第3話 妖怪

今回は江人視点ではないです。

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かたす駅に、人間がいた。



馴染みのない顔、ということは…あの子新しく選ばれたのか。


うわ、面倒臭い。仕事が増える。


見たところ十六、十七才ぐらいで、ひねくれてそうな顔してる。やっぱり面倒臭そうだなあ……


あ、降りてこなきゃいいのか。


降りるな〜、降りる……な?



「…?」



駅の看板を見て、固まってる?


どうしたんだろう。かたすの名前って、そんなに有名だっけ。


前来た子は、知らなかったって言ってたけど……



あ、あ…あー。



降りちゃった…もう。説明しなきゃいけな、い!?


えぇぇぇ!何で叫んでんの!!『ひゃっほおおおおう』!?


頭おかしいでしょう!!!


取り敢えず説明しなきゃ……じゃないでしょ!?今からあの子と話さないといけないの!?



ど、どうやって声をかければいいの……っ!?



江人を見て、何者かが混乱している頃……



「ひゃっほーーーー!!!」



江人は大興奮していた。

この興奮を表すため、叫びながら両手をぶんぶん振り回すなどしている。



来たぞーー!きーーーたーーーぞーーー!


スマホで調べたけどやっぱりかたすなんて駅は存在してない!


あああああ有難う御座いました!今なら心置きなく死ねる……ってここかたすだった!黄泉だったわ!



おっと、少しふらついてしまった。酸欠かも。



江人は息を深く吸い込んで、一気にまた…



「ちょ、ちょっと待ったぁ!」



誰だ?


そう思い、声のした方へ顔を向ける。


(……めちゃ綺麗)


改札のところに女の人が立っていた。


真っ赤なコートに、同じく真っ赤なブーツ。

黒いマスクで口元を隠していて、江人よりも背が高い。


そして何故か、息を切らしてる。



「ハァ、おえぇ…ハァ」


「…大丈夫ですか?」



顔が真っ青だし、めっちゃ肩で息してるけど……どうしたんだろう?

吐きそうにしてるし、あまり近付きたくないな……



「フゥ、ハァ……大、丈夫…」


「……」



大丈夫じゃないな。うん。

喋れる状態になるまで待つことにする、って。


この人誰だよ。


知らない人が呼吸困難になっていても知るもんか。関係ないわ!


そう思い、女の人の横を通ろうとしたとき、あることに気が付いた。



この人、この駅の先から来てるじゃん。



この女の人って、かたすの先住民?黄泉の国だから、幽霊?幽霊っすか?


マジかー……幽霊って息切れするんだ……なんかガッカリしたわ……


……まだ幽霊っめ確定はしてないからな!多分違うだろ!


江人は女の人をジロジロと見て、また気付く。



これ、駄目じゃないか? 駄目なやつじゃないか?



幽霊といえど、女の人をそんな目で……見てないけども、流石にジロジロとは……


…あれ?さっきもかたすって、黄泉…つまり、死後の世界って思ったけど、俺は死んでんのか?


じゃあ、いいか……ってなる訳無い。



俺は健全な男子高校生なのだ。



「ハァ……きっ、君……」



あっ喋った。それじゃあ聞こう。




「ハァ……きっ、君……」



し、死ぬかと思った……こんな動くこと、最近無かったし…



「──ですか?」


「え?ごめんなさい、よく…聞こえなかったから、もう一度…」


「あの、幽霊ですか?」


「…え?」



幽霊って……幽霊?


一番最初に聞くことそれなの?


ここは何処ですかーとか、貴方は誰ですかーとか、他にもっと…あるんじゃないの?


……まぁ、いいわ。



「いいえ、違うわ。私は───」


「ゾンビ?」


「違う」



どこをどう見たらそうなるのよ。絶対馬鹿にしてるでしょ。



「じゃあ…」


「私は」



これ以上言わせると脱線してしまいそうなので、無理矢理被せる。



「私は、『妖怪』」



やっと言えた……もう疲れた。帰りたい。

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