第4話 お肉の為に頑張る!

脇差し第1号〈無名〉が完成した。


まさか、刃を打ってから、柄や鞘などが、あんなに難しいとは知らなかった…


爺さんは出来上がった刀を見て唸っていたが、


あれは、


感心していたのだろうか?


呆れていたのだろうか…?



まぁ、兎にも角にも俺の〈武器〉が仕上がった。


朝に買い物をして、昼飯を作り、

家族皆で昼飯を食べる。


そして午後…ようやく自由時間がやって来た。


ジルとシーラのオヤツを用意してから、


何時もの様にバケツとツルハシを持って、〈鉱石集め〉に向かう。


しかし、この空のバケツとツルハシだけでもなかなか重く、


最初の頃よりはマシには成ってとはいえ、服を脱ぎたくなる…


しかも、今日からは〈脇差し〉もプラスされる事になり、地味にキツい。


十歳の子供がツルハシと木製バケツと脇差しを持ったら、重く感じるの普通の感覚だが、


この世界の子供基準では、やはり、これぐらいでヒィヒィ言うやつは非力扱いだ…


もっと強いヤツを倒してレベルを上げなければ、前世基準ならば〈普通〉だが、まだまだ〈弱い〉ヤツ扱いでは〈冒険者〉にすら成れない。



やっとの思いで川原にたどり着く、


〈川まで来たらこっちのモノだ、〉


春先の冷たい川で濡れるのが嫌だ!


という理由をつけて、パンツ一丁でも怪しまれることはない、


川原で服を脱ぎ、鉱石集めの正装〈パン1ツルハシ〉になる。


〈あぁ、体が軽い!


ツルハシの一撃で岩も叩き割れそうだ…〉


まぁ実際、叩き割れてしまうのだが…


我ながら、理屈は解らないが、パンツ一丁ならば大人すら超える能力が出せる。


腕力は勿論、勘の様なモノも冴え渡り、鉱石の潜む岩もかなりの確率で当てる事が出来る。


そして、パンツ一丁の時には何か解らない〈力〉が使える…体の中に有るその力を足に集めればスピードが上がるし、腕に集めれば腕力が上がる…


この世界の不思議パワーらしいが、下手に誰かに聞く訳にもいかない…


相談したら、〈いっぺんやって見せろ〉となり、人前でパンツ一丁が確定する…


〈絶対嫌だ!〉


12歳に成って正式な冒険者登録が出来る様になれば、街に行って図書館で知識を得られる、


それまでは、普通を装わなければ…


鉱石は、ものの数分でバケツいっぱい採掘できた。


これ以上有っても持ち帰るのが大変なので鉱石集めは終了し、本日のメインイベント、


狩りの開始である。


靴下を履かずに靴を履き、ベストも脱いだ状態…ズボンにシャツに靴に脇差しのスタイルで川原の土手で狩りをする。


靴下とベストを脱いだだけだが、〈十分〉動き易い…


これで武器も覚えのある〈剣術〉ならば、角ウサギや牙ネズミなどは相手にも成らないであろう。


〈無名〉の柄に手を添えて獲物を探す…


大人には向かって行く事の少ない角ウサギでも、子供と侮り、なかなか逃げないヤツや、角を突き刺そうと向かって来るヤツも居る。


実に都合の良い〈お肉〉達だ…


そう、俺は、エリス姉ぇの様に食卓に〈お肉〉を届けるのだ!


土手の草むらで見つけた角ウサギに喧嘩を売ると、体の大きい個体は、俺に〈勝てる〉と踏んで案の定、突進してきた。


前世の爺さんの剣術道場で叩き込まれた〈技〉が役にたち、角ウサギは俺の横を駆け抜けただけで、鞘から解き放たれた刃の露と消えた…


さて、ここからが問題だ、〈エリス姉ぇ直伝、血抜き術〉を施す。


エリス姉ぇの取ってきた獲物を解体し、料理していた時にコツを教えてもらったので、ウサギやネズミなどは朝飯前である…


ただ、街の冒険者ギルドで買い取ってくれる角は俺のヘソクリ代わりにするが…ウサギ皮はどうしよう?


オルフェス兄さんにでも加工の仕方を聞いて、ジルとシーラの冬用の帽子にでもするかな…


上手に出来たら街で売って来て貰うのもアリだな。


ニヤニヤしながら追加で角ウサギを一匹と牙ネズミを一匹狩った所で気がついた…


〈二回に分けないと持って帰れないかも…〉と、


一度家に帰り、ツルハシに鉱石バケツ、脇差しを庭先に置く、


もちろん、靴下とベストは脱いで一緒に置いておいて、


小屋から鉱石運搬用の小型の荷車を出してエッチラオッチラと再び川原に向かい獲物を回収し家に戻る…


そして、何食わぬ顔で服装を整えて、


「ただいま、今日はお肉パーティーだよ!」


と爺さん達に報告する。


俺が三匹も獲物を狩った事に、爺さんは驚き、兄は誉めてくれ、弟と妹は凄く喜んでくれた。


心配症の爺さんが、


「怪我はしとらんか?」


と、俺を持ち上げ四方八方から確認するが、


〈出来れば爺さんが移動して確認をして欲しい…酔いそうだ…〉


その夜は久しぶりの肉がメインの晩御飯となり、全員満足して眠りに着いた。


明日も頑張ろう…

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