第2話 マジもんのかたすや!
あっという間に午後の授業も終わり、部活に入っていない俺と頼太は、いつも通り一緒に帰ってる。
空がオレンジ色に染まっている。まぁ、これもいつも通りだ。
「はー、江人…今日の体育、調子良さそうだったな」
「え?そんな感じはしなかったんだが…」
……思い出してみると良かったような…?
まさか…
「毎日やってる瞑想が実を結んだ?」
「なんでそうなるんだ!?ってか瞑想!?」
「あぁ。毎朝三十分、帰ってきてから一時間ぐらいやってる」
「…そんなことより勉強やったほうがいいのでは……?」
「あ゛?」
「すまん…あ、じゃあまた明日」
「…おー」
あれ、もう駅に着いたのか。時間が経つのは早いなー。
俺と頼太は途中の駅で別れて帰る。俺の家が高校から遠いため、電車通学だからだ。
「…はぁ」
俺は少し手を振ってから、ため息をついた。
◇
いつも乗る時間の電車を待ちながら、江人は思う。
つまらん。
毎日毎日、同じことの繰り返しだ。
こうして、ホームで電車を待つのも同じ。
何かしら、超常的な事件に巻き込まれたりしないのも同じ。
やっぱつまらん……。
普通の人はそう思うだけで終るだろう。しかし、江人は違ったッ!
超能力が使えないか何回も試してみたり、自称・霊能者とコンタクトをとったり、先程話したように瞑想をしたりというように、全て行動に移す。
そう、重度の厨二病である。
残念ながら本人はそうは思っていないので、もしかしたら一生覚めることはないかもしれない。
最近見るようになったものも、ただ変な夢を見るだけなので、初めのうちはワクワクしていたが今はもう、完全に冷めていた。
あ、電車来た…
はぁ。何でもいいから、何か起こんないかなぁ…
そう考えながら電車に乗り込む。
「…あれ?」
車内を見回した途端、江人は違和感を感じた。
というのも、乗客が江人以外一人もいなかったからだ。
いつもなら埋まっているはずの座席も、誰一人として座っていない。
どういうことだ?今日はたまたま、誰もいない日だったのか?
取り敢えず、座席の端っこの方に座った。皆、ここ好きだよね。俺もだけど。
「そうだそうだ、忘れてた」
あれについて、一応調べとこう。
「かたす、とは……」
リュックからスマホを取り出して、早速検索する。すると、こんな説明がでてきた。
《かたす とは》
《都市伝説の一つ。
存在していない駅で、そこに迷い込むと二度と出られないという噂がある。
参考○○○○○○○○○○
また、かたすというのは日本書紀にも黄泉の国として出てくる。》
ほー。やっぱりあの世とか、そういうものだったか。
それに、都市伝説で似たようなのがあるのか。それは初耳だ。
スマホをしまってたら欠伸がでた。
寝とこ。
大丈夫大丈夫…乗り過ごすことは絶対にしない……絶対に……
◇
…ゴトン
電車が停まった振動で、俺は目が覚めた……って自分でナレーションすんのはもう飽きたな。やめよ。
それより……今何処らへんだ?
少し伸びをして、窓から外を見る。
「は……?」
も、森?
俺の目がおかしく無ければ、鬱蒼としてる森が見えてるんだけど。
完全に寝過ごしたやつやん、これ。
でも、こんな森の中に電車停まるっけ?
まあいいや。一旦降りよう。
何駅───
「は……?」
俺はガチで心臓が止まりそうになった。
恐怖からではない。
驚き。驚きと、興奮。
目を擦る。
ついでに頬を抓る。
夢じゃない。これは、夢じゃない。
俺の視線の先は、天井に吊るされた古ぼけた看板。
その看板にはこう書かれている。
──────[かたす駅]、と。
うおおおおおお!!マジもんのかたすやーーー!
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