第30話 ポー君のお買い物

冬の手仕事として頑張っていた

サスペンション式の荷車が完成した…


それと合わせて、持ち運び用の小屋も完成したので、いつでも旅に出ることが出来る。


サスペンション式の荷車を

爺さんやオル兄ぃに自慢してやりたいが…


特に村まで帰る用事もないので、暫くは里帰りはお預けだろう。


その前に、もうだんだん春めいてきたので、ガツンと狩りに行きたい。


と、いうことで、


アナとポー君と一緒に良い感じの討伐依頼が出て無いか確認に冒険者ギルドにやってきたのだが、


「…アナ…滅茶苦茶人が多くない?」


とアナに聞くと、


「大体春先はこんな感じよ。」


と答える。


ポー君に至っては、ピタリと天井にしがみついて、


「こんなところに居たら潰されちゃう!」


と、怯えている…


まぁ、冬明けで皆一斉にお仕事を開始するから混雑するのは解るが、


これはチョッとしんどい…


俺は、


「アナ、ポー君、一旦帰って午後に来よう。」


と、提案して、


三人でギルドを出た…


さて、せっかく屋敷から冒険者ギルドまで来たのだから、また屋敷まで帰るのも勿体ないと、


街を巡る事にした。


春になり、冬の間の手仕事を持ち寄る露店がたち並んでいる市場に足を運ぶ。


時間をかけた、丁寧な作りの木工細工や、バスケットや帽子や革靴など、腕自慢の逸品から、〈一生懸命作りました〉みたいな子供達の作品など様々な物が商われている。


冷やかすだけでも楽しく、時間が潰せる。


その中で、イースウッズの木材で作った人形なのだが、関節なども巧みに作ってあり、

作者旦那様と、奥さまお手製の着せ替えお洋服も2ポーズセットの精巧な品物を出品している夫婦が居た。


俺は、思わず。


「すごく精巧に作って有りますね…すげぇ」


と感心してしまった。


夫婦は、ニコニコしながら、


「わかりますか。」と、俺に色々と商品の説明をしてくるが、


俺は、口さえパクパクしたらサンダーなバードのゴッコが出来そうだな…と思っていた。


ただ、妹のシーラは大好きそうな人形だから…


チョッと高いが、買っちゃおっかな?


と思い、ひとセット購入した。


アナには、


「お人形遊びするの?オルナス…」


と心配されたが、


「妹へのお土産だよ。」


と、説明したのだが、


アナは、


「ふ~ん…」


と、言っているが、うっすら何かを疑っている…


〈何を疑われているのやら…〉


「もう、ポー君もアナに言ってやってよ、屋敷でお人形遊びをしていないって…」


と、ポー君に助けを求めると、


彼は、


「この、青い瞳の彼女を下さい!」


と、言って自分の〈肩掛けカバン〉という名前の財布から、小金貨を払っている。


〈どうするの?ほぼポーくんサイズのお人形さんを…?〉


と心配するが、


ポー君は、


ハァハァと息を荒くして彼女を眺めている…


俺が、


「ポー君はこの、お人形さんを…」


と言ったとたん、


「チーちゃんです!」


とポー君は強めに言ってくる。


「えっ?」


と、もう一度聞くが、


ポー君は


「彼女はチーちゃんです。」


と、興奮気味にいってくる…


〈なんか、ごめん…怖えぇよぉぉぉぉ。〉


ポー君は、俺に、


「オルナス兄ちゃん、〈チーちゃん〉をお屋敷までアイテムボックスで保護していて下さい。」


と言ってくる…


他人の趣味をとやかく言わないが、


アナも、俺も強く踏み込めない雰囲気だ…


その後も、ポー君は興奮気味に、


変なものばかり買い集めた…


普段は全くお金を使わずに、図書館で本を借りる程度の趣味だったが、


何故かお人形遊びに目覚めたのかな?


にしても、羊用紙や羽ペンは何に使うのやら…


30センチも無いぐらいのポー君には扱い難い大きさのペンを抱えて、


「あぁ、生きてる魔物は無いですかね…」


と言っている…


ますますどうするんだ?


と、心配していると、


ポー君は、目を輝かせて、


「有りました。卵鳥の雛です。」


と騒いでいる。


ポー君の指差す先には、


〈カラー卵鳥〉と書いてある露店がある。


アナは、


「ポー君、あれは殆ど〈オス〉だから卵産まないよ…」


と、ポー君に説明している。


ポー君は、


「関係ないし、どっちでも良いんだ。」


と言っている…


俺は、


「そうか、ポー君ならば卵鳥でも乗って移動出来るね。」


と、言ったら。


「もっと凄い事に使うよ。契約はコイツとはしない。」


と、ご機嫌だ。


〈益々ワカラン?〉


結局、午後からの依頼の受注は止めて、


何かを始めるらしいポー君の見学をする事にした。


屋敷に戻ったポー君は、


そりゃあもうルンルンで、中庭に向かい、


買い集めた品物を並べて何かを始めた。


火をおこして、鍋にお湯を沸かして、


〈料理でもするのかな?〉と思えば、その中に魔石を放り込み、魔力を流す…


〈料理じゃないのかぁ?〉と思えば、砂糖や塩や小麦粉を入れる。


〈やっぱり料理かな?〉と思えば、肉屋で買った〈ボアの心臓〉を放り込む…


〈いよいよ何だ?!〉

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