第3話 妖怪
今回は江人視点ではないです。
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かたす駅に、人間がいた。
馴染みのない顔、ということは…あの子
うわ、面倒臭い。仕事が増える。
見たところ十六、十七才ぐらいで、ひねくれてそうな顔してる。やっぱり面倒臭そうだなあ……
あ、降りてこなきゃいいのか。
降りるな〜、降りる……な?
「…?」
駅の看板を見て、固まってる?
どうしたんだろう。かたすの名前って、そんなに有名だっけ。
前来た子は、知らなかったって言ってたけど……
あ、あ…あー。
降りちゃった…もう。説明しなきゃいけな、い!?
えぇぇぇ!何で叫んでんの!!『ひゃっほおおおおう』!?
頭おかしいでしょう!!!
取り敢えず説明しなきゃ……じゃないでしょ!?今からあの子と話さないといけないの!?
ど、どうやって声をかければいいの……っ!?
◇
江人を見て、何者かが混乱している頃……
「ひゃっほーーーー!!!」
江人は大興奮していた。
この興奮を表すため、叫びながら両手をぶんぶん振り回すなどしている。
来たぞーー!きーーーたーーーぞーーー!
スマホで調べたけどやっぱりかたすなんて駅は存在してない!
あああああ有難う御座いました!今なら心置きなく死ねる……ってここかたすだった!黄泉だったわ!
おっと、少しふらついてしまった。酸欠かも。
江人は息を深く吸い込んで、一気にまた…
「ちょ、ちょっと待ったぁ!」
誰だ?
そう思い、声のした方へ顔を向ける。
(……めちゃ綺麗)
改札のところに女の人が立っていた。
真っ赤なコートに、同じく真っ赤なブーツ。
黒いマスクで口元を隠していて、江人よりも背が高い。
そして何故か、息を切らしてる。
「ハァ、おえぇ…ハァ」
「…大丈夫ですか?」
顔が真っ青だし、めっちゃ肩で息してるけど……どうしたんだろう?
吐きそうにしてるし、あまり近付きたくないな……
「フゥ、ハァ……大、丈夫…」
「……」
大丈夫じゃないな。うん。
喋れる状態になるまで待つことにする、って。
この人誰だよ。
知らない人が呼吸困難になっていても知るもんか。関係ないわ!
そう思い、女の人の横を通ろうとしたとき、あることに気が付いた。
この人、この駅の先から来てるじゃん。
この女の人って、かたすの先住民?黄泉の国だから、幽霊?幽霊っすか?
マジかー……幽霊って息切れするんだ……なんかガッカリしたわ……
……まだ幽霊っめ確定はしてないからな!多分違うだろ!
江人は女の人をジロジロと見て、また気付く。
これ、駄目じゃないか? 駄目なやつじゃないか?
幽霊といえど、女の人をそんな目で……見てないけども、流石にジロジロとは……
…あれ?さっきもかたすって、黄泉…つまり、死後の世界って思ったけど、俺は死んでんのか?
じゃあ、いいか……ってなる訳無い。
俺は健全な男子高校生なのだ。
「ハァ……きっ、君……」
あっ喋った。それじゃあ聞こう。
◇
「ハァ……きっ、君……」
し、死ぬかと思った……こんな動くこと、最近無かったし…
「──ですか?」
「え?ごめんなさい、よく…聞こえなかったから、もう一度…」
「あの、幽霊ですか?」
「…え?」
幽霊って……幽霊?
一番最初に聞くことそれなの?
ここは何処ですかーとか、貴方は誰ですかーとか、他にもっと…あるんじゃないの?
……まぁ、いいわ。
「いいえ、違うわ。私は───」
「ゾンビ?」
「違う」
どこをどう見たらそうなるのよ。絶対馬鹿にしてるでしょ。
「じゃあ…」
「私は」
これ以上言わせると脱線してしまいそうなので、無理矢理被せる。
「私は、『妖怪』」
やっと言えた……もう疲れた。帰りたい。
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