26話 仲間って何?
「へ~、はるぴよパーティーの3人さん、結構強いじゃん! 流石はお侍さんパワーだな!」
何とかコラボ配信が始まり、実際のダンジョン攻略に今は移っていた。
「……俺たちは、剣士だ」
群がってくるオオコウモリの群れを薙ぎ払いながら、土方が一言だけ応える。
「
3人の剣技によってあらかたオオコウモリを打ち払ったのを見て、はるぴよが殲滅のファイアーボールを放つと、向かって来る敵は一匹も残っていなかった。
11階層を越え、現在は13階層というはるぴよパーティーにとっては初めての到達地点だったがさしたる難敵には未だ遭遇していなかった。ただザコ敵の数が思っていたよりもとにかく多い。
「……ねえ、はるぴよちゃん。向こうの人は全然手出ししないの?」
沖田の言う通りだった。
11階層から始まった今回の攻略、実は最初からはるぴよパーティーだけが戦っているのだった。
沖田は別にそれについてさして不満を抱いているわけでもなさそうだったが、その疑問はもっともだった。
「あ~、なんかね……」
「悪いねぇ、皆さん! 俺たちが先頭に立っちゃうとザコ敵が全然寄り付かなくなっちゃうんだよ。もちろん俺たちとしてはその方が早く進めるから良いんだけど、君らはそれじゃマズイだろ?」
はるぴよが答えようとしたところで、シニチェクが横から割り込んで沖田に答えた。
「ま、まあそういうわけなのよ……。もうちょい我慢してくれますか、沖田さん?」
「いやぁ、私としては全然良いんですけどね。皆さんがおヒマそうだったものですからね」
シニチェクの嫌味とも取られかねない一言に沖田も鼻歌まじりに応える。
〈まあ、実際レベル差があるからな。シニチェクとか言うヤツが先頭に立ったら敵が全然寄り付かないわな〉
〈そうなると、はるぴよパーティーはレベルも上げられないまま次のボスと戦わなくちゃいけなくなる。結局このまま進んでった方がお互いにとって良いんだろ?〉
〈3人のカッコいい姿が見られる方が断然良い!〉
〈ね! サムネの静止画より動いている3人の姿の方が断然カッコいいよね!!〉
〈マジでそれ! このチャンネル見つけて良かったわぁ~〉
そうだった。
今までの古参のはるぴよファンだけでなく、えまそんが引っ張ってきたガールズちゃんねる系まとめサイトの住人達も今回から多く視聴しているのだった。彼らの目的は新撰組3人のカッコいい姿を見ることだ。そういった意味では需要に応えられているのだろう。
それにシニチェクの言っていることも単なる嫌味ではなく実際のところだ。
あまりレベルの高い冒険者が先頭に立ってしまえば、ほとんどザコ敵は寄り付かなくなる。そもそもシニチェクメンバーからすれば、この辺りの10階層程度などほぼスルーで進んでいくところだろう。
一方の自分たちにとっては経験値もアイテムも得られるものは多い。労力を惜しむようなレベルには未だないのだ。
「なあ、アイツらってホントに侍なの?」
さくさくと13階層を攻略したところでシニチェクがはるぴよに尋ねてきた。
配信とは別に本当に尋ねたかったことなのだろう。控え目な声のトーンがそれを物語っていた。
「え、や……侍っていうか、私は本当に新撰組だと思っているけど。あ、新撰組ってのは幕末の頃に活躍した剣豪集団でね……」
「ふ~ん、ま、何でも良いけどよ……」
新撰組について恐らく何も知らないであろうシニチェクに対して一から説明をしてあげようとしたが、シニチェクは如何にも興味無さげにはるぴよの言葉を切って落とした。
「まあ、見た感じたしかにアイツら剣しか使えないし、相当イカれた戦い方してるよな? ……え、ってかはるぴよだって大した魔法使えないんだろ?」
「ま、まあ、そうね……」
「まあ、このくらいの階層だったら何とかやっていけるのかもしれないけどよ……流石に20階~30階となると厳しくなると思うぜ? 早めにパーティーのメンバー構成のことも考えておいた方が良いぜ。あ、これは純粋に親切心からの忠告だからな? 短い期間とは言えお前とは一緒に戦った仲間だからさ」
「……そうね、ありがとう。シニチェクはその辺りもしっかり考えているのね?」
「まあな。俺はその時その時の最善を常に考えているぜ。ずっと一緒のパーティーでなきゃいけないって決まっているわけでもないからな。っていうか、俺に言わせればずっと一緒のパーティーで冒険してる奴らの気が知れないよ。その時その時で必要な能力も人材も変わってくるのが普通だろ? ずっと一緒のパーティーで冒険してるってことは、逆に誰かの意見をムリヤリ抑えつけてる可能性が高いってことじゃねえのか?」
「まあ、そうかなぁ……」
シニチェクは確かによくパーティーのメンバーを入れ替えていたが、彼には彼なりの言い分があるのは間違いなさそうだった。そして今のシニチェクパーティーはシニチェクのそうした考えも理解しているということだ。
はるぴよがそんな話を聞きつつもあまり真剣になれなかったのは、自分にとって現実的な話には思えなかったからだ。シニチェクがそんなことが出来るのは人気の攻略配信者となって寄ってくる人間も多いからに他ならない。自分のような仲間を選ぶ選択肢の余地など無い弱小配信者には何の縁もない話に思えたからだ。
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