第3話 将来を夢見る十歳児
鍛治仕事をしている俺を爺さんが滅茶苦茶見てる…
ゴブリン三体殺して来たの…バレてないよね…?
本当は、猪や鹿の魔物でもパンツ一丁ならば倒せるが、倒して持ち帰る訳にも行かない…
〈どうしたか?〉と、聞かれてしまうからだ。
〈えぇ、パンイチで、少々…〉とは言えない。
しかし、
倒して焼いて埋めるだけでは、
〈勿体ない!〉
そこで、
ちゃんとした武器を作れば、
〈倒しました!〉
と、言っても言い訳出来るかも知れない!
と、閃いて、
現在〈刀〉を打っているのだが…十歳では刃渡りの長い物は扱えないので、脇差し程度の物を予定している。
前世で〈居合〉も噛っていたので刀の大体の作り方は解るし、育ての親の本職の鍛治師の爺さん達からの知識で〈切れる〉作品は作れる自信がある。
それに、最悪ナマクラでも、パンツ一丁の俺ならばそこら辺の枝でも十分猪ぐらい倒せるので問題なしだ…
大きさは違えど、〈猪〉に殺された前世の俺にドヤ顔で、
〈十歳でも、猪に勝ちますよ。〉
と、言ってやりたい…。
しかし、
今思えば、あの時の赤くてデカい猪は〈魔物〉だったのかもしれない…
〈あんなの図鑑で見たこともないし…〉
などと考えながらトンテンカンと金槌を振る。
〈段々疲れて金槌が重く成ってきたな…
少し本気を解放するかな?〉
と、俺は上着とシャツを脱ぎ、上半身裸になり素肌に革のエプロンをして鍛治仕事を続けた…
そう、俺は〈脱げば、脱ぐほど強くなるのだ〉
息を吹き替えした様に軽やかに金槌を振るう…
夕方前には一段落ついて、俺は、
「晩御飯の用意をするよ。」
と、言って工房の奥の自宅に向かう。
リビングではジルがシーラの面倒をみている。
「ジルもシーラも今日のオヤツはちゃんと食べたかい?」
と聞くと、
「オナ兄ぃ、お帰り。
今日のオヤツも最高だったよ。
オナ兄ぃのクッキーはメープル婆さんの店のヤツより美味しいよ。」
とジルが誉めてくれたし、
シーラは、
「クッキー明日も食べたい、
アタシ、オナ兄ぃのクッキー大好き。」
と…
頼むから〈オルナス兄ぃ〉に改名して欲しい…
と思いながらも、笑顔で晩御飯の準備をはじめる。
晩御飯と、言っても、
ジャガイモを茹でて、昼の残りに火を入れてるだけでほとんど終了する。
今日は特に獲物も無かったので、
〈ジャガイモとスープ〉だけの晩御飯だが、この世界では上等な方かもしれない…
爺さんは田舎の鍛治師ではあるが、腕は一流だから、冒険者からの依頼で、安定して稼いでくれている。
おかげで、兄弟全員〈ひもじい〉思いをしないで済んでいる。
しかし、街ならいざしらず、ド田舎の小さなこの村では、〈肉屋〉等は無くて、肉が欲しければ村の周りで〈角ウサギ〉や〈牙ネズミ〉等を狩るしかない、
たまに猟師さんや冒険者が倒した魔物を物々交換やお裾分け等で頂く程度だ。
少し前までは俺の三歳上の〈エリス姉ぇ〉が弓が上手で、〈肉〉担当だったが、
3ヶ月前に幼なじみ同士でパーティーを組んで〈冒険者〉に成って街に行ってしまった。
なので、俺は1日も早く武器を用意して、鉱石集めのついでに〈肉〉を取って来ている風を装い、
鍛治の腕前と、
レベル上げと、
家族に肉を提供する生活をするのだ。
ジルは後2年で十歳で、俺の代わりに料理が出来る様になれば、俺はエリス姉ぇみたいに家を出る予定だ。
鍛治も出来る冒険者に成って大金を稼いで爺さんに楽をさせる…
つもりだが…
問題は、俺の戦闘スタイルを理解してくれる仲間は…
たぶん、居ないであろう。
強敵を前にしてパンツ一丁になる仲間など…誰が背中を預けてくれるというのか…
〈ソロ冒険者決定だ…〉
かと言って、街で普通に仕事をしても、普通の稼ぎしかない…パンツ一丁になれば今でも駆け出し冒険者よりは稼げる自信がある。
そう、〈パンツ一丁〉に成ればだ…
もしかしたら、全てをさらけ出して、武器すらも手放せばもっと強いのかも知れないが…
〈流石にそれは人としてどうなのか?〉
と思う。
理想としては、服を着てても一般人並みに成って、
欲を言えば、簡単な依頼もこなせる冒険者を目指す。
そして、爺さんを安心させてから、
旅に出て、パンツ一丁で強敵を倒しまくり、
レベルを爆上げして、
服を着て弱体化しても、ちゃんと強い冒険者として人生を謳歌するんだ!
その間に稼いだお金は爺さんの老後資金にして…
〈あぁ、夢が膨らむ〉
待っていろよ、この世界!
前世では虚弱体質で普通の生活さえも困難だったが、今回は、普通の格好ならば弱いだけで健康!
そして、
さらけ出せば超人的に成れる…
足枷を加味しても前世よりは自由度が高い!!
さぁ、明日も頑張るぞ。
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