第28話 ゴタゴタの報酬
イースナの街に帰って来た2日後…
やっと、落ち着いた平穏な冒険者生活に戻れるかと思われた秋の日…
領主のイスタ伯爵様から呼び出しがあり、
パーティー全員で館に行く事に成った。
要件は、決闘騒ぎのお詫びと、
違法奴隷騒ぎで、国王陛下から誉められて、何か褒美を渡す様に言われたらしく、
「欲しいものない?」
と聞かれた…
〈正直、自由が欲しい…〉
ここ2ヶ月ぐらいろくな仕事もせずに旅をしていた…
護衛任務という名目ではあるがあまりウチのパーティーの為には宜しくない、
〈快適〉なだけのただの旅で、
俺の必殺技と、ポー君の仲間は増えたが、
ウチの漏れ漏れヒロイン…略して〈漏ロイン〉のアナちゃんはこの旅で上がったのは〈料理〉の腕前だけだった…
正直、〈Eランク〉の護衛依頼での依頼料の相場はそんなに高くない…
おかげで、素材納入とかのボーナス的な収入もなく…しかも、あんなに小さいポー君も一名計算で宿代を取られる。
相部屋にしてもツインの部屋になり一月の金額が小金貨1.5枚と…地味にきつい
なので、
伯爵様に
「家ちょーだい。」
とお願いしてみた。
…ただし、普通の家ではない!
アイテムボックスにしまえる、プレハブみたいな簡単な家で良いし、
あとは平らな場所さえ有れば、ポンと出して宿代要らずになる…
イスタ伯爵様は、
「そんなんじゃ、陛下から言われている予算をほとんど使わないから、私が叱られる…
よし、持ち運べる家とは別に、広い土地で馬車用の厩舎もあるパーティーハウスも用意するからどうだ?」
と提案された。
正直、いずれ旅に出る予定だからデカい家は要らないが…
宿代が節約出来るのならば有難い…
〈どうしようか?〉
と考えていると、
アナが、
「エリスお姉ちゃん達がそろそろ〈クランハウス〉を買って引っ越さないと、宿代が大変だって言ってたから、一緒に住んだら良いじゃない!」
と言っているし
ポー君は、
「クマクマ君も、カオル君もお庭で暮らせるのなら嬉しいです。」
と言っている…
〈よし、それでいくか!〉
と決めて、伯爵様におねだりした…
数日後…
…なぜだ…なぜ、こんなデカい屋敷を…しかも数日で…
と、呆けている俺をよそに、
建物探訪が続く。
確かに厩舎はあるが…なぜ放牧場まである…
クランハウスなんて、寝室と作戦会議室でも有れば良いんじゃないの…
立派なキッチンは良いとして、
解体場みたいな場所や立派な鍛治場まである…
ここは何?…
伯爵様は笑いながら、
「いやぁ~、無駄に成らなくて良かったよ。
少し前に、この街にいたパーティーがね、もうすぐで〈Aランク〉に上がる予定だったのだ…
私の昔馴染みで…ここは、アイツの〈Aランク〉の祝いにやるために建てたクランハウスだったのだよ。
国王陛下からの依頼の〈グリフォンの卵の納入依頼〉に失敗し、パーティーは全滅し、クランは解散と成った…
ある意味〈ケチ〉のついた物件だが、
貰ってくれるかい…」
と、少し寂しそうに屋敷を見つめるイスタ伯爵様…
〈アナのパパさんの為に建てられたクランハウスかぁ…
パパさんはギルドの誇りで、この街の希望だったんだな…〉
俺は、
「アナ、パパさんの為のクランハウス、
俺達が貰って良いかな?」
と聞くと、
アナは、
「お父さんも喜んでくれると思う…」
と、俺の手をギュッと握った…
イスタ伯爵様は、
数日中に家具や寝具等を国王陛下からの予算でバッチリ揃えてくれるらしく、
今月末には、体1つで入居出来るらしい…
そして、
引っ越しがおわり…
俺は…俺は遂にやったのだ!
あのエリス姉ぇの〈大家〉としての地位を手に入れて、あの悪意ある弄りからも解放され、
しかも、
ハーツ兄ちゃんの部下、の冒険者パーティーからも〈オナ兄さん〉等と呼ばれる事を止めさせる事に成功した。
現在は〈大家さん〉と呼ばせている…
ハーツ兄ちゃんは、俺が言うのも変だが、エリス姉ぇには勿体ないぐらい頼りになる人で人望も厚い…
クランハウスとしてはハーツ兄ちゃん達〈ハートのエース〉のメンバー達がこの街の〈エース〉に育ち、頑張ってくれるはずだ。
俺達のパーティー〈神の使徒〉はあくまでも自由に世界を廻るのが目的だから…
それに、施設使用料は屋敷の掃除や管理を丸投げすることで了解した。
そして、イスタ伯爵様からの依頼で基礎で固定しない小屋を建ててくれる大工さんとの打ち合わせをして、
小型のログハウスの様な物を注文した。
正直、大工さんのお手本があれば複製も出来るかもしれない…
旅先の森の中に拠点を構えたり、
小屋を増やせば、風呂も、倉庫も思いのまま…
空白地を開拓して街を作る事だってできそうだ…
それには、まず、冒険者ランクを上げて関所が無料で通れる様にならなければ…
夢が広がるよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます