第6話 見つかった秘密と解決策
マジかぁ!!
爺さんに〈パンツ一丁狩り〉を見つかってしまった…
多分、狩人のおっちゃん達が俺を見つけて、爺さんに、
「お宅の息子さん、森の中でパンツ一丁で作業してたぜ?!」
とか、タレ込んだのかも知れない…
最近少し〈派手〉に暴れてたからかな?
〈どうする?どうしよう?…俺!…〉
頭をフル回転させるが、俺の一番の〈恩人〉に嘘や言い訳をするのは、〈違う〉気がした…
ズンズン草木をかき分けて近づく〈親〉に、
〈よし、全部バラそう!〉
と心に決める…
しかし、なかなか爺さんが俺の所まで辿り着かない…
〈気まずい…〉
暫くして爺さんが、ようやく到着し自分が来た道を振り返り、
「この距離で気がつかれたのか?」
と、呟いていた。
爺さんも必死で俺のもとまで来たのだが、ノープランだったのか、俺を見つめるだけで、なかなか話し始めない…
〈更に気まずい…〉
そして、爺さんが放った第一声が、
「オルナス…なぜパンツ姿なのだ?」
と、
〈ですよねぇ~、気になりますよねぇ~!〉
さて、何から話したモノか…
ー 数時間後 ー
俺は、洗いざらい〈ゲロ〉した。
前世のことから、死ぬ間際の事、そして死んでから爺さんに拾われて、今に至るまで…
そして、体が弱くて猪に抗え無かった事を悔いて、
「生まれたままで、鍛え無くても強い体」
を願った結果、
〈生まれたままの姿になれば成る程強くなる体質?〉
を授かった事を説明した。
普通はこんな〈世迷い言〉を信じるはずは無いだろうが、爺さんは、
「そうか…」
とだけ答えて、俺の頭を〈ポンポン〉と叩き、
「もっと早く気がついていれば、一緒に悩んでやれたのに…スマン…」
とだけ言った爺さんは寂しそうな顔をしていた。
そして、一緒に解体を手伝ってくれて、
「オルナス、帰って飯にしよう!」
と笑ってくれた…
…ありがとう…〈父ちゃん〉…
その夜、一緒に解体した鹿肉は、
鹿肉ゴロゴロスープと串焼き肉を作る分だけ使い晩御飯を作り、残りは干し肉と、塩漬け肉の保存にまわしすことに成った。
全てを話して気分が軽くなった為か、この日の鹿肉は一段と美味しく感じた…
そして、
翌朝、爺さんは、
「オルナス、今日と明日はワシと一緒に街に行くから用意しろ。」
と言ってくる…
ジルとシーラはオルフェス兄さんが面倒を見てくれるらしい…
村で荷馬車を借りて街に向かうのだが、
〈何故、急に街に行くのか?〉と、荷馬車の荷台で、不思議そうにしていると、爺さんは、
「オルナスの体質の理屈が解れば打つ手もある…
街についてからのお楽しみだ。」
と笑っている…
益々解らない状態のまま荷馬車で半日ほど離れた街に着く。
俺も、過去に二回ぐらいしか来たことがない街は、活気に溢れていた…
独特なゴミゴミした、埃っぽい香りに、村では聞かない商人の呼び込みの声が、あちらこちらから聞こえる。
そんな中で、初めて行く洋服店に入った…
そこには俺も数回しか会ったことがない、〈オルビス〉兄さんが居た…
そう、この店は〈オルビス〉兄さん…〈オビ兄ぃ〉の洋服店だった…
そして、彼こそが俺が〈オナ兄ぃ〉と呼ばれる流れを作った張本人…その人である…
〈オビ兄ぃ〉は、
「親父、どうしたんだ?いきなり…」
と驚くが、爺さんはお構い無しに、
「オルビス、オルナスの服を作って欲しい…上下一体型の服だ…ほら、昔作ったけどあまり売れなかったやつだよ」
と言っている
オルビス兄さんは、勢いに負けて、
「おう、確か倉庫に在庫があるから、持ってくるよ。」
と、店の奥に消えていく。
「ん?」とアホ面をしている俺に、
爺さんは、
「昔居たんだよ、オルナス、お前みたいに装備をする程弱く成る奴が…
奴は、獣人族で〈野生〉というスキル持ちだった…
何も装備しなければ超人的な身体能力を発揮し、装備をすればするほど、徐々に弱くなったが、全身を1つの繋がった革製スーツ装備にすれば、弱体化率が下がったのを思い出したんだ。」
と、自慢げに話している。
〈そうか、ツナギ一着ならば、ベストとシャツとズボンの三点セットが、一着で済む…
靴をサンダルに替えれば、靴下も無しに出来る…
パンツ一丁に成らなくても十分闘えるかもしれない…〉
「爺さん天才!」
と思わず声に出してしまったが、
爺さんは、
「よせやい…」
と、まんざらでもない様子だ。
オルビス兄さんが、
「とりあえず、倉庫の奥に有ったヤツを着てみてくれ」
と、白い作業着のようなツナギを持って倉庫から戻ってきた。
俺は、ブカブカのツナギを着てみる
すると、爺さんはオルビス兄さんの店の棚を指差して、
「オルナス、あれを持ち上げてみろ。」
と俺に指示する。
オルビス兄さんは、
「あの陳列棚は大人二人でやっと動かせるヤツだよ、
オヤジ、危ないから…オルナスが棚の下敷きになるかも…」
と心配してくれる。
爺さんは、
「ちょいと力試しするだけだ、危ないそうなら、ワシもお前も居るのだろう。」
と、言って、
「さぁ、さぁ」と、俺を急かす。
そして、棚の端を持って力を込めると、
なんと、軽々持ち上げる事が出来た…
俺は、
「やった!」
と声を上げると、爺さんは、
俺よりももっと大きな声で、
「良かったぁぁぁ!
これで、オルナスが成りたいモノに成れる…
お前は〈自由〉だぞ…
本当に良かったぁぁぅぅぅぅぅぅ…」
と泣いていた…
〈俺の非力をこんなにも心配してくれていたのか…〉
と、俺まで涙が溢れてきた…
事態が飲み込めないオルビス兄さんに、
爺さんは、〈前世の話しは伏せて〉
「オルナスは物凄く強くなるスキルがあるが、装備をする度に弱くなるリスク付きのスキルなので、
普通の服装をすれば、普通の人間よりも弱体化して生活すらも困難に成っておった…
長年気付いてやれずに苦労をかけてしまった…
しかし、理由さえ解れば対処も出来る…
でかしたぞオルビス!
お前は弟の人生を救う服を作ったのだ…」
と説明すると、
オルビス兄さんが一番泣いてくれた…
「こんなモンで、オルナスが救えたのならば、もっと早く助けてやれたのに…
すまねぇぇぇぇオルナスぅぅぅぅぅぅ!」
と…
ジジィとオッサンと中身がオッサンの涙の大合唱は暫く続いた…
俺は、なんと温かい家族に恵まれたのか…幸せだ…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます