第14話 アナと採集に行ったけど


アナとパーティーを組んだ翌日、


今日も〈薬草〉と〈毒消し草〉を中心に採集に向かうのだが、


昨日と違うのは、門を出る際に、昨日と同じ門兵さんに、


「オルナスだったな、昨日の今日でアナちゃんを射止めるとはやるな!」


と、冷やかされながら草原に向かう事になる…



アナは毎日薬草を最低三束採集する事を目指して数ヶ月活動していて、


そして、俺よりもこの草原エリアに詳しい…


アナの案内で、薬草の穴場採集エリアや毒消し草や、麻痺消し草など俺もよく知らない〈Fランク〉の納入依頼品を教えてもらいながら、


二人で採集を進める…


「薬草は茎から…毒消しは根っこごと…麻痺消しは葉っぱだけ…」


とブツブツと唱えながら二時間ほど採集をしてから、


形や色や匂いをしっかり覚えると、


アナに周囲の警戒をしてもらい、俺は、昨日同様に〈匂い〉を頼りに〈カサカサ〉と草むらをかき分けて、四つん這いで駆け回りながら採集をする。


ひとしきり採集して、昼御飯に屋台で買った串焼きとパンを一緒に食べながら、


アナは、


「オルナスは凄いね、3日分以上の採集を半日で終わらせちゃったよ。」


と驚いている。


俺は、


「アナが警戒してくれているから採集に集中出来るよ。」


と、アナを労う。


すると、アナは、


「もう少しお金が貯まって、〈Eランク〉に上がれば、弓を買って〈遠征〉に行きたいの…


オルナスはどう思う?」


と聞くとが、


イースナの街に入るのに再び〈小銀貨一枚〉つまり千円ていど必要になるだけだ…


薬草一束の買い取り額が小銀貨一枚…


俺にはアイテムボックスが有るので遠征しても、元が取れるまで粘れるだけの食糧などを持っていけるので大丈夫だし、


正直、薬草集めでは次のランクまで日にちがかかり過ぎる…


ソロならば持っているランクの依頼しか受けれないが、パーティーならば〈1つ上のランクの討伐依頼〉まで受ける事ができる。


納入依頼はランクはユルユルで、市場で購入して納入しても構わないので、達成ポイントもそれなりだが、


〈討伐依頼〉ならば、危険度は高いが、達成ポイントが一番美味しい…


俺は、


「遠征の討伐依頼をこなして、ランクを上げたいかな…?


ランクを上げてからだと長くかかりそうだから、街の入場料を払い直しても、遠征してランクを上げても良いと思ってるよ。」


と、答える。


すると、アナは、


「どうしよう…アタシ、武器も、防具も無いの…


唯一有るのが採集用のナイフぐらいしか…


お金もそんなに貯まってないし…」


と悩んでいる。


俺は、


「フッフッフ…お困りの様ですなお嬢様


何を隠そう、このオルナス、〈鍛治〉の心得が有りますぞ…


素材を鍛治師ギルドで買えば、数日で弓ぐらい作ってあげましょう。」


と、提案すると、


アナは、


「えっ?!


本当に?良いのオルナス。」


と聞くので、


「任せなさい!」


と胸を叩くと、


アナは、


「やったぁ!」


とジャンプしている…


〈可愛いのぅ…違った形で知り合っていたら…残念だ。〉


等と考えていると、アナは、


「じゃあ、今日はもう上がりにして、買い物に行かない?」


と提案された。


〈よし、行くか!〉


と、決めて街まで戻る。


冒険者ギルドで薬草類を買い取って貰うと、大銀貨二枚に成ったので、アナと半分こして、早速買い物に向かう、


すぐに遠征に行くわけではないので、


先ずは、〈アナ〉の装備からだ…俺は、むしろ脱ぐ方向なので、アナの装備だけでいい…


二人で、鍛治師ギルドに行って、鉄のインゴットと、弓と胸当てなどのレシピなどを購入する。


鉄インゴットは1つ大銀貨一枚


一般的な装備のレシピブックも大銀貨一枚


鞣し革や革細工セットに、


木材加工品セットと、


金具や武器加工用の硬い素材の木材などを購入し、


財布が大層軽く成ってしまった…


アナは、


「お金半分出すよ…」と言っていたが、


俺は、


「旅支度や鞄などで色々必要になるから、アナの最初の装備は俺からのプレゼントにしたいんだよ。」


というと、


アナは抱きついて、


「良いの?」


と、上目遣いで聞いてくる…


〈可愛い…本当に出会い方が悔やまれる…〉


等と思っていると、


「おいっ、アナから離れろ!


この、変な服野郎!!」


と罵声を浴びせられた。


〈いや、むしろアナが俺に抱きついているのだが…〉


と冷静に分析している俺に、


「お前だよ、青い服の弱そうなお前!


聞いているのか?!」


と、真っ赤な顔で怒っているガキと、


「そーだ、そーだ!」と囃し立てる取り巻き二名…


〈うわー、雑魚っぽい布陣の子供が出てきたな…〉


と思いつつ、


「俺っすか?」


と、聞いてみる…


すると、雑魚のリーダーは、


「口のきき方を知らない田舎物め、

俺は、騎士爵、モーブス家の長男タダノだ!!」


と、イキッているが…騎士爵位って子供に相続できたっけ?


まぁ、お前が騎士爵様でないのなら、全く関係ないような…


それより、


「アナ、アイツがなんか怒ってるから、一旦離れよっか?…」


と、提案する俺に、


アナは、チラリとタダノ坊っちゃんを睨み、


「あんな奴しらない、一緒に向こうに行こうよオルナスぅ」


と甘える…


タダノ坊っちゃんは益々真っ赤になり、


手袋をぬぎ、俺に投げつけて、


「拾え!」


とお怒りだ…


〈あぁ~…知ってる…これは拾ったら面倒臭いやつだ。〉


と思い、



〈ヒョイ〉と、アナをお姫様抱っこして…


逃げた…


背中越しに、


「逃げるな、卑怯者!


それでも騎士か!!」


と聞こえるが、


厄介事を避けるのは普通だし、


そもそも騎士などではない…


やれやれ、変なヤツに目をつけられたものだ…

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