第23話 遠征の終わりと次の予感

遠征が終わり、イースナの街に帰ってきた。


あの後、川で軽く体を洗い、


牧場主に30匹以上の森狼の死体の確認と、出入りしていた柵の場所の報告を済ませたが、


あまりの数に、〈Eランク〉の依頼より厳しい状況だった事を牧場主さんが、冒険者ギルドに報告書を書いて渡してくれる事になった。


成功報酬の追加は望めないが、ポイントは追加で貰えるかも知れない…


まぁ、30匹の森狼の素材でまずまずの稼ぎになると思われる。


…半分近くはグチャグチャだけど…


冒険者ギルドの買い取りカウンターで手続きをして、解体場に森狼をごっそり出してきた


プリシラさんが、依頼達成手続きをしてくれたのだが、


「何よこれ!


30匹以上の群の討伐だったら〈Dランク〉相当の依頼じゃないの!!


よく無事だったわね…


ゴメンなさいね、私が薦めた依頼なのに、


イースウッズのギルドに文句を言ってやる!!」


と、ご立腹だ…


そして、行きよりもベッタリと俺に、くっついているアナを見ながら、


プリシラさんは、


「で、危険な依頼に二人で立ち向かい、〈吊り橋効果〉で急接近したのかな?」


と、茶化す…


アナは、ニコニコしながら、


「もう、二人は家族以上の関係…」


と意味深な発言をしたものだから、プリシラさんの厳しい追及を受ける事に成ってしまった…


なんとかプリシラさんの追及をかわしていると、


有難い事に、夕方の忙しい時間帯に突入してプリシラさんは業務に戻る為に難を逃れることが出来た。


俺とアナのコンビは一度の遠征で、〈Eランク〉に昇格したので、二人でお祝いしようとギルドの酒場に来たのだが、


これが間違いだった…


エリス姉ぇ達のクランもビックベアの夫婦の討伐という、〈Cランク〉の依頼を終えて酒場で盛り上がっていたのだ…


ここは止めて、街の食堂に移動しようとアナを引っ張りギルド酒場を出ようとするが、


索敵能力に自信のあるエリス姉ぇに、バッチリ見つかってしまい、


プリシラさんに続き、厳しい追及を受ける事に…


しかし、


〈ポーション口移し〉は、アナが簡単に話してしまい、弄りに弄られる事に成った…



ー 翌日 ー


丸1日休みにして、教会に軽い報告に来たのだが…何故かアナも一緒についてきた。


「お休みだから自由に過ごしたら良いんだよ…」


と、俺がいうと、


アナは、


「オルナスと居たいから居るの!」


とニコニコしている。


二人で礼拝堂の祈りを捧げる例に並び、


順番が回ってきたので、二人で祈りを捧げた…


すると、


また真っ白な世界に誘われたのだが…


今回はなんと、アナも一緒だった。


俺は、馴れているが、初めてのアナはキョロキョロと落ち着かない様子だ…


そして、


「ムフッ、

二人とも頑張ってるようで何より


ププっ…ふぅ~。


二人の出会いから見させて貰っているよ…


あぁ、もうダメ…はぁはぁ、


何なのオルナス君…なんて面白いタイミングで出逢うの…


一人で見てて何か勿体なかったもの…

日本の神様に近況報告として映像を送ろうか迷ったよ!」


と、笑う神様に、


アナは、キョトンとしている、


俺が、


「アナ、こちら神様です。」


と、紹介すると、益々キョトンとするアナに


神様が、


「今回はゴメンね…オルナス君に難しいスキルを渡したばっかりに巻き添えで気絶させられて…


でも、オルナス君カッコ良かったんだよ。


〈俺のアナに触るなぁ!〉って…」


と、アナにあの時の説明をしているが、


〈俺の〉等とは言っていない…


神様はサービス精神で話しを盛っているが、おかげで、


〈俺の〉と付け足した事により


俺が穴を触られて怒ったみたいに聞こえる…


〈心外だ!〉


しかし、神様のリップサービスにアナは嬉しそうにしている。


神様は、


「アナちゃんにはこれからもオルナス君を助けて欲しいんだけど、今のままではまた巻き添えを食らうかもしれないから、


スキルをあげるね。


防御力を上げる〈鉄壁〉と基本ステータスを上げる〈頑強〉と〈スタミナ〉と〈回避〉に〈異常耐性〉もあげちゃう


通常攻撃は勿論、毒も、精神攻撃にも強く成るから…


あと、〈ターゲット〉っていう弓矢と相性の良いスキルも付け足しとくね。」


と、大盤振る舞いをしてくれた。


アナは、遂に考える事を止めた様に


「ありがとうございます神様、嬉しい…」


と、感情が無い返事を返す。


神様は、


「まぁ、初めてだから仕方ないかぁ」


と少し残念そうにした後で、


俺に向き直り、


「実はさぁ、オルナス君に少しお願いしたい事が有るんだよね…」


と申し訳無さそうに話しだす。


俺が、


「アナにスキルをサービスして頂いたので、


無茶な要件で無ければやりますよ。」


と答えると、


神様は、


「本当に?!オルナス君ありがとう。


お願いっていうのは、妖精族の子供を一人助けて欲しいんだ。


妖精族はあまり数が居ないレア種族なんだけど、魔力や霊力の扱いに長けていて、召喚などの秘術を持っているんだよ。


でね、魔族と竜人族は長年険悪だったんだけど、十年ほど前に魔族のテイマーが、妖精族の里を襲って召喚術士の妖精族を捕まえるために隠れ里にブラッドボアを放ったのだよ…


その時のブラッドボアがオルナス君の仇だよ。


ご存知の通り、ブラッドボアを異界に送り、


妖精族を逃がしたのだが、


最近になって、


好奇心から、隠れ里から出て散歩してた妖精族の子供が拐われ…というか、奴隷商人に捕獲されたのだよ。


今は人族の国に居るが、何かの間違いで魔族の過激派に渡れば、古の悪魔を呼び出す為の戦争の道具にされてしまう…


現在、奴隷商人はエルフの国の方からこの街を経由して、王都に向かうみたいだから宜しく」


という、


俺は焦りながら、


「神様…奴隷商人から人を買い戻せるほど、お金無いかも…」


というと、


神様は、「うーん」っと考えた後に、


「エルフ狩りをしていた〈悪い奴〉だから、天誅って事で…良いんじゃない?」


と、危ない提案をしてくる…


俺は、


「悪い奴だからって、いきなり〈天誅〉は…神様としてどうなの?」


と聞くと、


神様は、


「ならば、神様からの使命として、伯爵の軍を借りれば良い!


〈逮捕する!〉って感じで宜しく、


ここの司祭君にお告げを出しとくね。


あと、アナちゃん、オルナス君と仲良くねぇ…」


と、ほぼ一方的に告げられて、


気がつけば礼拝堂に戻って来ていた。



なんか、また厄介な事に成ってしまった…


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