第13話 男の責任とは…


お互いに無言のまま、


俺は、アイテムボックスから出したスコップを使い、ハンカチごと彼女の作品を…埋めた…


別にハンカチを〈洗わなくて良い〉発言は、思い出の香りをアイテムボックスで保存する為では無い…


〈そう、これは事故…不幸な事故だったんだ…〉


と、自分に言い聞かせ、


少女を見ると、


ようやく整理が着いたのか、改めてしっかり泣いている…


解らないのが、俺のツナギを摘まみながら、


〈ひっく、ひっく〉としゃくり泣きしながら、


「あり、がと…ひっく」


と礼を述べている…


〈安心してくれ…君の作品は大地と1つになって、新たな薬草へと変わる…はず…


では、サラバ!〉


と、この場を去りたいが、少女に摘ままれているので、それも叶わない…


俺は、


「あのぉ~」


と、喋りかけると、少女は、


「アナ…」


とだけ答える…


俺は、


「あぁ、気にしないで、スコップ持ってたから〈穴〉ぐらいすぐ掘れるから…」


というと、少女は


「違う…アナ…」


と否定?する…


〈まさか!〉


と思いながら、俺は焦って、


「お尻は見えたけど〈穴〉までは見てないから!


本当だよ!!」


と、伝えると、


少女は更に涙目になり、


「バカ!…違う…名前…アナ…」


と…


〈単語だけって…さっきまで流暢に叫んでいたのに…〉


と思うが…〈名前?!〉と、俺もようやく理解し、


「アナさん?」


と声にだすと、涙目の少女はプルプルと首を横に振る…


〈えっ、違うの?〉


と、戸惑う俺に、少女は、


「アナって呼んで…」


と、頬を染める…


?…と、思いながらも、俺は、恐る恐る


「アナ…」


と呼ぶと、ニコッと笑い


「ハイっ」と答える少女…


〈イヤイヤ、彼女の情緒は…どうなってるの?〉


と少し怯えながら、


「オルナスです…」


と伝える…


すると、アナと名乗った少女は、


「オルナス…オルナス…」


と噛みしめる様に繰り返し、


「オルナス…これから宜しくね…」


っと笑顔で話す…


〈何を宜しくされたんだろう…〉


と思っていると、


「死んだお父さんが、女の子の〈恥ずかしい〉所を見て責任を取らない奴は糞野郎だ!


見た限りは、責任を取るのが男ってもんだ…


と言ってたから、オルナスも取ってくれるのよね…


責任…」


と…


俺は、焦り散らかし、


「イヤイヤ、パパさんの〈恥ずかしい所〉は体の部位であって、〈恥ずかしい〉行為では無いはず…


むしろ、俺に何の〈責任〉が発生したのか…」


と訴えるが、


アナお嬢様は、また涙目になり


「オルナスは糞野郎なの?」


と聞いてくる…


〈糞してたのはむしろ…〉と思うがグッと我慢して、


「責任とは…」


と聞くと、


「家族になって…


家族なら〈恥ずかしい〉所を見せても大丈夫って、お父さんが言ってた…」


と、言うのだが…


俺は、


「俺、旅に出る予定だから…」


と伝えると、


アナは、


「アタシも行くから大丈夫。」


と、答える。


俺は、


「ご家族が心配しない?」


と、聞くと、


「皆、死んだから、今の家族はオルナスだけ…」


と答えるアナ…


〈なんで既に家族カテゴリーなの?〉


と思いながらも、


「家族ってなに?」


と、禅問答の様な質問を投げ掛ける俺に、


アナは、


「一緒に旅をして、一緒に冒険するのが家族!」


と、胸を張り答える…


俺は、思わず


「それってパーティーメンバーじゃない?」


と質問すると、


アナは、


「父さんは、パーティーは家族だ。


って言ってた…だからアタシとオルナスも〈家族〉になるのっ!」


っと…


〈えっ、セーフ…?11歳で責任取って結婚ルートは避けられた??…〉


等と考えていたら


アナは、


「オルナス、早く街に帰って家族になる手続きをしましょう!」


と、俺の手を引っ張る〈アナ〉…


〈えっ?役所に行くの…!?〉


と焦る俺に、


「パーティー申請出さなきゃ、カウンターが夕方には混んじゃう!」


と言っている…


〈まぁ、パーティーならば…〉


と半ば諦めにも似た感情で〈責任〉を取る事にした俺だが、


ギルドに帰り、パーティー申請をするために着いたカウンターには、昨日の職員〈プリシラ〉さんが担当してくれた。


プリシラさんは、


「アナちゃん、今日は早いわね…沢山採集出来たの…ってオルナス君までどうしたの?」


と、驚いている。


アナは、


「オルナスと一緒になる!」


と話すと、


プリシラさんは、


「あらあら、オルナス君はなかなか〈ヤル〉のね。


ウチのギルドきっての〈カワイコちゃん〉を初日でモノにするとは…」


と茶化してくる。


しかもプリシラさんは、


「どうせ、この時間暇だから、別室でお茶しながら馴れ初めを〈お姉さん〉が聞いてあげようじゃないか!」


と、いい暇潰しに選ばれた…


〈トホホ〉と思いながらも、別室で、俺の身の上〈転生のくだりは省く〉や、


アナの身の上も聞いた…


結果、アナも〈孤児〉で育てのパパさんは〈Bランク〉冒険者パーティーの一員だったが、半年ほど前に、〈グリフォンの卵の納入依頼〉を引き受けて、向かった先で全滅してしまったそうだ…


それからは、プリシラさんの薦めで冒険者に成って、薬草採集などをこなして生活しているそうだ…


因みに、寝起きはプリシラさんの実家らしく、アナにとってプリシラさんは〈お姉さん〉的な存在らしい…


〈アナよ…ならば、あの時、家族にプリシラさんを数えてあげても良かったのに…〉


と思ったのは秘密にしておこう…


そして、出会いについて語ると、


プリシラさんは、


「お腹痛い、止めて、イヒヒヒッ


おしっこ出ちゃう、お願い、許して!!」


と爆笑していた…


〈勘弁してよ、妹ポジションのう○こ

の後に、姉ポジションの失禁って…洒落にならない…〉


おかげで、〈使徒〉うんぬんは、話の中で影が薄くなりあまりツッコまれずに済んだが…


先が思いやられる…

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