第17話 連れて来られた先は…

あぁ…俺は、問題起こして〈ご領主〉の〈伯爵様〉に呼び出されたらしい…


貴族の息子と決闘をして、シバき倒したのが駄目だったのか…


はたまた、賭博行為の片棒を担ぐ結果が駄目なのか…


あるいは、その両方か…


アナは、一緒の馬車に乗り、


「うわぁ~、馬車だよ!」


と、はしゃいでいる…


俺は、不安と居心地の悪さから、小さく成っていると、


同乗していた騎士団の一人が、


「お二人共、夕食はまだですか?」


と聞かれる…


急な質問に〈ビクっ〉っと成りながらも、


「は、ハイ…」


と、だけ答える俺に、


「そうですか…何か召し上がりたい物は有りますか?」


と聞いてくる騎士団員さん…


〈えっ、あれかな?…最後に食いたいものは?…的な…〉


と、益々不安になる俺とは反対に、


アナは、ニコニコしながら、


「何でも良いの?…お肉ゴロゴロの暖かいスープが食べたい。」


と言っている…


俺は、耐えられなくなり、


「あの~、罪状はヤッパリ〈決闘〉がらみですか?」


と騎士団員さんに恐る恐る聞くと、


馬車の騎士団員達が一瞬で静かになる…


〈ヤバい、何かやらかしたかも知れない…〉


と焦る俺をよそに、


車内は、〈ドッ〉っと笑いに包まれた…


騎士さんは、


「あはははっ…これは失礼しました。


説明が足らず、申し訳有りません使徒様…


いや、パンツの使徒・オルナス様!


お役目の最中、お邪魔をする訳にもいかず、

ご挨拶も控えておりました我が主が、


此度の決闘騒ぎを聞き付けて、決闘の中止と、オルナス様へのお詫びも兼ねて、お館までの案内を申し付けられたしだいです。」


と説明してくれた…


俺は、


「もう少し、早く来て頂けたらば、〈決闘〉などしなくても良かっのですが…」


と皮肉を言ってみると、


騎士さんは、


「昼過ぎから、住民を煽り〈決闘〉をすると騒いでいたアホの報告は受けておりましたが、


何しろ、決闘の相手を〈卑怯者〉としか言っておらず…使徒様と解るやいなや、飛んで来たのですが…


まさか、3対1で既に決着がついていたとは驚きです。」


と笑っている。


続けて騎士さんは、


「もうすぐ、お館に到着いたします。


料理長には〈お肉ゴロゴロ〉のスープをお願いしておきますね。」


というと、アナは、


「今日はツイてるね。


賭けで大銀貨が2枚から16枚に増えるし、


晩御飯はオゴッて貰えるみたいだし…


やったね!」


と、ご機嫌である…


俺は、朝から絡まれ、夕方には決闘…

領主館に拉致られて〈ツイて無い〉のですが…


と、うなだれている…しかし、無情にも馬車は、ちゃんと領主館まで俺達を運ぶ任務を完了してしまった…



俺達はデカいテーブルの部屋に通され、気絶している三人のアホは〈医務室〉に運ばれたらしい…


俺達がデカいテーブルに座っていると、


部屋の外から、


「一体どうなっているのです!?


使徒様は?オルナス様は無事なのですか?!」


と凄い勢いで司祭様が入って来て、


俺を見つけるなり、


「使徒様ぁぁぁ!


大丈夫でございましたか!!


決闘騒ぎに巻き込まれたと聞き、肝を冷やしました…」


と、言いながら、俺をサワサワして確認してくる…


…俺がオッサンに〈まさぐられ〉て居るのを少し冷ややかに眺める〈アナ〉…


〈そういう趣味は、無いからね…〉


と、心の中で弁明しながらアナに助けを求める視線を飛ばすが、


…アナの興味は俺から、次に移ったらしく、


「晩御飯はいつですか?」


と使用人さんに聞いている…


少し傷つく俺に追い討ちをかけるかの様に


「お前の息子は、何と馬鹿な真似を!」


と、真っ赤な顔で怒りながら入室してくる〈背の低いオッサン〉と、


真っ青な顔でペコペコしながら後からついて入ってきた〈騎士団風のオッサン〉…


そして、俺を見つけると、


〈ビュン〉と音がしそうな勢いで、


背の低いオッサンが駆け寄ってきて、


「使徒様、この度は手前の配下の息子が申し訳ありませんでした。」


と、頭を下げる。


俺が、どうこう言う前に、司祭様が、


「イスタ様!どうなっているのです!?


あれ程〈オルナス〉様の旅の邪魔をしてはイケないと申したでは有りませんか…」


と詰め寄る。


背の低いオッサンはタジタジしながら、


「私も、先ほど話を聞いて、慌ててこの〈モーブス〉第三騎士団隊長に事情を聞いておった所だ…」


と言っている…


話を整理すると、


背の低いオッサンが、多分〈イスタ伯爵様〉かな?


そして、顔色がすぐれない騎士のオッサンは、ストーカーのお坊ちゃんの父親だろう…


と、納得する俺に、


顔から血の気が引いているオッサンは、


フラフラと俺に近寄り、


「息子が大変失礼を致しました…


恋敵が居ると言ったので、〈勝ち取ってこい!〉と、焚き付けたのは私で御座います…


大変勝手なお願いですが、どうか、私の首一つでご容赦願えませんでしょうか…」


と、死を覚悟した表情で話してくる…


大変面倒臭い状況だが…


腹ペコの〈アナ〉が〈早くして〉みたいに、


こちらを見ていますので…手短にしてくれません?

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