第27話 クマと真剣勝負
パンツ一丁で熊に挑む…
あの爪に引っかけられただけで大怪我もあり得る…
〈10倍〉のフルパワーがどのくらい熊攻撃に耐えられるか不明だし、できれば試したくはない…
有難いのは、スピードは対処できる速さなので回避が出来ることぐらいだ。
立ち上がって二本の腕を振り回す熊だが、
身長差があり、真上からの攻撃の様に感じる…
俺の攻撃は分厚い皮下脂肪にはばまれて効いている気配がない…
〈武器を装備するか…?〉
と頭をかすめるが、〈8倍〉では攻撃に反応出来るか解らない…
〈勝っているのがスピードだけならば、速さで勝負だ!〉
と、武器を持つ事を止めて、
熊と距離をとり、
〈スーっと〉深呼吸をしてから、熊に向かい走りだす。
熊の強烈な一撃を紙一重でかわし、
地面に突き刺さる熊の拳をかけ登り、奴の片耳を〈ムンズ〉と掴み、
「わっ!!」っと声に強化をかけて奴の耳に叩き込んだ。
熊はフラフラとしているが気絶させるまでには至らなかった…
〈駄目か…万策尽きたか…?
音波を強化した音爆弾をゼロ距離で放ったのに…
?…音波の強化だよな…
別に肺活量が10倍に成った訳じゃないだろうし…
なら、衝撃波も強化出来るのかな…
音爆弾の時は強化のイメージを口の前に出すから…〉
と頭をフル回転させて考える。
そして、
〈駄目でもともと!駄目なら逃げる!!〉
と結論を出して
「ヨシ!」
と、かけ声を自分にかけて、再び熊に向かい走りだす。
熊は、まだダメージから回復していないようで、動きが悪い…
俺は、熊の二本の腕を掻い潜り、熊の懐に入り
そして、
〈身体強化〉を乗せた一撃を奴の腹に打ち込む…
ただ、今までと違うのが、
拳の先の先…この打撃の衝撃波が、奴の皮膚から内臓へと向かうイメージを強く念じ、
その波を強く、鋭くするように…
〈ズドン〉という爆発音と共に熊体内を駆け抜けた何かがヤツの背中から背後へと突き抜けて行った…
大木の様にズシンと仰向けに倒れる熊を見て、
しばらく様子を伺うが…動く気配はない…
しかし、死んだ訳でもない…
〈どうしたら良いんだ…〉
と悩んでいると、
騎士団の隊長が、
「トドメを刺し損ねて暴れてもマズイから…今のうちに先に進みませんか?」
と提案してくれたので、
その提案に乗った…
正直もうクタクタだったから、一刻も早く休みたい。
〈しかし、一発勝負の賭けに勝った…良かったぁぁぁぁぁ…駄目かと思ったよ。〉
と、心の中でひとしきり騒ぎながら、
とりあえず、ツナギも着ずに樹海の奥を目指した。
やっとの事で〈エルフの国〉に到着し、この度の奴隷商人達のエルフ狩りの件を人族を代表して謝罪し、イスタ伯爵様からの手紙を渡す…
エルフの国の王様から
「皆様が謝る事は御座いません。
我同胞を助けて頂きありがとうございます…」
と言って許してもらえた。
その後〈ガルム〉さんが、エルフの王様達に、俺が使徒とバラして、
ここでもパンツ一丁で、
〈股間フラッシュ〉を披露することに成った…
エルフの皆さんから歓迎されたのは良かったのだが、股間を拝まれるのは勘弁してほしい…
お仕事も無事に終わり、
エルフの国でお買い物をしてから帰ろうとするが、ここでは王国通貨はあまり意味を成さず、
意外や意外、イースウッズでアホみたいに買った〈チーズ〉などの乳製品が人気で、沢山の物と交換してくれた。
この樹海の牛魔物は強い上に、ミルクをあまり出さない種類で、たまに樹海の入口の集落に行商人が来る程度で乳製品は貴重品らしい
〈帰ったらイスタ伯爵様に交易路の整備をたのもうかな…
なんなら、樹海の近くに牧場の整備か…〉
まぁ、何にせよイスタ伯爵様に丸投げで良いよね、国際問題だし…
エルフの国でやることは全て終わり、あとは帰るだけなのだが、
なんと、エルフの国の結界を出て直ぐの樹海の小道にあのデカい熊が待ち構えていた…
〈うげ…マジか…〉
と、うんざりしながらツナギを脱ごうとすると、
ポー君が、
「待って下さい!」
と叫んで皆を止める。
ポー君は熊の前に飛んで行き何か話して居るようだ。
ポー君が、
「いいの?
良いんだね…
じゃあいくよ…〈クマクマ〉君っ!」
と叫ぶ。
〈えっ?従魔契約?!〉
と驚く俺達に、
ポー君は
「〈パンツの少年のあの一撃…シビレました…どうか仲間に入れてください〉
って言ったから、僕の従魔に成ったらいつでも必要な時に召喚してあげれるよ
って提案して、了解を貰いました。
今日から仲間の〈クマクマ〉君です。」
と、説明してくれた。
攻撃されて〈仲間に〉って…性癖片寄ってる熊さんなのかな…
でも、トドメ刺さなくて良かった。
〈隊長さんグッジョブです。〉
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