第36話 雨降って地固まる
アナを怒らせてからは、
全員、何故か仲良く成った…
恐怖の対象に対して、一時休戦ではなく強い繋がりを作り、皆で〈アナ〉に対して立ち向かう事を自然と心に誓ったのだ。
と言っても、別にアナは四六時中不機嫌な訳では無い…
俺が構っている間は大人しく、可愛らしい少女なのだ。
ポー君も、アナの注意が俺に向くように、
「オルナス兄ちゃん、アナちゃんの装備も手直ししてあげて。」
とフォローを入れてくる。
アナも、
「うん、最近胸当てがキツい感じがするの…」
と言っているし、
チーちゃんまでも、
「アナ様、成長され益々大人の女性に近づかれたのでしょう…
キツい装備で締め付けるのは良く有りませんわ。」
と言っている。
では、次は遠征を考えているから、今からチャチャイと直すかな?
と、胸当てを預かり鍛治場に向かおうとすると、
アナが、
「計れ…」
とだけ、笑顔で言ってくる…
〈しかし、目が笑ってない!〉
焦る俺と、危険を感じて、各自の用事に向かうポー君にチーちゃん…
〈逃げやがった!!〉
と一瞬だけ二人を恨むが、
…よし!俺も男だ!!
〈ヤってやる…〉と心を決めて、
鍛治場で、アナと二人っきりになり、
望み通り、アナの体のサイズを計りながら、
「こんなに成長したんだね…窮屈な装備を使わせていたんだ…ゴメンよ。」
と、アナを抱きしめて、耳元で、
「アナの変化は全部知りたいんだ…
いつでも、調整するから我慢しないでね。」
と囁くと、
アナは、真っ赤な顔で見つめてくる。
何だか、恋心につけこむ手口に少し罪悪感を感じるが…アナが幸せならば皆が幸せになる…
そして、予想通りアナは、ご機嫌になり、
ギュッと暫く抱き合った後、
胸当ての手直しを終わらせた。
翌日、遠征に向けて、
馬の魔物を扱う牧場で、ポー君に一頭馬魔物を選んでもらい、購入した。
〈ウマウマ〉と名付けられたオスの馬魔物は、我が家の厩舎を気に入ったようで、放牧場で草を食べてのんびりしている。
馬の世話は、ハーツ兄ちゃんが雇った馬係の〈モーリー〉さんという、おじさんが見てくれるので安心だ。
〈ハーツ兄ちゃんからクランハウスの家賃替わりの一部として、無料で世話してくれている。〉
そして、準備は整った。
サスペンション付きの荷馬車の初出動だ!
目指すは故郷の村…
目的は幾つかあるが、
顔を見せるのは勿論、
服屋のオルビス兄さんにポー君に裁縫の手ほどきをしてもらい、ポー君は最終的にチーちゃんの服を作れる様になりたいそうだ…
手土産にシルクスパイダーの糸やエルフの国の反物を渡せば何とかしてくれるだろう…
シーラには人形と
ジルには領都で購入した本を数冊
をお土産にして、
爺さんと、オル兄ぃには、チョッと良いワインを樽で買い付けた。
そして、
今回の里帰りで、鍛治の腕を上げて次回のパーティーの装備を打ち直す時には、
もう、ワンランク上の装備を目指す為の里帰りだ。
荷馬車に揺られて村を目指す。
ウマウマに引かれる荷馬車はあまり揺れずに快適に進み、
夜はアイテムボックスから小屋を出して、交代で見張りをしながら休む…
と言っても、
俺とアナ、ポー君とチーちゃんの2交代だが…
四交代にしようとしたのだが、
俺の見張りの間はアナも起きて一緒に焚き火の前に座りくっついてくるし、
チーちゃんの番になると、もれなくポー君も一緒に起きている…
〈ならば2交代にしよう。〉
と成ったのだが…エルフの〈魔物避けの香〉が有れば街道でのキャンプぐらいなら大丈夫だろうし、頑丈な小屋なので、狼程度ならば気にせずに眠れそうだ…
イスタ伯爵様がエルフの国と交易を始めてくれたので、探せばイースナの商会で扱っているだろう。
と、村に入る所辺りで気がついた…
やっと五日の旅も終わり、実家にもどり、
仲間の紹介を済ませた。
約一年ぶりのジルとシーラはかなり大きく成っていた。
シーラは〈お人形をあげれるギリギリの感じ〉に成ってしまっていたが、喜んでくれてホッとした…
しかし、すぐに、
手の中のお人形とチーちゃんを見比べて、
「動くの?」と一瞬不安そうに聞いてきた…
〈大丈夫だよ、でも…チョッと気になるよね。〉
俺は、シーラに、
「チーちゃんが特別で、その子は動かないから…普通のお人形だから。」
と、説明したのだが…
チーちゃんとソックリなのが災いし、なかなか信じて貰えなかった。
〈これが原因で人形恐怖症にならなければ…〉
と、心配していたが、
そのうち、ポー君とチーちゃんと一緒にお人形遊びをしていたので大丈夫だろう…
なぜか、アナはシーラに嫌われてしまったのか〈プイ〉っとされているし、
ジルが、気にして必要以上に、
「アナ姉ぇ」と言ってアナの側にいる…
よく分からないなぁ…?
皆で晩御飯を食べて、
家の側にアイテムボックスから小屋を出して、実家の風呂に交代で入り、
早速ワインを開けて飲んでいる爺さんとオル兄ぃの楽しそうな声が聞こえるなか、見張りなど気にせずにユックリ眠りについた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます