甘剣(あまけん)/暗黒星雲 への簡単な感想

 応募作品について、主催者フィンディルから簡単な感想を置いています。全ての作品に必ず感想を書くというわけではありませんのでご注意ください。

 指摘については基本的に「作者の宣言方角と、フィンディルの解釈方角の違い」を軸に書くつもりです。

 そんなに深い内容ではないので、軽い気持ちで受け止めてくださればと思います。


 またネタバレへの配慮はしていませんのでご了承ください。




甘剣(あまけん)/暗黒星雲

https://kakuyomu.jp/works/16817330653216146528


フィンディルの解釈では、本作の方角は真北です。暗黒星雲さんの宣言と同じですね。

ただ真北ではあるのですが、“超真極北”というほどの真北ではないと思ってます。


バレンタインの告白だったのに、そこからスクーターで爆走して、さらにはサイボーグバトルを行う。

この展開だけを見ると、ギャグと近しい世界観があると思います。常識や日常がハチャメチャに壊されていく感じ。

そしてギャグ、とりわけ不条理ギャグは北西であると相場が決まっています。読者を笑わせ楽しませる側面と作品内容に意味や理屈を求めない側面が、不条理ギャグにはあるからです。

不条理ギャグとして捉えるには本作は大人しいのですが、展開に対する霜川の薄いリアクションなどは不条理ギャグらしいものがあると思います。


フィンディルは、本作を途中まで読んだ時点では真北~北西程度の広いレンジをとっていました。その作品の理解を保留にしていました。

そして「色々な終わらせ方が考えられるよなー」と思っていました。その終わらせ方によって方角が変わってくるだろうと。

具体的に言うと、ここまでの作品内容に意味や理由があるのなら真北、意味や理由がないのなら北西、という具合ですね。結果として意味や理由がしっかりあったので真北、と。


ですので“超真極北”という印象はありませんでした。むしろ方位の針が途中まで定まらない、含みを持たせている真北だと。

ただストーリー途中までどういう作品なのか読者に掴ませないというのは、事実を開示するエンタメとしては良い読ませ方だと思います。謎を謎らしく読者に示せていたということですし。

最終的に真北と思わせたのも、読者に納得感を提供できたことを指すと思います。


少し気になったのが、緻密と稚拙の読ませ分けが甘いと感じたところです。

霜川は普段バイクに乗らないと仮定して、それにしてはバイク知識が微妙にある。バイクと無縁の人よりは明らかに詳しいが、バイクに詳しいと明らかにいえるほどではない。

おそらく霜川がサイボーグである伏線の一環なのでしょうが、この書き方だと、単にキャラ描写が甘いだけの可能性を否定しきれないように思います。

こういった箇所が他にもいくつか見受けられました。

本作のような作品では事実を開示したときに「こういうことだったのか!」とそれまでの作品内容が覆されるのが楽しいのですが、その覆り方が弱いのが気になります。絨毯をひっくりかえしたけど端のほうが丸まったままになっている、みたいな。

緻密であることで満足するのではなく「これは稚拙ではなく緻密ですよ」と読者に伝わるような緻密と稚拙の読ませ分けが、真北では大事になると思います。これができるようになると事実を開示するエンタメ作品としての爽快感と読み応えがより強化されると期待できます。

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