第33話 シルクスパイダーとの遭遇


やっとこ、久々の狩りに来たのだが…


寝不足のポー君が早速クモの巣にからまりながら、


「オルナス兄ちゃん、ヤバいよ、取れない…」


などと言いながら、〈ウニョウニョ〉ともがいている…


俺は、


「無駄に絡まるから動かないで、ポー君!」


と、言って落ち着けようとするが、


慌てるポー君という〈獲物〉の振動がこの巣の〈主〉を呼び寄せる。


警戒していたアナが、


「二人とも、シルクスパイダーが来たわよ!」


と、忠告してくれるが、


〈ヤバいよ…このタイミングですか…〉


と呆れながら、脇差しを使い糸を切り裂くが、ポー君を助ける前に主の〈シルクスパイダー〉が先に到着しそうだ。


俺は、


「ポー君、暴れないでよ、先にクモを倒すから。」


と言ってサンダルを脱ぎ捨てる。


〈本当はツナギも脱ぎたいが、そんな時間は無さそうだ…〉


アナの弓の攻撃で、一瞬の時間稼げたので、ツナギと脇差し装備、〈6倍〉の状態で、シルクスパイダーに斬りかかる。


〈シルクスパイダー〉は絹の様なしなやかな糸を出すホームこたつサイズの蜘蛛なのだが、


名前に反して、〈マヒ毒〉を使い獲物を新鮮なまま保管して、ゆっくりと食べる趣味の悪い蜘蛛さんだ。


放って置けばポー君は確実に食料倉庫行きになる。


糸に絡まりながら、ポー君が、


「えっと、


〈オーッホッホ、アタシのディナーにしてあげるわ坊や…〉


だ、そうです。」


と、通訳してくれる…


〈余裕かよ!〉


しかし、おかしい…


シルクスパイダーは、オスはカラフルで、


メスは地味なカラーのはず…


俺の脇差しと鍔迫り合いをしている鋭い足の持ち主はカラフルな蜘蛛さんだよ?


周辺を確認するが、別個体が居る様子もない…


キョロキョロする俺に、


ポー君が、


「えぇっと、


〈アタシとヤってる最中によそ見とは妬けちゃうじゃない!〉


と言ってます。」


と、蜘蛛さんの言葉を伝えてくる…


〈オネェさんの蜘蛛なのね…〉


俺は、納得して、


「はい、はい、理解したから、大人しく素材に成ってもらおうかな?!」


と、鋭い足を〈身体能力強化〉で押し返して、


脇差しを構え直す。


すると、ポー君が、


「オルナス兄ちゃんダメ!


従魔にするから倒しちゃダメ!!」


と、慌てる…


確かに、倒すならば、〈クマクマ〉君や、〈カオル〉君を召喚すれば簡単だが…


〈オネェを、仲間にするの?

オネェが、悪い訳ではないが、

ウチの仲間達のキャラクターがさらに濃いくなるよ?!〉


と、心配すると同時に、


〈で、どうやってポー君にテイムさせるかな?〉


と考えながら、蜘蛛の猛攻を受けている。


俺は、ポー君に、


「ポー君、で、彼?彼女か?は仲間に成ってくれないか聞いてよ。」


と左右から雨あられの様な鋭い足の突きをかわしながら叫ぶ。


ポー君は、糸に絡まりながらも、なにか蜘蛛と対話をしているようだ。


蜘蛛は、幾つかの目でポー君と対話をしながら、残った目で俺を確認しながら正確に突きを繰り出してくる…


そして、


ポー君が、


「じゃあそれで決まりだね。」


と言っているが、何が決まったのか解らない…


すると、


突きが止み、


少し距離を取る蜘蛛と、


驚く俺をよそに、


ポー君が、


「では、シルクスパイダーとオルナス兄ちゃん〈ガチンコ 一本勝負〉を始めます。」


と宣言する。


〈ガチンコだよね…〈ガ〉は平仮名では無いよね。〉


と心配するが、


ポー君は続けて、


「両者殺す攻撃は無しで、大ダメージを与えた時点で決着とします。


シルクスパイダーが負ければ僕の従魔として、定期的に糸を提供して、チーちゃんの服の素材にします。


裁縫は此れから僕が頑張るので心配いりません。


オルナス兄ちゃんが負けたら、定期的にシルクスパイダーに性的なサービスをするお仕事をしてもらいます。


大丈夫、お代金として糸をくれるので、タダ働きには成りません。


なので、両者にお得な条件です。」


と宣言する…


思わず


「アホか!ちっともお得じゃねぇ!!」


と怒る俺に、


ポー君は、


「オルナス兄ちゃんばっかりアナちゃんとイチャイチャして、


チョッとぐらい僕にも楽しい毎日をエンジョイさせてくれても良いじゃないか!」


とキレている…


〈それは、なんか…ごめん


でも、そんなにイチャイチャはしてないよ…


たぶん…〉


と、思うが…


〈仕方ないかぁ~〉と諦める自分もいるのは確か…


俺は、


「解ったよ!ヤってやる!!


その代わり、ポー君とチーちゃんは二人で掃除当番だ!!


屋敷に居るときは部屋を、遠征では小屋の掃除を二人でイチャイチャしながら担当しろよ!!」


と交換条件をだして、ツナギを脱ぎ、脇差しもアイテムボックスにしまう。


蜘蛛がなんだか体を縦に揺らして興奮している。


ポー君が


「通訳しようか?」


と聞くので、俺は、


「どうせ、ろくでも無さそうだから要らない。」


と、だけ言ってパンツ一丁でかまえる。


アナは、


「ゴメンね。アタシがもっと気をつけてたら…」


と、自分を責めているが…


多分、俺も、アナも悪くない…はず…


たとえば、


いつもアナがすぐに俺の腕に絡み付いてくるとしても…それは、ギリギリ悪くない…と思っている。


〈結局ポー君のヒガミによる暴走じゃねぇかよ!〉


全部済んだら、ポーのヤツをギャフンと云わせてやろうかな?


なんか腹が立ってきた…

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