第7話 知らされる真実
三人で泣いて喜び会った後に、
長女の〈オルガ〉姉さんの嫁いだ宿屋にて1泊する。
オルガ姉さん〈オル姉ぇ〉の嫁いだ宿屋はこの街でも一番大きい宿屋で、馬車を停める厩舎もある立派な宿屋だ…
そして、オルガ姉さんの宿屋の一番の売りは簡易的ではあるが、風呂場が有るのだ。
釜戸で沸かしたお湯をタライに移して入るタイプの風呂だが…庶民にとっては…と言うか、俺の村では〈贅沢品だ〉…冬場でもないかぎりお湯で体を洗うなど…
〈薪が勿体ない!〉と思う人間の方多い。
確かに、木を切り、乾燥させ、割って薪にするのも大変だし、料理に鍛治仕事、暖房すら薪を使うので、
〈風呂〉などという贅沢品は後回しになるのも解るが…
やはり、〈風呂は必要だ!!〉
「あぁあぁぁうぅぅ~」
とオッサン臭い唸り声を上げてタライに浸かる。
この時ばかりは十歳児の体に感謝だ…
なんとか半身浴を堪能出来る。
俺の隣で爺さんはタライに足を浸けながら体を洗うのがやっとの様だ…
〈なんか悪い気がする…俺だけゴメンよ爺さん…〉
夜はオルガ姉さんの家族と一緒に食事をして、
翌朝、宿屋の皆に見送られ宿を立った。
爺さんに、
「このあと、オビ兄ぃの店で手直しした〈ツナギ〉を貰って帰るだけだね。」
と話すと、爺さんは、
「いいや、先にオルナスにこんな〈ややこしい〉スキルを与えた神様に文句を言いに行くついでに、教会でスキル鑑定して貰うぞ。」
と、イタズラっ子みたいに笑う爺さん…
俺は、
「エリス姉ぇが言ってたよ、鑑定には小銀貨六枚も要るんだろ?」
と心配する俺に、
爺さんは、
「ブァッハッハ、
気にするな、昨日泊まった〈オルガ〉の宿屋は、1泊小銀貨七枚だ…
無料で泊めてもらったからオルナスのスキル鑑定しても小銀貨1枚の得だ。」
と笑っている…〈ありがとう。〉
ちなみにだが、この世界の通貨は
小銅貨 → 十円程度
大銅貨 → 百円程度
小銀貨 → 千円程度
大銀貨 → 一万程度
庶民はこの四種類で用事か済んでしまう…十枚毎に両替も可能で、
勿論、見たことはないが、
小金貨 → 十万円程度
大金貨 → 百万円程度
の高額な貨幣も存在する。
なので、スキルの有無や、スキルの名前を知る為だけで、
約六千円かかる…
〈無駄に高い!〉
この世界の神様はきっと〈ボッタクリ〉神様なのだ…
スキルを鑑定するだけで六千円って…
〈正座させて足がシビレるまで説教してやる!〉
と、鼻息も荒く生まれて初めて入る〈教会〉なる所にやってきた。
前世でも、虚弱体質を何とかしたいと神社にお参りした事はあるが、
お寺や、ましてキリストや異国の神々に祈るのは〈なんか違う〉と思い、
勝手に〈神社意外に浮気しない!〉と決めたのだが、よくよく考えると、〈
そんな事を考えながら、薄暗い礼拝堂に案内されて、何人か並んでいる列の最後尾に並び、
順番を待って、ようやく、
よく分からない神様の像に祈りを捧げる…
すると、
辺りの音が〈フッ〉と消えたのを不思議に思い目を開けると、
真っ白に世界に立っていた…
なぜか、よく知らない爺さんが〈正座〉をしている…
そして、
「この度は、我の手違いで魔物を一匹、そちらの世界に飛ばしてしまい…
誠に申し訳ない事をした…
焦って何とかしようとしたが…あっという間にソナタは殺されて、因果を操作する権限もなく…異界のモノに殺された魂は異界の輪廻に乗ってしまい…
も~本当にすまなかった!」
と、土下座を始めた…
〈おい、おい、おい…神様でしょ?なに
と、慌てた俺は、
「ちょっと、神様ですよね?
何〈土下座〉をしておられるので…」
と言うと、
頭を上げながら、神様は、
「いや、あちらの神様達との約束で、本人に〈土下座〉という謝罪方法で許して貰うまで、この件について我が許される事がない判決が出ておる…
〈イズモ〉と呼ばれる土地に行き、会議の結果だが…
ソナタの世界は神様があんなに居るんだな…ソナタの地域の担当の神々に謝罪するだけでも数日かかった…」
と、少しうんざりしている神様だが、
次の瞬間、
「そもそも、ソナタの世界も悪い!
異世界への壁が穴だらけではないか!!
確かに我はブラッドボアを一匹〈異界〉に飛ばした…飛ばしただけだ!
他の場所に移動させる為の一時的な〈異界〉に…
まさかあんなに穴だらけの世界があり、〈異界〉から〈ブラッドボア〉が、落っこちるとは思わなかった…」
と、恨み節を聞かされる…
〈いや、いや、知らんがな…〉
確かにここ数年〈異世界転生〉とか〈異世界転移〉とか、〈行ったり来たり〉が流行っているから…かな?
等と考えている俺に
更にヒートアップする神様は、
「なにが、
〈そちらのミスなので、彼には良い人生を歩ませてくれ〉
とか、好き勝手言いやがって…
異界の壁の修復してないのはソチラのミスであろう?!
〈直しても、直しても、毎年穴が開けられるので、神力の関係と、相手世界との話し合いとでイタチゴッコだと…〉
ふざけるな!!
スキルを与えて送り出したら本人の力量で良い人生を歩もうとするのが〈人〉だろうが!!
それを〈良い人生〉などと…」
と、ご立腹だ…しかし、賛同はしてやらない…
なぜなら、そもそも〈オーダー〉と全く違う〈スキル〉を謝罪として与えられたからだ…
俺は、
「俺…まだ、許してませんよ。」
と、神様に微笑みを浮かべて語りかけると、
神様は、〈スッ〉と怒りを鎮めて、
「改めて、申し訳無かったぁぁぁぁぁ!!」
と、土下座を開始した…
〈話が進まない…〉
しかし、この際だ…しっかり文句を言ってやる!
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