温度/三屋城衣智子 への簡単な感想

 応募作品について、主催者フィンディルから簡単な感想を置いています。全ての作品に必ず感想を書くというわけではありませんのでご注意ください。

 指摘については基本的に「作者の宣言方角と、フィンディルの解釈方角の違い」を軸に書くつもりです。

 そんなに深い内容ではないので、軽い気持ちで受け止めてくださればと思います。


 またネタバレへの配慮はしていませんのでご了承ください。




温度/三屋城衣智子

https://kakuyomu.jp/works/16817330654005008274


フィンディルの解釈では、本作の方角は真北です。


ストーリー構成でしっかりオチをつけてくるタイプのエンタメだと思います。SF掌編でよく見られる形式ですね。

序盤でひとつの状況を提示しておいて、そこから何かを変化させて、序盤と同じ状況を発生させて両状況の違いを描いてオチとする。AI化の負の側面を描いている点で一定の寂しさを出していると捉えることもできますが、本作のような表現ならばエンタメに収まるものと考えます。

余談ですが、どの方角を向くこともできるのに「この方角こそSFの本領だ」みたいな顔ができるSFというジャンルは本当に魅力的だなあと思います。


方角を抜きにして気になったのが、機械全般とAIの違いを作品で表現できていないところです。テクノロジーとAIの違いでもいいです。

もちろんAIはテクノロジーのひとつですが、本作はAIを機械なりテクノロジーなりに置き換えても物語は問題なく成立してしまうと思います。AI化したチャアミィの対応は、AI対応というより機械対応のように感じました。

「AIには人の温もりがない」というのが物語趣旨だと思うのですが、本作を読むかぎりこれはAIである必要はなくて、実質的には「テクノロジーには人の温もりがない」という作品趣旨であると思います。

それで矛盾しているということはないのですが、題材としてAIを選択した意味が薄くて、AIを取りあげたSF作品としては読み応えに向上が期待できるのかなと思います。多くのSFはテクノロジーを扱うものですから、それでテクノロジー全般に代替可能な物語表現になってしまうのは、やや弱いのかなと感じます。

テクノロジーのなかでもAIでないといけないような物語表現を見せられると、より面白くなるのではと期待します。


終盤のけんちゃん、「きしゅう」をしてしまってますがそれこそがけんちゃんなりの改心・成長なのかなと窺えて良いですね。手を差し伸ばしてますしね。おそらく序盤の場面のあと、親子でしっかり話しあいの場などが持たれたのだろうと思います。良いと思います。

そのうえでチャアミィの中が人でなくなっているという変化から、寂しさが醸されていると思います。

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