第2話

私は叔父が好かなかった。

理由はないが、しいていうなら

私が叔父に嫌われているからだろうか?

自分を嫌う人を好きになるのは難しい。

会話は必要最低限、雑談もほぼ無く

食事の際も黙々と食べ、終わる。

ごく僅かな時間であっても

叔父と過ごす時間は緊張と苦痛が伴った。

真綿で首を絞めるという言葉がある。

そんな感じかしらと想像してみるが真綿で首を絞めた経験がないのでよくわからなかった。


叔父はいつも不機嫌な顔をしている。

ぎゅっと寄せた眉と

真一文字に結ばれた薄い唇。

最初は私が何か知らぬ内に不愉快なことを

仕出かし怒っているのかと思った。

段々とそれが叔父の平常なのだと理解した。

ほとんど喋らない静かな人であったが

人に威圧感を与える人でもあった。


雨の中、ゆっくりと歩く叔父の後ろを

黙ってついてく行く。

夕暮れのカラスの声が遠くで聞こえる。

傘を跳ねる雨粒の音、叔父の歩く下駄の音。

私は少しぼんやりしていた。

「お前、俺が嫌いか?」

「はい…」

叔父の唐突な質問に、上の空だった私は

正直にそう答えてしまっていた。

「そうか」

叔父は平坦な声でそう返した。

しまった!失敗してしまった!

気をつけていたのに…!

冷や汗が背中を伝う。

叔父の叱責を想像し傘の柄を

ぎゅうと握りしめた。

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