【おまけ】実際に存在したインドの光の魔王 マハーバリ
さて、先ほどのエッセイでは日本では「魔王信仰」という特殊ものがあるんですよと書きました。第六天魔王は仏教でインド出自のものですがインドではカーマという愛の神で別に魔王として信仰されてるわけではございません。しかし、第六天魔王という「マーラ」を信仰する仏教徒は世界広しと言えども日本だけなのです。
さて、インドでの魔王とはラーヴァナという羅刹の王だったりアスラ神族の王だったりするわけですがそんなアスラ神族の王は何回も三界制覇しております。三界とは要は世界のすべてとも言ってよいです。ちなみに地上界、空界、天界です。なお羅刹(ラークシャサ)族は一度も三界制覇を成し遂げていませんからいかにアスラ神族って優秀なのかお分かりいただけるでしょうか。
そしてデーヴァ神族、つまり天界の神々がアスラたちを掃討をしてはアスラ神族が天界を再度奪うという事を繰り返すのがインド神話です。おそらく大乗仏教がいう「修羅界」とはこのことを忠実に再現したのでしょう。「アスラ神族」と書きましたが「魔族」なのに何で「神族」なんだと思う方も居るのかもしれませんがそれはマハーバリなどの魔王のおかげでしょう。現実にはペルシャ系民族の王がインド亜大陸を何度も侵略して領土奪い取った・取られたとかそういう話だと思います。
じゃ、魔族とされたアスラ……仏教では阿修羅というのですがこの種族が支配したら絶望の世になったのかというと……。
マハーバリ王の治世では飢えもなき光かがやく三界となったというのです。それどころかマハーバリ王はカースト差別を禁じたのです。
じゃー、それでいいじゃんというわけですがヒンズーの神々にとっては悪夢なわけでヴィシュヌがとんちみたいな方法でなんと三界を奪い返します。
(※ヴィシュヌが乞食の小人僧に化けて「三歩分の土地だけください」と言って了承したらヴィシュヌが本性を現してそれぞれ地上界、空界、天界を踏んだという。マハーバリは踏み殺されたが善政の統治者ということで生き返らせてもらって代わりに地下世界の理想郷パーターラの第三層「スタラ」の領地をもらい受けました。名副官のシュクラは「こいつの言うことは聞いてはなりませぬ!」と助言したがバラモン階級の願いは一度聴いたら拒否をできない業をマハーバリは背負っていたのだ)
しかし、それは人間にとって理想の統治を壊されたことを意味します。
そこで8月下旬~9月上旬に「オナム」祭りというものを行いマハーバリを迎え入れる祭りを行います。マハーバリを迎え入れるためにフラワーカーペット(このフラワーカーペットを「オナム・プーカラム」という)も作ります。つまり受けたご恩は返すということでしょう。主にケーララ州で行います。パーターラからマハーバリが地上に帰って領民を心配しに見る時期なのです。「オナム」祭りの最終日は虎に扮して「プリカリ」という踊りを行います。腹の部分に虎の絵をかいて踊ります。もちろん虎のマスクもして全身ペイントして踊ります。思うに自分が魔族に扮して踊ってるのだと思います。
プリが「虎」か「ヒョウ」を意味し「カリ」が遊びです。よってヒョウのペイントとヒョウのマスクをしてる者も当然出ます。
「オナム」祭りは最近インド人コミュニティーが構築されている江戸川区でも見られるようになりました。(※さすがに「プリカリ」までは近所迷惑ですので行いませんが。「オナム・プーカラム」は見られます)
ケーララ州というのはIT立国でありインドで初めて識字率100%を達成しました。ゆえに魔王の願いと教えは現在でも生きております。なおインドで最も出生率が低く、所得がもっとも高いエリアでもあります。ケーララ州はコショウの原産地としても有名です。ITエンジニアが多いからはるか極東の日本にまでやって来る人がいたということです。だから江戸川区の葛西・西葛西にコミュニティーを作って東西線で都心に通勤してるのです。(なんで葛西なんでしょうね?)
このマハーバリが、どうも仏教の大日如来の起源ではないかとされている神様です。
マハーバリ信仰は南インドの一部にしか見られないもので北インドに行くと魔王ですからNGなんでしょうね。
マハーというのは「偉大」という意味で尊称を抜くと「バリ」です。仏典はバリン阿修羅王という4大阿修羅王として記載されております。漢字だと「婆稚阿修羅王」になります。
魔王にして理想の統治者というのは現実に存在する神話で、そしてその信仰は現在進行形で続いているのです。世界広しと言えども日本と南インドのみにある「魔王信仰」の話です。今回はインドの魔王信仰の話をしました。
【次世の主神になる契約を交わした】
実はインドの世界観というのは破壊と創造を繰り返すという発想です。つまりシヴァ神が世の破壊を行い世界を破滅させた後に次の世を出現させたとき、なんとマハーバリは主神になる契約をヴィシュヌと交わしています。ヴィシュヌも不意打ちは卑怯と感じていたのでしょう。
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