第2話 マジもんのかたすや!


あっという間に午後の授業も終わり、部活に入っていない俺と頼太は、いつも通り一緒に帰ってる。


空がオレンジ色に染まっている。まぁ、これもいつも通りだ。



「はー、江人…今日の体育、調子良さそうだったな」


「え?そんな感じはしなかったんだが…」



……思い出してみると良かったような…?


まさか…



「毎日やってる瞑想が実を結んだ?」


「なんでそうなるんだ!?ってか瞑想!?」


「あぁ。毎朝三十分、帰ってきてから一時間ぐらいやってる」


「…そんなことより勉強やったほうがいいのでは……?」


「あ゛?」


「すまん…あ、じゃあまた明日」


「…おー」



あれ、もう駅に着いたのか。時間が経つのは早いなー。


俺と頼太は途中の駅で別れて帰る。俺の家が高校から遠いため、電車通学だからだ。



「…はぁ」



俺は少し手を振ってから、ため息をついた。



いつも乗る時間の電車を待ちながら、江人は思う。



つまらん。



毎日毎日、同じことの繰り返しだ。


こうして、ホームで電車を待つのも同じ。


何かしら、超常的な事件に巻き込まれたりしないのも同じ。


やっぱつまらん……。


普通の人はそう思うだけで終るだろう。しかし、江人は違ったッ!



超能力が使えないか何回も試してみたり、自称・霊能者とコンタクトをとったり、先程話したように瞑想をしたりというように、全て行動に移す。



そう、重度の厨二病である。



残念ながら本人はそうは思っていないので、もしかしたら一生覚めることはないかもしれない。


最近見るようになったものも、ただ変な夢を見るだけなので、初めのうちはワクワクしていたが今はもう、完全に冷めていた。



あ、電車来た…


はぁ。何でもいいから、何か起こんないかなぁ…


そう考えながら電車に乗り込む。



「…あれ?」



車内を見回した途端、江人は違和感を感じた。



というのも、乗客が江人以外一人もいなかったからだ。

いつもなら埋まっているはずの座席も、誰一人として座っていない。



どういうことだ?今日はたまたま、誰もいない日だったのか?


取り敢えず、座席の端っこの方に座った。皆、ここ好きだよね。俺もだけど。



「そうだそうだ、忘れてた」



あれについて、一応調べとこう。



「かたす、とは……」



リュックからスマホを取り出して、早速検索する。すると、こんな説明がでてきた。




《かたす とは》


《都市伝説の一つ。

存在していない駅で、そこに迷い込むと二度と出られないという噂がある。


参考○○○○○○○○○○


また、かたすというのは日本書紀にも黄泉の国として出てくる。》




ほー。やっぱりあの世とか、そういうものだったか。


それに、都市伝説で似たようなのがあるのか。それは初耳だ。


スマホをしまってたら欠伸がでた。


寝とこ。


大丈夫大丈夫…乗り過ごすことは絶対にしない……絶対に……





…ゴトン



電車が停まった振動で、俺は目が覚めた……って自分でナレーションすんのはもう飽きたな。やめよ。


それより……今何処らへんだ?

少し伸びをして、窓から外を見る。



「は……?」



も、森?

俺の目がおかしく無ければ、鬱蒼としてる森が見えてるんだけど。


完全に寝過ごしたやつやん、これ。

でも、こんな森の中に電車停まるっけ?


まあいいや。一旦降りよう。


何駅───


「は……?」


俺はガチで心臓が止まりそうになった。


恐怖からではない。


驚き。驚きと、興奮。


目を擦る。


ついでに頬を抓る。



夢じゃない。これは、夢じゃない。



俺の視線の先は、天井に吊るされた古ぼけた看板。







その看板にはこう書かれている。










──────[かたす駅]、と。




うおおおおおお!!マジもんのかたすやーーー!

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