第11話 冒険者としてのスタート


さて、いよいよ冒険者としての生活を始めたいのだが…


司祭様が、


「寝泊まりは是非、教会の離れをお使い下さい!」


と、いってくれたが、


「ありがとうございます…

しかし、普通の冒険者として人々とふれあい、世界を巡る使命を賜っていますので、


教会で寝泊まりすることは、遠慮させて頂きます。


駆け出しの冒険者と同じ生活をしてこそ、見える世界が有るかもしれませんので…」


と、それっぽい言い訳をして教会を後にした。


冒険者の先輩方に、


〈あいつ教会で無料で寝泊まりしてるぜ…。〉


とか言われて目をつけられるのは、まっぴらゴメンだからな…


前世で、虚弱体質だった俺を気遣ってくれた先生がいて、色々と特別扱いをしてくれた。


しかし、同級生達は、


「あいつだけマラソン大会を見学なんてズルい!」


などと理由を付けて、何かにつけて虐められたものだから、


可能な限り、目立たずに生きて行く為に、


〈皆と一緒〉を心がけたい…



冒険者ギルドに向かい、住む場所と、駆け出しが出来る仕事を探さなければ…


出発前に森の魔物で稼いだお金が減る一方だ。


昼前に到着したギルドは、


その規模にくらべて、案外空いていた。


カウンター前に並ぶと、すぐにギルド職員さんに、


「次の方ぁ~」


と呼ばれる。


俺は、


「もっと待つかと思いました。」


と驚きながらカウンターにつく。


職員さんは、


「こんな時間にギルドにくる冒険者さんは、街に着いたばかりか、寝坊助さんだけですよ。


皆さん大概お仕事の真っ最中だから、ガラガラでしょ?


ようこそ、イースナの街へ、見たこともない顔だから〈新人さん〉でしょ。


きょうはギルドに何のご用意ですか?」


と、可愛らしい笑顔で聞いてくる。


〈すごいな…冒険者の顔を覚えてるんだ…〉


と、感心しつつ、


俺は、


「田舎から出てきたばかりの新人です。


イースナの街で新人が常宿に出来そうな宿屋はどこでしょうか?


あと、Gランクの依頼を受けたいのと、


イースナに来る途中で倒した魔物の買い取りをお願いしたいのですが…」


と、職員さんにお願いした。


職員さんは、


「そうですね、素泊まり宿の〈ウサギの巣穴亭〉という宿屋は1泊、小銀貨二枚で一週〈6泊〉ならばサービスで大銀貨一枚になるわ、


ギルドの宿屋は1泊小銀貨四枚だけど、共同の体洗い場と共同のキッチンが使えます。


一月借りればなんと小金貨一枚の定額制です。」


と言ってくる…


〈簡易のお風呂というか、お湯を沸かして体が洗える場所は凄く引かれるが、金貨…難しいな…〉


俺は、少しがっかりしながら、


「ギルドの宿屋はもう少し稼いだらにします。」


と答えた。


続けて、職員さんは、


「じゃあ、頑張ってお仕事をしてね。


ギルドカードは、お持ちですか?」


と聞いてきたので、木製の〈Gランク〉のギルドカードを提出する。


木製のGランクカード、通称ゴミの板を見たとたん、職員さんは、


「うーん、Gのオルナス君ね…

ちなみにだけど、来る途中に倒した魔物は?


どこにあるの?


鞄とかかな…」


と、カウンター越しに、俺の足元を覗きこむ…


俺は、


「アイテムボックスに入っています。」


と、答えると、


職員さんは、


「えっ、アイテムボックス持ちなの?

もう、何処の馬鹿職員よ、アイテムボックス持ちをGランクのままにしとくなんて!


Fに上げないと〈お使いクエスト〉も受注出来ないのに…


本当は、依頼を受けてからの討伐しか駄目だけど、〈納品依頼〉なら受注と達成報告をこちらでコチョコチョっとしますので、


もっている獲物を全て出してみて下さい。」


と買い取りカウンターに連れていかれた。


俺は、言われるまま、


〈角ウサギ〉や〈牙ネズミ〉を複数と、


〈ダッシュボア〉という一番小型の猪魔物を二頭、

小型といっても大型犬よりデカいので、少々買い取りカウンター付近か獲物でいっぱいに成ってくる。


トドメに、森狼の群れにキャンプ場で鉢合わせてしまい、〈夜だからと〉云うことで久々に〈パンツ一丁〉で暴れた時の獲物8匹を取り出すと、


職員さんは呆れながら、


「オルナス君、一旦しまって〈解体場〉に行きましょうか…」


と言われた。


解体場で全てをアイテムボックスから吐き出し、


アタックボアの肉の納品依頼と、


森狼の毛皮の納品依頼を


受けてから狩に行き、取ってきた事にしてもらい、


俺は、この日無事に〈Fランク〉に上がった。


これで、溝掃除や草引き、などの雑用クエストをしなくても、


いきなり、素材集めや小型魔物討伐で稼げるし、隣村にお届け物を運ぶ〈お使いクエスト〉で稼げる。


そして、職員さんから報酬と鉄の〈Fランク〉のギルドカードを受け取った。


素材の買い取りと依頼の達成報酬金も合わせて、小金貨一枚て大銀貨六枚に成った…


さて、宿をどうするかな?


出費は痛いが、一月安泰だし…簡易の風呂は…でかい…


本当ならば、しっかりした野宿セットや食糧品も買い足したいが…うーん…


と、脳内会議をした結果、


ギルドの宿屋を一月借りる事にした。


やっぱり、汗は流したいもの…


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