第38話 それぞれの修行


さて、


オルビス兄さんにポー君とチーちゃんをお願いして、


ウマウマを貸してもらったままで、


爺さんとアナと俺で、ギルドの建物へ向かう。


商業ギルドのデカイ建物には、


鍛治ギルドと、錬金ギルドは〈魔道具部門〉・〈創薬部門〉があり、木工ギルドも入っている、


この街〈イスタンテ〉の中心だ。


イスタ伯爵領は、


領都イースナ、林業や農業の街イースウッズ、


そいて、工業の街イスタンテの3つの街と、複数の村で出来ている。


爺さんがイスタンテの近くの村に住んでいるのも、近くの鉱山で、良質の鉱石が手に入る事が大きいらしい…


そして、


爺さんは一応、この街の鍛治師ギルドでは顔が利くらしくて、


ギルドに到着するなり、


あれよあれよと手続きが終わり、


サスペンション馬車の特許が取れた。


しかし、それからが大変で、


商業ギルドに向かい、特許使用料の振り込み先を作れと言い出す爺さん…


「これまで通り、前の口座に入れておいたら?」


と、俺が提案するが、


爺さんは、


「風呂とかの特許料で壁の外なら、村と同じ広さの土地が即金で買えそうだ…


これで、あの馬車の特許使用料まで入ったら、


家に私設兵団を雇わないと怖い金額に成りそうだから…」


と言っている。


〈大袈裟だなぁ〉


と、思いながらも渋々新たな口座を作った。


アナが


「ウフフ、二人の結婚資金口座だね。」


と、可愛い事を言ってるが、


爺さんが、


「ワシの予想では、孫まで安泰な資金になるぞ…」


と冗談を言っている…


〈まぁ、旅の資金は有って困らないし…〉


と、納得して、


商業ギルドをあとにする。


あとは、金属等を買い付けてから村に戻ろうとすると、


鍛治師ギルドマスターが数名の職人さんを連れて来て、


爺さんに、


「あの馬車の手解きをして欲しい」


と、言ってきた。


爺さんは、


「あれは息子のオルナスの発明だから…」


と、丸投げされて、


結局、爺さんとオルフェス兄さんに教えるついでに、三名の親方さんに教える事に成った。


特許を出した設計図を見たら作れると思うが、


親方の中には、技術は有るが字が読めない方もいるらしく、


口伝を希望しているそうだ…




そして、


いきなりオッサン人口が増えた実家で、一週間にわたるサスペンション講習会がはじまった。


我が家の客間と言うか、ごく稀に帰省する兄や姉用の布団で雑魚寝をしてもらい、


アナとジルはお肉係、


シーラはお買い物係で、


俺が講師をして、実際に一台組み上げる予定である。


出来た馬車の車体は鍛治師ギルドに展示して、


他の鍛治師が参考にしたり、長さを図ってお手本にする予定だ。


規格が統一されれば、木工ギルドも馬車の客室を作るのが楽になり、〈馬車の街〉としてイスタ伯爵領が栄える様にするのがギルドの目標らしい。


研修に来ている三人の親方は、既に馬車制作の依頼を受けており、やる気も十分だった。



そして、講習は、


…正直一週間も要らなかった…


理屈を教えるのに1日、


実際に俺の作った荷馬車をバラして、爺さんの工房にある馬車のパーツを流用して複製するのに3日…


あとは、注意点をおさらいすれば、


受講生は一流の鍛治師なので、放っておいても作れてしまう…


どちらかというと、俺の鍛治の腕前や知識の向上の為に各工房の親方に来てもらった様なもので、


爺さんとオルフェス兄さんも合わせて


五人の師匠に、魔物素材を使った武器の加工や、


人族ではあまり使わない魔法装備の知識や、


人族や獣人族向けの〈闘気〉を使うのに適した武器の知識を学んだ。



知らなかった…あの身体能力強化は魔力ではなくて、


〈闘気〉という力なのだとか…


獣人族は闘気しか使えなくて、


人族も主に闘気だが、少しの量ならば魔力も使えて、一部の人間は魔法も撃てる。


竜人族はどっちもバリバリつかえるらしい。



それに対して、魔族やエルフ族は闘気が殆どが使えないし、


ドワーフ族や妖精族は魔力も闘気も使えるが、どちらも威力が弱いらしい…


ドワーフ族は技術や魔道具で補い


妖精族は、地脈や霊力それに、召喚術等を使い外部から力を呼び込む術を知っている…


それらの種族の特性に合わせた装備が求められると教えてもらった。



〈俺やアナとポー君やチーちゃんで、求められる武器や防具の系統が全く違うのか…〉


と、理解して、


全員にただの鉄装備を渡していた自分を反省した。


〈鍛治仕事は奥が深い…〉


と、痛感して、一週間に及ぶ特訓が終わった…


親方達は、


「使徒様の弟子に成ったし、

使徒様の師匠にも成ったから早く帰って自慢します。


沢山馬車を作って特許使用料でお城が建つぐらい頑張りますから…」


と言って帰って行った。



〈おもてなしモード〉で大変だっただろうと、


アナ・ジル・シーラの家事担当組を労い、


オルナス特性のシチューを振る舞った。


アイテムボックスにミルクもバターも入っているので、


パンケーキも作ってあげた。


初日は言い合いをしていたアナとシーラもお腹いっぱいで仲良く並んで寝ている…


予定は少し狂ったが、


鍛治の知識にも上がったし、


明日は、イスタンテに向かい、ポー君とチーちゃんと合流してイースナの街に戻る事にしよう…

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