバフや


〈シャドーウォーク〉という影に潜ったり出来る闇魔法も使える。


本人が空をとぶ〈フライ〉と、


そして、あまり上手ではないと言っていたが、〈念動魔法〉という魔力で物を動かす魔法に、


アイテムボックスまで持っている。


ある意味、一本のホラー映画の主人公に成れる逸材だった。


影に潜り、空を飛び、ポルターガイストに、どこからともなく取り出すナイフで、信じられないパワーで襲いかかる…


呪いもかけるし、火も出せる上に、扉を氷で塞ぐことも出来る〈悪魔人形〉…


〈恐えぇぇぇぇぇ!〉


魔物には物理的に強いし、


人にも精神的に強そう…。


という感じです。


今のパーティーは、


前衛に俺、


後衛でアナとポー君


そして、〈先生お願いします。〉的なポジションで


チーちゃんや、従魔君達がいる。


用心棒が激ツヨ状態だ…


金も力も有るので、別にイースナで無くても良いのでは?


という意見が出たので、次の拠点と目的を探す事に成った。



次の拠点選びをしていると聞いて、猛反対したのはプリシラさんと、司祭様だが、


イスタ伯爵様はむしろ、


〈いつまで使徒様を一人占めするのか?〉


と社交の席でチクチク言われて居たらしく、


「国王陛下にも一度逢われたらどうだ?」


と、言っていた。


〈国王陛下かぁ…面倒臭いなぁ。〉


これは困った…


と、いうことで、困った時の〈神頼み〉で


パーティーの皆で教会に来たのだが、


チーちゃんが教会の建物に入らない!


「ワタクシは遠慮しますわ…」


と、頑なだ。


宗派的なモノか、やはり悪魔が関係してるのか…


ポー君が心配して、


「僕も外にいる。」


と、言って、結局アナと二人で教会に入る事に成った。


司祭様が既に礼拝堂にいて、


「神よ、あと一年ほど使徒様をイースナに留まる様にお願い致します。」


と祈っている。


〈あれは神様にでは無くて、俺たちに聞こえる様にだな…〉


と思いながらも、


「司祭様?」


と、声をかけると、


司祭様は、


「はっ、使徒様!


気が付きませんでした…」


と、わざとらしく言っていた。



礼拝堂でアナと二人で祈りを捧げると、


久しぶりの神様が、


「汝ら二人の結婚を認める…」


と言ってきた。


喜んでくねくねしているアナ…


〈神界に来ることに疑問も持たなく成ったのかな…アナは?〉


と、思いながらも、


俺は、


「神様…別に結婚の報告では無いのですが、」


というと、


神様は、


「えっ違うの?二人で来たからてっきり…


じゃあ、将来の分の先払いで。」


と、言ってくる。


〈結婚の祝福って、先払い制度があるのか?〉


と思いながらも、


「定期報告も兼ねて、そろそろ次の土地に向かおうかと考えてまして…


どこか、オススメないですか?」


と神様におねだりする俺に、


「う~ん?


魔族と竜神族はピリピリしてるから避けた方良いかな…


獣人族はオルナス君にオススメだけど、


仲間の装備を整えるならドワーフ族の国も面白いかもね。」


と教えてくれた。


アナが、


「神様、オルナスにオススメとは…その…」


と何か言っていると、


神様は、


「あぁ、アナちゃん!


違う、違う性的な意味じゃないよ!!」


と、説明していた。


〈アナよ…なんて質問をしてるんだ…〉


と呆れていると、


神様は、


〈そう、責めないであげて、オルナス君を奪われるのが恐いだけだから…〉


と心に直接語りかけてきた。


神様は続けて、


「オルナス君、どこに行くのも自由だけど、


人族の国を先に巡らない?


司祭の子も、何か思う所が有るから祈ってたみたいだし…


オルナス君にお願いするべきか迷うけど、


人族の悪いヤツも少し前の奴隷商人みたいなのが居るからね…特に他の種族に迷惑をかけているのは、


〈使徒様〉が来た!


ってだけで悪さを止めるかも知れないから、嫌じゃ無かったら、あちらこちらに旅をして欲しい」


と、言われた。


俺が、


〈どうしようかな?〉


と考えている間に神様は、


瞳を閉じて、何かしている…


そして、


〈クワッ〉と眼を見開くと、


「オルナス君もアナちゃんも、


面白い事が有ったら報告をお願いね。


ポー君の一目惚れと魔王召喚なんて…


魔王さんなんて、なかなかお目にかかれないレアな存在だよ。


逢いたかったなぁ~」


と話すのだが、


俺が、


「しかし、配下のチーちゃんは、


教会に入るの嫌がってましたよ…?


神様と悪魔さんって相性が悪かったりしません?」


と聞くと、


神様は、


「それは無いよ、


チーちゃんとやらは、教会の結界で魂の定着が剥がれるのが嫌だから入らないだけだよ。


馴染ますのに、また、時間がかかるからね。


悪魔って言っても、異世界の神様のポジションだよ。


戦争でもしてない限りは別に隣の国の王族みたいな感覚かなぁ


栄養源が違うだけの存在だよ。


神は祈りがエネルギーだし、


悪魔は、欲望がエネルギーなだけ…紙一重だよ。」


と説明してくれた。


〈えっ、チーちゃんが、

俺がパンツ一丁に成るときに、スッゲー嫌な顔するのは、


神様の波動的な何かを感じていたのでは?〉


と、俺が悩んでいると、


神様は、


「それは、ただ、パンツ一丁のオルナス君を蔑んでいるだけだよ。」


と優しく教えてくれた…


〈知らなきゃ幸せな真実って…有るんだね…〉

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る